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待ち合わせ、再び

 そのメールが届いたのは、年が明けて1週間程が過ぎた頃――時期でいうなら、丁度冬季アニメがスタートし始めた頃だ。

 夜中の寒さを我慢しながら、真っ暗なリビングにて新しく始まったアニメを観賞していた僕。ちなみに、この作品のヒロインは蒼坂さんだ。

 あまりに露骨すぎる女キャラの裸がちらちらと映ったり、主人公がラッキースケベ過ぎたりと、いささかやり過ぎ感はあったものの、中々楽しめるものだった。

 そんなアニメの1シーン、ヒロインが教室にて女友達と談笑する場面があった。その内の1人が僕の見知った――いや、聞き慣れたというべきか――声で話をしていた。

 その声は、まさしく十和瀬そのもの。

 あっという間の30分が終わり、画面を食い入るように見つめていた僕は、EDクレジットにも【女生徒A】として十和瀬朱里の名前を確認した。間違いない。十和瀬は、このアニメに出演している。

けれど、どういうことなのか。声優は、もう辞めたはずではなかったのか。

 その時、横に置いていた携帯電話が発光した。

 メールが届いている。

 文面はただ1言。『見た?』とだけ。ちょっとしたホラーだ。

 しかし、文面よりなにより、僕が驚いたのは、その送り主であった。

 十和瀬朱里。

 まどろみかけていた僕の意識が覚醒する。

『アニメの話?』

と、即座に返信。

『そう』

 お互いの文面は短い。本当に用件のみを伝えているに過ぎない。

『それなら見たよ』

『そう』

『十和瀬が出てて驚いた』

 短い相槌だけを即座に送り返してきていた十和瀬だが、今回はなかなか返事が来なかった。

 歯磨きをして、トイレを済ませ、明日は特に用事はないからとアラームをセットすることなくベッドに入る。

 温かい布団というものはやはり偉大なもので、さきほど覚醒した意識が眠気に負けて、瞼を下ろす。

 そんな中でも、僕の意識は十和瀬へと向いていた。さっきのメール、一体なんだったのだろうか。

「おっと!」

 またも眠気が遮られた。今度は着信。

 発信者は案の定、十和瀬だった。どうやら、僕が眠気に負けそうになっているタイミングを的確に見極めるスキルがあるらしい。……なんの役にも立たないこと間違いなしだけど。

「……はい、もしもし」

『遅い』

「はいはい、すみませんでした……」

『謝り方に誠意がこもってない』

「誠意って、こんな時間に電話かけてくる方が言うセリフか?」

『ならお互いに悪かったってことでいい?』

「……ま、それでいいや」

 これ以上言っても無駄だってことは十分に理解している。それ故に、僕は次なる話題に話を移すことにした。

「……それで、なにか用?」

『……怒ってる?』

「ちょっと。もうすぐ寝るつもりだったし」

『そうじゃなくて……』

 言い淀んだ十和瀬に、僕は軽く微笑んだ。勿論わかってる、ちょっとした意地悪をしてみただけだ。

「怒ってないって言ったら嘘になるよ。でも、よかった」

『よかった?』

「うん。僕、君に嫌われたかと思ってたから」

『そ、そんなことない!』

「うん、だからそれがわかってよかったってこと」

『……ごめんなさい』

「どうして謝るの?」

『だって、遊月くんを心配させちゃったし』

「……あぁ、そんなこと。確かに心配してないと言ったら嘘になるけど、でも、なにかあったんでしょ?」

『うん、それはそうだけど……』

「なら、僕はなにも言わないよ。……ちょっと寂しかったけど」

 もっと平静を装い、丁寧に伝えることができたらよかったんだけど、まだまだ僕にはそんな器用なことができるような器じゃないらしい。

『そう……』

「うん、だから心配しないで、っていうのはちょっとおかしいかな。あ、でもよかったら、もう少し詳しい話を聞かせてほしいんだけど……」

『……わかってる。私の方も、遊月くんに伝えたいことがあるから。だから――』

 続く言葉に、自分の耳を疑った。

 十和瀬はこう言った。

『――明日の夜8時。遊月くんが勇気をくれた、あのお店で待ってるから』



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