突然の別れ
「なぁ、奏真……」
「なに?」
「朱里ちゃん、どこ行っちまったのかな……」
「さぁな」
「さぁな、ってお前、寂しくないのかよ?」
「……寂しいよ」
道場の床に寝転がり、天井を見上げながら僕と康太は、十和瀬について思いを馳せている。
文化祭は、僕や十和瀬の不安や心配を覆すかのような熱気と歓声、そしてそれすらも掻き消すほどの凄まじい拍手によって幕を閉じた。彼女を否定したり、嘲笑う者などいるはずもなく、ただ称賛の声のみが飛び交った。
それを全身に浴びながら、その気持ちを表現するかのように大きく礼をした十和瀬の姿は、今でも僕の目に焼き付いている。
また十和瀬のファンが増えるんだろうな、なんて冗談を交わし合いながら、教室へと戻った僕達。だが、ひと足先に戻っているはずの十和瀬の姿はどこにもなかった。
翌日も、その翌日も、十和瀬は欠席した。
そして、彼女が転校したと担任から聞かされたのは、月が変わった中旬ほど――文化祭から、約1ヶ月が経った頃だった。
転校したと聞かされてから今に至るまで、何度となく電話をし、またメールを送ってみたものの、一向に返事はなかった。
アドレスを変えたわけでも、着信拒否をされているわけでもないものの、ここまで無反応だと逆に連絡しづらくなってしまい、遂には彼女に連絡することを止めてしまった。転校を聞かされた時に僕の心にできた虚無感をこれ以上広げることになるだけだと気づいたから。あちらが連絡を拒んでいるなら、もはやなにもできない。
「……お前の方には連絡ないのか?」
「うん、残念ながら」
「そっか……」
残念そうな声が道場に響く。
「香川ちゃんの方も同じって言ってたし。もしかして、朱里ちゃん、俺達のこと忘れたいのかな?」
「……かもな」
返答が、どうしても投げ槍になってしまう。悪いとは思いながらも、僕自身どうすることもできない。
「遊月くん、橘くん、練習、始めますよ。防具を着けてください」
白の胴着に身を包んだ香川からも、どことなくいつもの覇気が感じられない。当然といえば当然だ。なんだかんだで、香川の方も十和瀬をかなり気にしていたし。
「……やるか」
「そうだね」
気持ちは落ち込んだまま、僕達は起き上がる。香川だって同じ気持ちなのに、男である僕らがいつまでもうじうじと悩んでいるわけにはいかない。
そんな風に意気込んでみたところで、練習には身が入らず、ただ時間だけが過ぎていった。




