4-2 その後のお茶会
「あぁそうだな。結構ぐっと来たぞ今の。あ、そうそう。聞いておきたい事があったんだ。前回の事件の事だけどさ。あの事件を国防省やCAAが事実を隠ぺいしようとして、俺の会社にまで押し入ってデータとか俺のカメラとか色々没収していったんだよ。でもそれにも負けずに公表したけどな。アレもどう思う? 隠すべきだったか。それとも表に出すべきだったか」
「表ざたにしてよかったでしょう。評論家の一部には、身近にそれだけ巨大な危険があり、民衆の不安を仰いでしまうと、生活に影響を与えかねないと言っておりましたわ。しかしむしろそんな危機が身近にあったのにも関わらず、気が付かないでほっといてしまい、最悪の事態を招きかねない事にもなりますわ。あの事件以来、一般市民の危険意識が高まり、怪しい場所を市民が警察へ報告し、それらの事実が浮き彫りとなったお蔭で、現在の段階で13つの犯罪組織の拠点が発見できましたわ。そこで行われるハズだった犯罪を未然に防げています。アナタたちがした情報公開は、多くの人々を守り、そして自分たちの身を守る為の意識を高めるきっかけを作ってくれました。とても良い行いだと思いますわよ」
「だがそのお蔭で、政治に対しての支持率は下がったけどな。こうなると思ったから、隠したかったんだろうな。ま、俺もこうなるとは予想はしていたけどね」
「でもそれよりも隠したかった事がありますわね」
「あぁ、マテリオンだな。アレはな……。さすがに内容は伏せたよ」
記事にはアーチャーズがミサイル開発をしていた事だけを乗せて置いた。赤城もマテリオンの事を聞いて、記載するのを止めようと同じ判断をした。
結局、あの場所にマテリオンは見つからなかった。しかし研究施設内の設備に汚染された形跡を発見した。
やはりあの場所にマテリオンはあって、研究されていたと言う可能性が明らかに高くなった。
しかしこの真実は、俺たちが扱うような一般人向けの記事には、とても大きすぎる事実だ。
マテリオンの兵器実用化は恐怖は、国一つ所の問題ではなく、全世界に滅びの警告を与える事になる。この真実を一般人が知ってしまえば、世界経済が大混乱になるのは確かだ。人々の生活はめちゃくちゃになってしまう。
そしてそのマテリオンが何処からアーチャーズの元に渡ったかだ。それはJチームにも、俺にも分からない。
だが一つ予想している事がある。
そのマテリオンは地球にあった物ではないのかと。
マテリオンの研究は世界条例で禁止されている事だった。だけれどそれが本当に守られているかなんて分からないのだ。
もしかしたら日本の政治がアーチャーズと暗躍して、あの研究施設で開発していたと言う仮説もあり得る。
しかしこちらの仮説もありえる。アメリカにあった物が盗まれ、それが日本に持ち込まれたと言う事も。もしくはその二国どちらともない場所からと言う事も……。
どこの国から盗まれたか知らないが、その事実が知られた場合、その国は他国との信頼関係を失い、世界平和の状況は危うい雰囲気になってしまうのだった。
そう言う理由があった為に、国防省やCAAが必死に情報を隠ぺいしようとしていた。
雑誌が公表された時、国防省の茂呂泉さんから直々に電話があったが、最後の一言に『本当にありがとう』と言って切っていたな。やはりメインで隠したかった内容はマテリオンの事実だったんだろうな。
「マテリオンの情報を伏せたのは正解でしたわね。まぁ白雪さんなら絶対にすると思いましたので、安心していましたけれど」
「ありがとう。またこの事実も、さっき話した事と同じ、真実は闇に葬られるんだろうな」
そう。こう言う風に国民の生活の安定を守るのも、大事な事なのだ。全ての真実を知らせると言うのは、その時を生きる者にとって心に負担を背負わせる苦行を与える事にもなる。
本当はどちらが良いのだろうか。それは人それぞれの考え方によって決まるが、俺自身は自分が思う事で決めていく。隠す物は隠し、晒す物は晒していくんだ。
「あー、暗い話ばっかりしてるのもせっかくのお茶会なのに残念だな。話題を変えて、アレからそっちはどんな感じになった? 世界に知られるJチームになったからね」
「大変騒がれていますわよ。Jチームのサイトに海外からのアクセスも増えましたの。こう多くなると、そんな海外の人たちからの救済の声も上がっていて、無視できない程に増えてきましたわ」
「っとなると、今後は日本だけでなく、海外にも活動場所を増やすのか?」
「さすがに国外になると難しいですわ。人脈もそうですけれど、日本の政権は西条家の手中にありますから、これだけ自由に暴れまわれるのですから」
それもそうだな。この日本でJチームを裁判で裁ける場所は、まず何処にも無いからな。
「それに治安もありますわ。日本は皆さんが思っている以上に平和な国ですわよ。こうしてお茶会が出来る程に。海外に出ればオチオチこんな休憩もしていられませんわ。場合によっては日本に逃げ帰ると言う羞恥を晒し、Jチームの株価は下がりますわ。そうするとワタクシたちは活動しにくいですし、簡単に物事を進める事はできませんわよ」
「確かにJチームと言う小規模で動くとなると、多くの敵に囲まれると厄介だよな」
「けれど今まで通りにその時に気が向いた事、目に余る様な事には対処していきますわよ。でもアチラの方で解決できそうな物に関しては関与しませんわ。その国の治安団体が一生懸命に頑張ってるのにも関わらず、それにちゃちゃをいれる無粋なマネも嫌ですし」
「その割には前のCAAには牙向いたね」
「アレは気に食わなかったですから。あの方は自分の出世意欲の為に他人がどうなろうが気にした人ではありませんでしたから。そのせいで白雪さんも危機的状況に置かれたではありませんか。全く、迷惑な方でしたわ」
「その後のあの人はどうなったか知ってる?」
「知りませんわ。別に知った所で、今後関係性を持つこともない人の事を、調べ上げる時間も手間ももったいないですわ。まぁ大方の予想では謹慎にでもなってると思いますわよ」
「もしくは左遷かな。寒い地方に職場を移動させられたりして」
「そうなっていたら面白いですわね。あっと……、この話をするのを忘れていましたわ。白雪さん、身の回りには気を付けておりますか? まぁ先ほどの事を聞いていれば、問題はないかもしれませんけれど」
「身の回りか? あぁ、気を付けているよ。なんたってあのアーチャーズの基地内をジャーナリストとしてではなく、侵入して諜報活動したんだからね。報復を受けるんじゃないかと思って、行動には気を付けているけど」
「心配は要らなかったようですわね。一応こちらでもCAAと国防省の報告書には、白雪さんの活躍した部分を改ざんしておきました。事実を知る者は、ワタクシの屋敷での密会をした人たちだけです。突入の際に居た軍人や自衛隊の方々は、いつものJチームを追い掛けてきたジャーナリストでしか、認識されていませんわ。しかしこれだけ伏せている情報とはいえ、状況は危険である事には変わりがありませんので、お気を付けくださいませ」
「わかったよ。そっちも気を使って色々とやってくれて、ありがとう」
「こちらこそ。白雪さんにご迷惑をお掛け致しましたわ。本当にありがとうございました」
「しかし報復を受けると予期しておいて、この場所に居るのは軽率と思われます」
メイドちゃんが指摘してくる。
「ん? そうかな? 結構安全地帯としては、条件は良い方だと思ってるけど」
「ではどのように思いでしょうか?」
「この場所は半径10キロメートルに至る建物の中で一番大きい。狙撃をするにも、このビルから頭を出さない限りほぼ不可能だからね。後はここで待ち伏せするにも、階段部分以外は何もない、隠れる場所が限られるから、ステルス機能を使うしか方法はない。赤外線ゴーグルは常時持ってるから、この場所に降りる前に確認してから降りればいいし」
「IEDの方は考えていますか?」
「I……E……D……だとっ?」
その言葉に俺の表情は怒りに変わり、手を血が滲むほど握りしめた。
IEDは即席爆破装置の事だ。よく爆弾テロやゲリラなんかで言われる言語である。
「メイドちゃん。それは白雪さんにとっては……」
「いや、いいさ。大丈夫だ……。まぁ考えた事は考えたさ。しかしこればかりは回避のしようがないよね。普通の生活をしているだけで、身近にいつ起こるか分からないものなんだから」
「そうですわよ。メイドちゃんと違って、常時探索器を起動させて生活するには窮屈すぎますもの。それに探索器と言っても、爆弾の種類によっては発見できませんもの」
「まぁこれだけここに何もないと、何か変わった物がアレバ近づかないでおくようにはするさ。違和感アレバ細心の注意をするようには心掛けているし」
「そうですか……」
メイドちゃんは周りをキョロキョロと見る。
「あの各所ある排水溝の中に爆弾を仕掛け、この屋上一体を吹き飛ばせる事が可能と推測。プラスチック爆弾と携帯電話で可能。各爆弾にメールにて一斉送信で起爆。こんな感じで楽に出来そうです」
「こわっ、マジかそれ……。だからIEDは嫌いなんだよなぁ……。あー、もうこの場所にも来ない方がいいのかな。Jチームがこうしてこの場所を特定してしまってるくらいだし……」
「そうです。特定の場所に居る事。同じ場所を同じ時間に徘徊する事。一目の無い場所。物を置くのにカモフラージュがしやすい場所。そう言う所は出来る限り避けてください。ゲリラはいついかなる時も油断ならない相手です」
「気を付けます。後は追跡できないようにするって事だよね」
俺はスマートフォンを取り出し、分解して電池とICチップを取った。
「もう普通のスマフォも使えないな。しょうがない。やっぱり追跡不可能の特殊なスマフォを闇市場で買うよ」
「それでしたらワタクシがプレゼントいたしますわ」
「ホント? どんなタイプ?」
「IA―90Rタイプのスマフォを基礎にして改造したJチーム専用スマートフォンですわ。ワタクシたちと同じものを差し上げます」
「おぉー、それって前に見たアレだろ。アレ改造を加えすぎて中身が全然原形を留めてないだろ。七姫の画面を見た時ビックリしたぞ。何あの未来的操作パネル」
「メイドちゃんとシマリスちゃんが組んだ、人間のプログラミングとクロムプログラミングを使用していますもの。そん所そこらの人間のプログラマーにでさえ解析は不可能ですわ。逆探知や追跡ができる者はクロム人のプログラマーでしか無理ですわね」
「そりゃ本当にスゴイ物だな。本当にもらってもいいのか?」
「えぇ、もちろんですわ。今後も共にすることが多くなりますし」
不敵に笑う七姫。どうやらあの一件で、Jチームの距離が本当に縮んだようだな。
「それにそのスマフォを持っていらっしゃれば、いつでもJチームの全員の位置を確認できますのよ。こちらも白雪さんの身の安全を守りたいですし、そちらもワタクシたちを追いかけやすくなって、どちらも得を致しますわよ」
「そりゃ嬉しいな。それじゃぁありがたく受け取るよ。今後ともお世話になります」
「えぇ、こちらこそ」
「って、なんかまた肩っ苦しい話してないか?」
「そうですわね。んー、何故でしょうか?」
「まぁこれからもっと会話をしていけば、そのうち普通の世間話で時間を浪費するだろう。今は互いに何を話したらいいか分かってないんだからさ」
「ふふっ、ならまたお茶会がある時には、ご招待致しますわね」
「ごちになりますっ♪」
その後はまた政治の話や、この前起きた自然災害の話などの他愛のない世間話をしてしばらく過ごし、時間も夜9時になった時を頃合いに、七姫たちは無人自動運転でエアカーを呼び、帰って行った。
俺も最後になるかもしれないこの景色を目に焼き付けて、エアバイクに乗って帰宅した。
どうやらこれからは、Jチームとより親密となって行動していく事になるんだろうな。
すっげー楽しみだっ! なんたって俺はJチームが好きだからな。
それにあんな美女たちに好意を持たれているようだし、何か絶対にないなんてあり得ない。
そんな波乱万丈の戦い、胸躍る恋愛の日常が、これからも待ち受けている。
さぁ、次も気張って行こうか!




