人生ゲーム
「暇よ侑斗君。助けて、暇すぎて死にそう」
死にそう。明奈は自分の言葉に内心苦笑する。
暇で、という理由ではないが事実自分は着実に死に近づいている。しかし、それを悲観的に捉えず楽しもうとしている自分は滑稽で馬鹿馬鹿しい。
「ゲームでもするか?俺も暇だし、それくらいなら付き合ってもいい」
「人生ゲームなら、やる」
「2人でボードゲームはきつくないか?」
「平気。いつも父さんと2人でやってたわ」
他に一緒にゲームをする人なんていなかった。明奈にとって父親である柚樹だけが遊び相手だった。病気のこともあって、学校以外では誰かと仲良くすることを避けていたためだ。
「……どこにしまってあるんだ?」
「え?」
「人生ゲームは俺と母さんが持ってきた荷物の中にはなかったから、明奈が持ってないと人生ゲームできないぞ」
「あ、ええ。そうね。わたしの部屋にあるわ」
リビングでボードを挟み向きあうようにして寝転がりゲームを始めた。
ルーレットを回す音が響く。
「1、2、3、4、5。プログラマーになる。給料は15,000円ね」
明奈が職業カードを手元に引き寄せ、給料分の紙幣を取り駒を進めた。
再びルーレットを回す音が響いた。
「1。宇宙人と遭遇し友達になる。1,000円貰う。宇宙人ってなんだ……意味が分からん」
「ゲームにそういうツッコミしたらダメよ。意味が分からないほうが面白みがあるわ」
「そういうもんか?」
「そういうもんよ。たぶん」
明奈がルーレットを回す。
駒を進め、侑斗の番。
侑斗がルーレットを回す。
駒を進め、明奈の番。
……………………。
………………。
…………。
……。
「1、2、3。お、丁度ゴールだ」
「……わたしが負けるなんて」
「こういうゲームは好きなのか?」
「好きってわけじゃないけど、嫌いじゃないわ。何て言ったらいいか……そうね、ボードゲームをしていればそれ以外のこと考えなくていいから、好きかもしれない」
人生ゲームで使われた駒を片付けていく明奈。
侑斗は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「それは、他に何も考えなくていい状況になるなら何でもいいって。俺と過ごす時間でなくてもいいって。つまりそういうことか?」
いつもより少し声が低く、明奈を見つめる眼差しはとても真っ直ぐで真剣だ。
明奈は驚いたように目を見開いた後、片付けをする手を止めることなく話しだした。
「違う……いいえ、違わないわね。侑斗君の言うとおり。わたしは、わたしが死にかけているって考えなくていいならそれでいいのかもしれない。でも……でも1つだけは誤解しないで欲しい。何も考えなくていい状況は確かに欲しかったわ。けど、侑斗君とこの時間を過ごしているのは、わたしが一緒にいたいと思ったからよ」
もう一度「誤解しないで」と言うと明奈はゆっくりと立ち上がり、その場から離れた。ソファーに座り、テレビの電源を入れる。
明奈は病気のことを侑斗が知っていることに何の疑問も持たないままだった。侑斗もまた、口を滑らしたことには気が付いていない。自分が知らない『はず』のことで、感情を乱されていることを知らないのだ。
「意味、分かんねえし……」
理解はできるが納得はできない。侑斗は小さく舌打ちをした。
「 」
明奈には届かない声で呟かれたその言葉の真意は。
人生ゲームの駒は綺麗に片付けられていた。
上手くまとめられませんでした。でも続きを書いていきたいので投稿しちゃいます。
人生ゲームとか久しくやっていない気が……




