変化
文章中にある病は架空のものです。実際に存在するものとは一切関係ありません。
今日は通院の日。
毎朝測り続けた体温が、わたしの時間が残り少ないことを語っている。
先生に何を言われるか、少し不安だ。
「じゃあ、行ってきます」
「気を付けてね」
「はい」
遥香さんに見送られて家を出た。
侑斗君に会いたかったけど、会いたくなくて、結局朝は顔を合わせなかった。
「柳川先生こんにちは」
「こんにちは。体調はどうだい明奈ちゃん」
「体調は良いんですが、」
言葉が続かない。そんなわたしの様子から柳川先生はわたしが何を言おうとしているか理解したようだ。
「最低で何度まで下がったのかな?」
「34.4度です。ここ一週間位は34.5度を超えなくて……わたしどうしたらいいのか」
「前に夏休み明けに学校行くのは無理かもって言ったけど、夏休みが明ける前に入院してもらうことになるかもしれないね」
「……やっぱり、そうなりますよね」
分かっていたことだ。
こんなにも早く病気が進行する以上、いつ何が起こるかわからないのだから。
「突然だが明奈ちゃん」
「?」
真剣な顔から一転、笑顔になった柳川先生。
「最近いいことあったのかい?少し変わったね。もちろんいい方向にだよ」
「変わった……?そんな風に見えますか?」
変わりたいという願いは叶いはじめているのだろうか。
「ああ。前は病気のことを含めて君は自分自身を客観的に見ているように感じていたんだ。だけどね、今の君は真正面に病気に向き合っている。自分でも不思議に思わなかったのかい?主観的に自分を見つめる自分がいることに」
そう言われて思い浮かんだのは天宮蒼樹の顔だった。
病気の症状について聞かれたとき、わたしは確かに不思議に思ったんだ。
自分の命の話をしているのに、どうしてこんなに冷静なんだろうって。
「……先生」
「何かな?」
「初めて会った日にわたしが柳川先生と話したこと、覚えていらっしゃいますか?」
「もちろんさ。明奈ちゃん初めて会った日のことだ。覚えているよ」
柳川先生の笑顔にわたしは苦笑した。
ただの意地で、柳川先生の前でなかなか口を開こうとしなかった幼い頃の自分を思い出したからだ。




