最終話
「母さん。もう少しで逢えるね」
少し先のことだと思っていたけれど、もうすぐだよ。
病院を出た後、わたしは家に帰らずある場所へ来ていた。電車を乗り継いで40分ほどかけて向かった先は、母が眠る場所。
こじんまりとしたお寺の一角にそれはある。
母は髙林の家の墓に入ることではなく、祖母が眠る墓で祖母と共に眠ることを望んだ。
「ねえ、母さん。わたしね、好きな人が出来たのよ。ありえないって思ってたのに、簡単に自覚しちゃった」
母さんと父さんみたいに、もっと早く侑斗君と出会っていたかった。
わたしは、わたしなりに人生を楽しんだよ。
後悔がないとは、言えないけれど、それでも良い人生だった。
冬。
わたしの命は、消えようとしていた。
「好きだったよ」
伝える言葉は過去形。
未来のないわたしにはないのだ。好きです、と伝える資格は。
「どうして……」
「え?」
「どうして『だった』なんだよ。俺は明奈が好きだ。好きだったと言われても、困るっ…」
あぁ。この人は、なんて優しいんだろう。
わたしなんかのために涙を流してくれるんだから。
わたしは意識して微笑んだ。
「ねぇ、今夜まで。今夜まで侑斗君を『好き』でいてもいい?」
わたしには、たぶん明日は来ない。今日が人生の一番最後の夜。
柳川先生に宣告された余命よりも、少しだけ長く生きた。
「……今夜までなんて言わないでくれ。頼むから……俺のそばいてくれ」
「あのね、侑斗君。わたしは永遠って言葉を信じない。だって、それはわたしには与えられないモノだから。永遠の愛なんていらない。来世でまた会いましょうなんて言わない。今、この瞬間わたしを髙林明奈を好きだと言ってほしい。死人に愛を語るなんて、死人を愛し続けるなんて、わたしは許さない。そんな愛はいらない」
侑斗君の顔を見れない。
本当は永遠を与えてほしい。わたしが死んでも愛し続けてほしい。だけど、それはだめ。彼の一途な想いをわたしは受け止められないから。
「………………」
「だから、今、侑斗君の想いをわたしにください」
侑斗君に言葉はなかった。ただ、そっとわたしにキスをした。
「愛してる」
あなたのその言葉だけで、わたしは幸せになれるの。
「わたしも愛してるわ」
暖房の効いた暖かい部屋よりもあなたの腕の中が心地いい。
髙林明奈
享年17
義理の弟の腕の中、静かに眠りについた。
LOVEDは以上で完結です。
初めて書いた恋愛モノでしたが、この作品を通して学んだことは少なくありません。
至らないところが多かったことと思いますが、ここまで読んでいただけて嬉しい限りです。
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございました。




