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11.冗談は通じませんでした

「...まあ、何だ。男のサガってやつだから、許してやってくれや」

「許すも何も...あたしはあんまり気にしないけど、キリカが凄い引いてるわよ」

「だって、あんなの朝から見せられたらこうなるんだよ!!やっぱりヒソラお兄ちゃんとミカゲツお兄ちゃんはオープンなんだよ!!」


 ミカゲツの部屋から脱出し、アリナ、カヨウ、キリカはゆったりと食堂へ向かっていた。


「落ち着けよキリカ。少なくともあいつらがお前に手え出すことはねえから」

「そんなの分からないんだよ!わたしは顔が可愛いからお兄ちゃん達の毒牙にかけられてしまうんだよ!」

「キリカ、自分で自分を可愛いとか言わない方がいいぞ。そういうの嫌いな奴とかいるから」

「うん、分かった」

「つーか、顔が可愛かろうが体が良くなきゃ駄目なんだよなあ。お前は胸もねえし尻もねえし脚もすっげえ細えし正に子供体けっ」

「ゲスは滅ぶんだよ!!」


 げしげしとカヨウを蹴るキリカに、アリナは苦笑しつつ発言する。


「でも本当にキリカって可愛いわよ。何か、見てて微笑ましいというか」

「アリナ...ありがとー!嬉しいよ」

「だよな。幼女を見てるような感じがすっ」

「ゲスは消失するんだよ!!」


 再び蹴り始めるキリカを、アリナはやっぱり妹みたいだと思うのだった。





 食堂に着くと、既にそこにはレイシンがいた。アリナは既視感を覚えた。


「おはようカヨウ、キリカ、アリナ」

「レイシンお兄ちゃん、おはよー!」

「お、おはようございます、レイシンさん」

「ざーす」

「おいカヨウ。挨拶くらいしっかり出来んのか」

「あーごめんごめんレイシン兄さん。次はちゃんとするから」

「二度続いたら許さんからな」


 レイシンの視線が離れてから、カヨウは小声で愚痴る。


「ったーくレイシン兄さんはほんっと厳しいんだからもおー」

「カヨウお兄ちゃんがだらしないだけだよ」

「オレはやる時はやる男なんだっつーの」

「あ、それはそうだね。カイロウお兄ちゃんに対してはきっちりしてるもんね」

「当たり前だろ!カイロウ兄さんの怒りを買ってみろ、間違いなくオレに待つのは死のみだ」

「...ねえ、カイロウさんって、怒るとそんなに怖いの?」

「んー、わたしもカイロウお兄ちゃんが怒ってるの見たことないんだ。どうなの?カヨウお兄ちゃん」


 しばらく沈黙した後、カヨウはみるみる青ざめていく。


「や、やばい。思い出したら震えがっ...うおお、助けてくれキリカ、アリナ!」

「えっ!?そんなに怖いの!?」

「これは相当だねー」


 震え過ぎて変な小踊りをしているように見える状態のカヨウ。アリナはこんなことにならない為にもカイロウを絶対に怒らせてはいけないと固く決意した。


「レっレイシン兄さん!助けてくれ!オレは死ぬ!カイロウ兄さんにやられちゃう!」

「...カヨウ。カイロウ兄さんは理由がない限り人を殺さない。分かっているだろう?」

「だ、だけどカイロウ兄さんが意識飛ばしちゃったりなんかしちゃったりしたら、どうすんだよ!」

「口を慎め!!」


 大声が響く。

 キリカは困ったように眉を下げ、アリナはびくりと震えた。

 この時間帯ならば常に賑わっている筈の食堂に、静寂が訪れた。


「レイシン兄さん、何を騒いでいるんですか。朝から、止めてくださいよ」


 沈黙を破ったのはにこやかなミカゲツだった。無言のヒソラもその後ろから現れる。


「...すまない」


 レイシンはぽつりと言うと、小さく首を振り食堂を出ていった。


「カヨウ兄さん、何やらかしたんですか。止めてくださいよ、レイシン兄さん怒ってたじゃないですか」

「...あー、悪い」

「ほんっと迷惑だよね。カヨウ兄さんっていう存在自体が」

「ちょ、ヒソラ、お前オレに恨みでもあんのかよ」

「いっぱいあるけど」

「あんのかよ!」


 再び賑わいが戻る中、アリナはこっそりとキリカに尋ねる。


「レイシンさん、どうしてあんなに怒ったのかしら」

「さあ、分かんない。カヨウお兄ちゃんは冗談半分だったけどね。それが嫌だったのかも」

「えっ、カヨウが震えてたのって演技だったの!?」

「まあ流石にあそこまで大袈裟なのはないよね」

「そ、そっか...」


 カヨウなりにふざけていたらしいが、それでマジ切れされたら意味がないとアリナは思った。


「多分レイシンお兄ちゃん朝はもう食堂に来ないよ。さー、朝ご飯食べよー」

「ええ...」


 ヴァースアックにも色々な人がいるんだなあ、と思うアリナだった。

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