表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特攻娘Jチーム  作者: 加熱扇風機
第一話 特攻娘Jチーム
13/18

3-6 suicide attack

「なぁ、ヤイバはどうするんだ?」


「んー、ほっぺたでもつねって起こしてみたら?」


 そんなつねっていいのかな?


 俺はヤイバのほっぺをつまんでみょーんと伸ばした。おぉ、もち肌でのびーっと伸びる。


「う、うぅーん……。まだ……食べられうー。おかわりぃ」


「寝ぼけてないで起きろー。着いたぞー。みんな行ってしまったよ」


 即効性の睡眠薬でも飲んだのだろうが、わずか1分足らずな移動だった。まだその効力が抜け切れてないだろうな。起きるのかな?


「うぅ……。ん? うー……」


 寝ぼけた目を開き、俺と目が合う。引っ張ってたほっぺを放した。


 トロンとしたうるんだ目が俺を見つめている。カワイイなおい……。


「んー……、眠い……」


「ほら、水飲むか?」


「ん、ありがと……」


 ペットボトルを受け取ったヤイバは一口飲んで、俺に返してきた。


「いやー、初めて乗ったけど、あんなにすごかったのか。そりゃヤイバがトラウマになるよな」


 ヤイバに話しかけてみたけど、こっちの言葉に全く反応してくれなかった。


「ふわぁー……ん」


 ヤイバは口に手を当ててあくびをする。普段目にするヤイバの真面目な部分と違った、油断したその表情に、俺はドキッとトキメいた。ヤイバってこういう一面あるんだ。


「ねぇ……、シマリー……ちゃん。スカッシュ……ちょうらい。まだ……眠む……、すぅー……、くぅー……」


 っと言うと二度寝を初めてしまった。よっぽど強い睡眠薬を使ったのか。


「いや、俺は白雪だけど……。スカッシュって……。えーっと確か、強力な眠気覚ましだっけか。何処にある?」


 俺はスカッシュを探して、前の座席の物入れや、天井の物入れなんかを開けて調べていく。


「真ん中の座席の中にあるよぉ」


 そう言われたので、座席の椅子を開けて調べた。銃のサイレンサーやスコープなどの備品が入っていたその中から、スカッシュを見つけた。それを一粒取り出して、ヤイバの口に入れて上げた。


「ん……。むぐ……。んっ! ふぅーーーーっ! くぅーーーーっ!」


 体をキューンッと縮こませる。俺も食べたことがあるが、本当に体の真まで電気が走ったかのようにスカっと来る冷たい爽快感が走る。眠気なんてぶっとぶ。


「ふぅー……。スッキリした……。 え? えっ? 白雪?」


 目の前の俺を見て、きょとーんとした目を向けていた。こちらをじっと見つめてくる。


 真ん丸な目が挙動不審に回りを見初めて、また俺の方に向き直ると、状況を掴んだようで、顔が一気に真っ赤に染まった!


「うわぁーーーーっ! 見たなっ! 私の寝起きを見たなーーーーっ!」


 ヤイバは俺に掴みかかろうとグイッとこっちに襲いかかった。が、シートベルトがされていたので、体が引っかかった。シートベルトを取ろうと奮闘してるが、焦っていてなかなか取れない。


「このっ! 白雪ぃーーーーっ!」


「あ、あははー。俺も先に行ってるよ」


 その場に居るとボコボコにされそうなので、俺は一目散に逃げ出した。後ろからヤイバの怒鳴り声が聞こえる。追い掛けられてるな。


 積み上げられたパレットの中に紛れ、暗闇に潜んでいく。目の前に壁があるのか分からないくらいだな。


 コートから暗視スコープ装備を出して、カメラに装着した。カメラを映像を見ながら、暗闇の中を進んでいく。


 追って来ていたヤイバも振り切れた感じだな。


 さてと……。七姫が見ていた映像だと、ここから5ブロック離れた場所の倉庫だな。





 あぁーもうっ! 恥ずかしい所を見られた! よりにもよってアイツなんかにっ!


 いつもならシマリスちゃんが起こすのに……。もうっ!


 慌てていたから、車に刀以外の必要そうな装備を忘れてしまった。


 車に戻ると防御装置である機関銃が車の至る所から出ており、その銃口がこちらに向いた。


『隣の客はっ!』


 シマリスちゃんの声が車のスピーカーから聞こえてくる。


『まんじゅう好き』


 銃口が元の初期位置に戻った。


 窓が開くとシマリスちゃんが顔を除かせる。


「くすっ。お兄さんを追いかけるのに必死で、真面目なヤイバが忘れ物するなんてねぇ」


「う、うるさいっ!」


 車のドアを開けて、忘れてきた暗視スコープを持って、さっさと立ち去る。


 私は片目に付けた暗視スコープを頼りに、倉庫裏の暗闇を進んでいく。


 明るい場所は基本的には歩かないようにする。なので暗い場所ばかりなので、暗視スコープが無いと、全く何も見えない事も多い。


 闇に潜む敵が居る場合に、この装備の大事さは身を持って知っている。あの時は苦戦を強いられた事があったからな。


 っと、通信機を隠密用に切り替えておかないと。音で敵に居場所がばれたら大変だからな。


 私は左耳にイヤフォンマイクを付けて、連絡が入る際にタブレットから音が出ないように設定する。


 ピピッ!


 っと同時にイヤフォンマイクから音が出て、通信が入った。


『目的の倉庫内部の現状が把握できましたわ。ミサイルを発見。鋼鉄製の箱に厳重に保管されていますわ。それと肝心のマテリオンは見当たりませんわ。本当にデマだったのか、それとも貴重なマテリオンだけでも既に他の場所へ運び込まれたか。どちらかでしょうね。まぁこれで被爆する恐れはありませんので、特殊防具を着込む必要はありませんわね』


 そうか、マテリオンはないのか。


 デマであればいいのだが、あんな物が兵器に転用されれしまえば、地球の半分は爆発の被害に合い、その反動で爆破に巻き込まれなかった地域にも影響を与えるのは間違いない。


 つまりは地球は滅び、人類は愚か、全ての生き物が全滅する事になる。


 マテリオンが野蛮な者の手にあるのならば、絶対に取り返さないといけない。


『敵の動きがソワソワとしているので、缶詰工場の襲撃の情報が、こちらにも入っているのでしょう。警戒態勢が高い様なので、お気をつけて』


 私は進みながら、七姫の情報と指示を聞いていく。


『倉庫外部の情報。見張りが合計14人。倉庫のメイン出入り口に4人。裏の出入り口に4人。その他4名が倉庫周辺を反時計回りで周回。一人辺り平均距離は約130メートル間隔。残り2名が屋上で、前後それぞれを見張りを行っていますわ。その2名はさぼり癖有り。まだワタクシが確認していない援軍の恐れもあるので、内部に侵入した際に背中を撃たれる事の無い様に注意を怠らぬようにお願い致します』


 さすが七姫の情報収集は細かいな。いつもこの情報と的確な指示のお蔭で、私たちはとても助かっている。


『次に内部の情報ですわ。敵は34人。武装した者は27人、残りの7名の非武装は休憩中か、科学者である可能性がありますわ。武装レベルは15。バーザ式銃で統一され、主要武器にアサルトライフル、ハンドガンを所持。中にはコンバットナイフを持つ者もいるので、接近戦にご注意ください。手榴弾などの爆破物の携帯は見受けられませんわね。投げ損ない、誤爆した時にミサイルが危険ですものね。頭の悪い方の筆頭でなくてよかったですわ。それと研究施設では見られませんでしたが、武器所有者の兵士全員がファイシールドを装着していますわ』


 ファイシールドか。それは防弾チョッキと同じで、バーザに対して効力を弱める効果がある防具の事だ。


 バレットやレーザーを受け止める鉄の服と違い、こちらは布と同じものを使用していて、衣服となんら変わりない使用感で扱える。その為、見た目では判断付きにくい物だが、熱を吸収する効果があるので、サーモグラフィーなどで判別しやすい。


 中には防弾チョッキとファイシールドが一緒になった、ファイアーマーもある。


 ちなみにJチームはファイシールドの衣服を全員着用している。時には防弾チョッキも着込んでいく場合もあるが、アレは重くて私は嫌いだ。 


 そしてファイシールドの弱点は防弾チョッキと同じで、露出している部分を狙われる事だ。


 つまりは頭、首、場合によっては露出した手や腕なんかも狙われる。


 防弾チョッキより防御範囲が広い分が利点でもあるが、衝撃は普通の衣服となんら変わりない貫通力があるのも弱点でもある。なので打撃や衝撃、斬撃には注意しなければならない。


「七姫。一つ疑問に思ったのだが、研究施設には使ってなかったのに何故だ?」


『おそらく研究所の方はもう捨て駒でしたのでしょう。戦闘に使う貴重な備品も持ち出されてしまったのでしょうね』


 同情してしまうな。仲間に見捨てられたなんて。いや、仲間なんて思われてないか。本当に捨て駒なんだろう。酷い……。


『スゴイ情報量だな。いつもこんなに集めてから始めてるのか?』


 通信に白雪の声が混ざった。今回は白雪も一緒と言っていたが、ブリーフィングにまで参加させるつもりなのか……。


『えぇ、時と場合によりますが、今はまだ時間に余裕がありますもの。しっかりと出来る範囲を全て行いますわ。そして内部構造の映像を送りますわ。確認をよろしくお願いします』


 そう言われて、タブレットを取り出して確認する。


 倉庫の構造は、前に倉庫内部での戦闘を予測した訓練で行った時とほぼ同じ構造をしている。これは動きやすいな。七姫はJチームの為に、月に何回か、独自でシュミレートした実戦形式の訓練を用意してくれる。敵は一般人のサバイバルゲーム好きの連中だが、ほぼ実践に近い経験が得られるので、本当にこういう時に役立ってくれる。


『今回のミッションを説明しますわ。主要任務は兵器の安全の確保。非武装の科学者を含む敵全員を戦闘不能にする。取り逃がしは許しませんわよ。以上ですわ』


『了解』


『では各自の指令を出しますわ。メイドちゃんは屋上の2名を排除。その場で内部突入の合図があるまで待機。屋上からの襲撃をお願いしますわ。ワタクシとママは周回する東側の敵2名を排除。ヤイバとシマリスちゃんは西側の2名の排除をお願いしますわ』


 西側……。出遅れた私に近い方を選んだか。申し訳ない……。


『周回する敵の排除の確認後、ワタクシたちは裏の出入り口の敵4名を排除。ヤイバたちはメイン口の敵4名の排除を行います。準備が整い次第、内部への突入を開始いたしますわ。まずはメイドちゃんが天上から至る所にフラッシュバンをばら撒きますわ。その後、全員突入を開始。敵を包囲した状態での乱戦になりますわよ。各自の全力を持って対処してくださいませ』


 よし、まずは隠密ミッションからだな。


 相手は多忙に無勢。初手で有利に動くためには、メイドちゃんのフラッシュバンでの奇襲が要になるか。これが失敗すれば苦戦に追い込まれる。軍の到着を待ちながら戦うしかない。そうなればJチームのでしゃばった事へ悪態をつかれ、メンツが丸つぶれになる。


 私は目的の倉庫の西側にやってきた。そして周回する敵兵を発見した。


「こちらヤイバ。周回する敵を発見。いつでもやれる」


『ほーい。こっちは既にターゲットロックオン済みだよ。それじゃ、やっちゃおうか』


 私は音もなく風の如く走り出した。そして敵の背後に駆け寄り、刀を抜いて切りつけた。


 スパーンッ!


「ぐっ!?」


 背中に刀を叩きつけた。敵は前のめりで倒れた。もちろん切ってはいない。


 この刀、安羅義丸(やすらぎまる)は逆刃刀になっている。主要である部分は非殺傷率が高く、木刀の様に相手に叩きつけたダメージを与える。


 もちろん刃の逆部分では斬る事はできるが、Jチームの心情に、敵は生かして捕まえるがモットーなので、生き物以外の物にしか峰打ちはしない。


 しかし非殺傷率が高いといえど、辺り所によっては死ぬので、使い手の技量次第だ。鉄の棒で頭を叩きつけられたら脳死はもちろんあるし、骨の折れ具合によっては、肺に突き刺さったり内臓を痛めたりとして、死に至る事もある。ショック死なども考慮しなければいけない。


 それらを考えての手加減を入れた一撃を入れるのに、本当に長い事修行したものだ。


 殺すことは簡単だ。しかし相手を生かして戦うのは、これほど難しいことは無い。だが私は、社会にはびこる悪を懲らしめるために、ひたすら剣道を極めていった。


 そして1年前、その機会がついにやってきた。


 中学生からカツアゲをする不良グループを偶然見つけて、私はその者たちをこの刀で成敗してやった。正義として義を果たせたと、私は満足した。


 しかし社会のルールの結果。私は傷害罪と凶器の使用でさらに罪が重くなった。罰金を50万円もその不良どもに渡すハメになったのだ。


 悪を倒すために強くなったのに、その力を振るう事が出来ない。


 正義とは一体なんなのだろうか。法律とは一体なんなのだろうか。


 私のしてきた事は無駄で、警察にでも全て任せればいいような世の中なのだろうか。


 だったら私も警察になろうと思い、警察署に行ってみたら、私には犯罪の前科がある為に警察になる事は不可能と言われた。


 何をしたらいいのだろうか。何が正義だ。私の努力は無駄なのか。


 そんな憤りの中で、私は七姫……。七海に声を掛けられた。


 私と思う所と一致し、そして歳が近いって事もあってすぐに仲が良くなり、そして七姫が思うJチームへの立ち上げに、私は力を貸すことにした。


 私は社会の硬っ苦しいルールは苦手だ。私が学んだ義に忠実を近い、仲間の為に、弱き者たちの為に、この刀を振るう。


 例え法を犯して非難されようがなんだろうが、今の状態で良い。その振るう刃に輝きがあるうちは、この道に進むことが正しいと私は思っている。


『片付けたよ。それじゃメイン入り口に行こっ!』


「あぁ、ここからが正念場だ!」


 さぁ、悪者たちよっ! 我が安羅義丸の刃の錆となるがいいっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ