転校
引越しを終えた翌々日。
いつもどおりに登校すると、学年全体が騒がしいことに気がついた。いったい何があったのだろうか。
教室へ入ると悠斗がものすごい勢いでこちらへ向かってきた。
「髙林聞いたか?」
「ちょ、悠斗近いから。バック、2歩バック。で、何?」
「だーかーらー、転校生のことを聞いたか聞いてんの」
「転校生がどうしたのよ」
「となりのクラスに来たんだよ。私立西東学園から」
「は?お坊ちゃま学校からわざわざ?そんな馬鹿なことあるわけないじゃない」
西東学園はここから一駅向こうにある、金持ちのボンボンが通う有名な男子校だ。世間のことに疎いわたしでも知っている。
「馬鹿なことがあるからみんな騒いでるんだよ」
「で、その馬鹿の名前は?」
「榊侑斗。俺とおんなじ名前だったから覚えちまった」
なんで。どうして。誰か説明して。わたしにわかるように今すぐ!!
・・・落ち着けわたし。家がこの学校から近いんだ。転校してもおかしくはない、のか。
だったら一言くらい言えばいいのに。いや・・・そういえば、
「話しかけられるたびに嫌そうな顔したからな・・・」
言えなかったのかもしれないな。雰囲気的に。
一緒に生活していてイラッとくる態度をしてる割に性格自体は悪くないことが分かった。だからといってどうもしないけど。
いや・・・待てよ。同姓同名の別人っていう可能性もあるかな。(認めてしまえばいいのに認められない。嫌な意地)
「もしかしてさ、その転校生って銀髪だった?」
「え?あぁ、うん。そうだけど、何で知って「明奈さん」うわっ・・・!」
突然聞こえてきた声に悠斗が飛び上がった。わたしのほうへ近づいてきたからよけて背中を押すと、「痛っ」という声とゴンッという鈍い音が聞こえた。ご愁傷様。
「・・・侑斗君」
もう見てしまったから否定できない。隣のクラスに転校してきたのはわたしの弟になった榊侑斗だ。
「柚樹さんが今日の放課後開けておいて欲しいって言ってた」
侑斗君は大きな音をたてて倒れた悠斗に目もくれずわたしの姿を見つけると声を発した。
あぁ、みんなの視線が刺さっている気がする。とりあえず、返事をしておくか・・・。
「・・・了解。あー、ありがとう。伝えてくれて」
「別に柚樹さんに頼まれたから伝えただけだ」
そっけない返事をすると軽く頭を下げて弟はこの場を離れた。
さっさと戻るくらいなら休み時間とかに来てくれればよかったのに。クラスメートの視線と廊下からの視線で溶けてしまいそうだ。人とそんなに関わらないから注目されるの慣れてない。
「転校生と知り合いなのか?」
「名前で呼ばれてたよね。なんで?」
「髙林テメェ、よくも押しやがったな・・・!デコ打ったじゃねえか」
・・・。ハハハハハ。
「あはっ・・・」
笑うしかないね。どうしようかこの状況。質問攻めだ。
まったく、面倒な1日になりそうだ。
家に帰りたい・・・いや、どこか遠くへ行きたいな。家に帰っても仕方ないし。




