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特攻娘Jチーム  作者: 加熱扇風機
第一話 特攻娘Jチーム
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1―1 未来の渋谷 

 俺はビルの屋上から、渋谷のスクランブル交差点を眺めていた。


 大勢の日本人や外国人が行きかうこの場所も、12年間ですっかり変わってしまったな。


 5メートルはあるんじゃないかと言うロボットが、入り乱れる人中でぶつからない様にとゆっくりとした動作で移動している。


 人間と同じ大きさのロボットも、それぞれ異なった形状をしていて、中には人間そっくりな者もいるくらいだ。それらロボットたちは目に映る範囲だけで30台以上はいるな。


 彼らはクロム人と言う種族で、宇宙からやってきた知的生命体だ。


 見た目は金属で出来たロボットだが、元となる部分は人間と同じでタンパク質とビタミン類で出来ている。


 こんな光景が一般化して当たり前になったのも、日本の政府はクロム人との政治外交をして、クロム人の社会進出を認めたからだ。


 クロム人は人間と同じように働きに出て、お金を稼ぎ、自分たちの生命に必要な物を買い、娯楽をし、人間と変わらない生活をしていた。


 彼らがしている仕事は、自分たちの得意とする職業に就職している。


 あぁいうデカくて力がありそうなクロム人はパワータイプと言われて、建築現場ではかなり活躍している。


 普通にサラリーマンの仕事もしているクロム人もいる。数少ないが中には人間と見た目を全く同じ造りに変えて、ほぼ見分けがつかないクロム人もいるくらいだ。


 何故クロム人は有機生命体と金属との融合生命体として誕生したのか。


 それは元となる生命としての体が弱く、何もしなければ20年と持たない生物だそうだ。


 寿命を補う為に彼らは自らを機械と融合させ、地球時間で約160年もの寿命を延ばすことに成功した。


 そして彼らは自身の役割を与えられるとその分野で活躍する。そして体はそれに見合った物に作られる。こうしてクロム人は社会を築き上げてきた。


 しかしそれも、自分たちの住む惑星の太陽が異常現象が起こった為に終わりを告げる。


 太陽は次第に弱くなり、生物が生きる上での熱が無くなり始めていた。


 彼らにとっても有機生命体となる部分での食事は必要だった。他の生物を食す事によって、子供は成長していく。それが出来なくなればクロム人は滅ぶだけだった。


 そして彼らの決断は自分たちの生まれた星を離れ、新たな星に移り住むことだった。


 彼らは既に移り住む星をいくつも発見していた。その一つが地球だった。


 自分たちと似たような惑星で、太陽からの距離がほぼ一緒であったこの地球は、クロム星の双子星と言われ、いつか起こるであろうこの災害を予期し、避難先として大昔から候補に挙がっていた。


 そして彼らは星を出て、地球時間で約6500万年。距離にして11万光年を渡ってきた。


 彼らは特殊な培養液に入り、生命活動を一時停止させて、眠らせたまま来た。


 そして地球に近づいてきた時に目覚め、地球を観察すると自分たちと変わらない知的生命体の存在を確認した。それは今から26年前、2000年の事だった。


 クロム人は人間との秘密裏の接触を試み、色んな国との交流をしてきたようだった。


 そしてついに地球に降り立つ日が来た。


 その中で日本には宇宙船3隻、クロム人の数は4万218人を受け入れた。


 クロム人の技術提供のお蔭で、世界中の技術はかなりの発展を遂げてきた。


 中でもそれを一目で分かる事はアレだな。車が空を飛んでいる事だ。


 ビルの真上を静かに、40キロぐらいのゆっくりな速さではあるが、列をなして飛行していっている。


 そこには信号はなく、渋滞もなく、スムーズに目的にたどり着ける。


 走り方は全世界共通で、網目状になって走っている。一定間隔の幅を開けて、縦横と斜め4つの空路がそれぞれの高さを保って走る様になっている。


 目的地に付くとそこからゆっくり降下して着陸する。


 事故の発生率は人為的な事故が無ければ99%無しと言う。


 全ては自動運転で補われ、全てクロム人のコンピュータープログラムの制御によって動いている。


 もちろん手動で動かす事も可能なのだが、昔の様な一般免許と違って、さらに難しい技術を必要とする。免許書を車のカード差込口に入れないと手動運転には切り替えはできないので、普通だったら事故は起きないので安心である。


 今や地上の道路は歩道として使われるようになり、滅多な事が無ければ都会で地上を走る車は見ないな。見たければレース場か地方の田舎に行くしかない。


 これが経ったの12年間の出来事での変わり栄えだものな。


 当時8歳だった俺は、クロム人が地球に降り立つ前の日本を少しは知っている。


 クロムテクノロジーのお蔭で、世界各地の社会は急激に変わって行ったな。


 けれど発展と共に豊かにはなるが、犯罪の方も多くなってきているわけなんだが……。


 ……ウォンウォンウォンウォン。


「おっ」


 パトカーのサイレンが遠くで響いているのが聞こえてきた。音の動き方から察するにまたあの事件か……。


 よし、仕事を開始するかな。


 俺はエアバイクに跨り、ビルの上から飛び立った。


 ビルよりある程度の高さになったのを確認して、パトカーの音がする方へと速度を上げて飛んでいく。


 免許持ちは交通ルールを守れば、一般車指定高度外の飛行も可能だ。


 サイレンの音が大きくなり、俺はビルとビルの間へと入って、その場で停車した。


 今回の事件は俺の予測が正しければ、この道をパトカーが通るはずだ。


 俺は首に引っかけていたデジタル一眼レフカメラを構えた。


 人間の技術の中で、カメラの技術はクロム人にも中々負けてはいない。


 いやまぁ、大型で宇宙を見るくらいの望遠カメラくらいになると大差で負けるけれど、こうして手持ち出来るサイズの物に関しては、クロム人も納得する高度な技術を使用していると言っている。


 俺の仕事はプロのカメラマン兼ジャーナリストで、ある会社の正式社員として働いている。


 そして事件が起これば俺の仕事が始まる。


 ウォンウォンウォンウォンっ!


 よし、サイレンの音が近くなって来ている。


 そして向かいのビルの影から目的の物が急カーブでこちらにやってきた。


 エアカーを手動運転に切り替えて、交通ルールを違反する暴走する車だ。


 免許をちゃんと取得している人の中にも稀にこんなヤツはいるだろう。だが大半は違法で作られたコピー免許で手動に変えてしまう悪人がいる。最近その被害が拡大しつつあり、社会問題にも取り上げられている。


 俺の乗るエアバイクが付近の緊急サイレンを鳴らす警察車に反応し、自動運転に切り替わって道を開けていく。硬度を上げ、ビルに寄って行く。


 このなっては改造車でなければ手動運転に勝手に切り替えられない。


 あの暴走車も普通の車だったら、とっくに警察が遠隔操作して停車させられている。もちろんそんな事が出来ないように改造すると違反で捕まってしまう。


 この位置からだと、暴走車をよりインパクトある感じで撮れないな。


 座席のシートベルト装置を切り、バイクの上に立った。


 そして左腕を向かいのビルに向けた。


 パシュッ!


 コートの袖口から黒いビー玉の様な物を飛ばした。その物体は向かいのビルの壁にぶつかると、液状になったかの様に溶けて、ビタッと引っ付く。


 あの鉄球部分は物質接着装置と言われ、クロムテクノロジーが使われている。この道具をフックショットと呼んでいる。


 玉と腕に付けた装置はワイヤーで繋がっていて、俺はワイヤーを引き上げながら、バイクから飛び降りた。


 俺自身の体が空を飛んでるようになり、遠目から見たら片手を前に突き出して飛んでるスーパーマンだ。


 右手でカメラを構え、迫ってくる暴走車にピントを合わせていく。


 俺は暴走車の前を横切り、正面からのスナップショットを収めていく。中に乗る人物の顔もはっきりと映るぐらいに。その速さで被写体がブレないように。神経を集中させて連続撮りしていく。


 そしてあっという間に俺と暴走車は交差し、離れて行った。


 向かいのビルに両足で着地し、ぶら下がり状態になる。


 その後すぐに警察のパトカーが走り去っていく。


「頑張ってくださいよぉー」


 俺は手を振って応援しそれを見送った。助手席に乗っていた警察があきれ顔でこっちを見ていたな。


 警察からしてみりゃ、俺のこの行動も取り締まるべき危険行為なのだが、構ってる暇がないので多くは見逃される。それとジャーナリストの特権で、あまりにも目に余る事をしなければ大丈夫だ。


 まぁ今やってる行動は目に余る物なんだけれど、既に警察に何度もお世話になっているけど。でも罰則するにもそれに見合う違反行為も無い。注意するのも馬の耳に念仏と思ったのか、見逃してくれている。


 しかし今回は80キロ以上もスピードを出してないかアイツ。あんな速さじゃ自動ブレーキシステムは動いているだろうが、止まる前に停止距離がオーバーして突っ込むぞ。まぁそれが暴走車なのだがな。


 自分の命だけでなく、他人の命まで脅かそうとしている危ないヤツラだ。事件の大きさによっては終身刑も言い渡されるぐらいに、罪が重い犯罪となっている。


 あぁ言う暴走車を捕まえるのには、何台の警察車両で追い込みんで取り囲むか、電磁パルッシャーと言うトラップに追い込むかだな。これは電磁波の発生する空間を通らせて、エンジン部分の出力を低下させて、スピードが亀並みの速さになった所を捕まえる方法がとられている。


 警察は定期的に電磁パルッシャーの位置を変えているので、もし俺が逃げようとしても警察内部から情報を事前に把握してないと逃げきれないな。暴走するヤツの大半は電磁パルッシャーで捕まえられている。


「さて……。戻るかぁ」


 っと思って向かいのビル側に浮かぶエアバイクを見て、あそこまでもう片方のフックショット使って乗り込むのも、面倒だと思った。


 下を見て、高さは約60メートルか。これくらいなら降りるかな。下に人は少ないし。


 ワイヤーを伸ばして降りると良いだろうが、そっちも面倒なのでてっとり早い方法でいく。


 降りるタイミングを見て、体を支えていた接着装置の効果を切った。パッと離れて落下していく。


 体を丸めて回転させ、バランスを取る。


 タンッ!


 っと軽い衝撃音で、足からコンクリートの地面に着地する。


 俺は人間かと言われればちゃんと人間だと言う事を先に説明する。クロム人ではない。


 普通なら即死の高さだが、俺の履いているブーツもクロムテクノロジーで出来た物だ。ハイパークッションブーツと呼んでいる。


 衝撃吸収がとてもよく、50メートルくらいなら衝撃なんて無かったかのようにふわっと着地した感覚になる。


 俺の体重でも最大でも210メートルの高さからの落下の痛みの限界なく着地が出来る。限界は、飛び降りて着地した時、股の間にジーンと痛みが来る時だ。


 ワイヤーショットを使う際にも、壁に向かって打ち込み、ワイヤーを巻いて急接近する際には、このブーツで着地しないと壁に激突してダメージを受けるので、この二つの道具は必須アイテムだ。


 簡単そうに扱ってるこれらだけど、こっちも血がにじむような特訓をしている。誰でもこれだけ扱えるような物じゃない。


 こんな物をここまで扱える俺は、もう普通の一般人とは違うな。


「あ、あの! 白雪(しらゆき) 佐助(さすけ)ですよね。オレ、アナタの記事のファンです!」


 上から降ってくる俺を見ていた通行人が、近寄ってきて話しかけてくる。どうやら俺のファンだったか。


「握手してくれませんか? あの有名人を生で見れたなんて、自慢できるよ」


「えぇ、ありがとうございます。これからもサテライトイレブンを愛読してください」


 それから周りに居たミーハーな人たちから写真を撮られながら、通りを歩いていく。ここに長居してると騒ぎが大きくなって、人を巻くのに面倒になる。


 俺は撮った写真を確認していく。


 うん、バッチリだ。これなら1枚10万円で売れるな。


 だがこんな程度、実費で所有しているワイヤーショットなどの装備アイテムたちの、ローン返済にも充てられない。


 やはり一発でかい特ダネを撮って行かないとな。


 特ダネとなると400万円以上の値打ちが付いた写真も撮れる事もある。


 その400万にもなる大物を、俺はいつも追い続けている。今日は彼女たちに出会えるだろうか……。


 新たな時代の幕開けに混乱する日本社会。その隙を付いた犯罪に目を光らす者たちがいた。


 法律や憲法を無視して即座に悪と戦い、己が思う正義と道徳の道を進み、平和を守る事に命をささげた華蓮な乙女たち。


 その名も、特攻娘Jチーム。

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