表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

a happiness day

作者: 高平しま

 目覚まし時計に呼ばれ、夢の世界から舞い戻る。

 いつも私を悪夢から救い出してくれる勇者。

 鉄の部品で組み上げられた彼に感謝のキス。

 今日の目覚めは最高にすっきり。

 アルミ製のフレームに四角く切り出された青空に浮かぶ太陽が注ぎ込んでくる、紫外線たっぷりの陽射しも私を祝福してくれている。

 胸が踊る。

 身体も踊り出しそう。


 ベッドから飛び出して、跳ねるようにスキップ。

 きっと私の背中には翼がある。

 肩甲骨が成長して、皮膚を突き破って、鮮血の化粧をした白い骨に、ふかふかの羽毛をトッピング。

 イカロスの翼のように熔けたりしない、本物の翼。

 なんて素敵。


 辿り着いたバスルームで身を清める。

 身体中にこびりついていた穢れが流され、排水溝へとダイブしていく。

 きっとあのまま浄化されず、誰かの口に入り、その身の一部になるのね。

 愉快すぎておかしくなりそう。


 ドライヤーで乾かした髪を櫛を使って丁寧にセット。

 ショーツとブラジャーはお気に入りの、白地に毒々しい色の花が細かく、たくさん刺繍されたものをチョイス。

 大好きな斑模様のワンピースを身にまとい、濃紺色に二十個の爪を染める。

 時間をかけて施した化粧の最後は、目に痛みが走るほどに紅い口紅。

 鏡に映る私は、まるでお伽話に出てくるお姫様。

 誰しもが私に目を奪われ、感嘆のため息をつき、嫉妬に駆られる。

 華麗なステップを刻みながら、靴箱からとっておきの黒いハイヒールを取り出して、素足を滑り込ませたら、準備は完璧。


 軽やかに歩を進め、ベランダに到着。

 二十階からの眺めはとても素晴らしい。

 遠くに見える、排気ガスに塗れたコンクリートの山々が、桃源郷のように思えるんだもの。

 美しい私。

 髪を整え、化粧を施し、服をまとい、靴を履き、胃を空にした、綺麗な私。

 ベランダの手摺りに登ったなら、翼を羽ばたかせ、さぁ、行きましょう。

 もっと私に相応しい世界へ。

 さぁ、飛び立ちましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ