忘れないで
唇を合わせた時の
あなたの体温も
もう忘れてしまった
なかったことにするのなら
それでもいい
夢だとしても
幸せだったから
私の全部を
捧げたはずなのに
あなたは指先一つ
残してはくれない
何食わぬ顔で笑っては
ここを切り裂くの
寒い寒いと凍えたことも
私の耳に触れたことも
覚えているのに
愛したことは
忘れたふりをする
待っててと言ったのに
冬空は私を一人にした
苦しいと伝えても
あなたはもう来ないから
私も酔ったことにして
忘れたふりをした
せめてあの夜を
忘れないでいてと
泣く勇気もない
忘れられても仕方がないほど
私は小さな花だったという事
星を見上げたため息は
いつしか真っ白に空を染めて
滲んでいった
なかったことにするのなら
それでも良い
夢だとしても
幸せだったから。