a happiness day
目覚まし時計に呼ばれ、夢の世界から舞い戻る。
いつも私を悪夢から救い出してくれる勇者。
鉄の部品で組み上げられた彼に感謝のキス。
今日の目覚めは最高にすっきり。
アルミ製のフレームに四角く切り出された青空に浮かぶ太陽が注ぎ込んでくる、紫外線たっぷりの陽射しも私を祝福してくれている。
胸が踊る。
身体も踊り出しそう。
ベッドから飛び出して、跳ねるようにスキップ。
きっと私の背中には翼がある。
肩甲骨が成長して、皮膚を突き破って、鮮血の化粧をした白い骨に、ふかふかの羽毛をトッピング。
イカロスの翼のように熔けたりしない、本物の翼。
なんて素敵。
辿り着いたバスルームで身を清める。
身体中にこびりついていた穢れが流され、排水溝へとダイブしていく。
きっとあのまま浄化されず、誰かの口に入り、その身の一部になるのね。
愉快すぎておかしくなりそう。
ドライヤーで乾かした髪を櫛を使って丁寧にセット。
ショーツとブラジャーはお気に入りの、白地に毒々しい色の花が細かく、たくさん刺繍されたものをチョイス。
大好きな斑模様のワンピースを身にまとい、濃紺色に二十個の爪を染める。
時間をかけて施した化粧の最後は、目に痛みが走るほどに紅い口紅。
鏡に映る私は、まるでお伽話に出てくるお姫様。
誰しもが私に目を奪われ、感嘆のため息をつき、嫉妬に駆られる。
華麗なステップを刻みながら、靴箱からとっておきの黒いハイヒールを取り出して、素足を滑り込ませたら、準備は完璧。
軽やかに歩を進め、ベランダに到着。
二十階からの眺めはとても素晴らしい。
遠くに見える、排気ガスに塗れたコンクリートの山々が、桃源郷のように思えるんだもの。
美しい私。
髪を整え、化粧を施し、服をまとい、靴を履き、胃を空にした、綺麗な私。
ベランダの手摺りに登ったなら、翼を羽ばたかせ、さぁ、行きましょう。
もっと私に相応しい世界へ。
さぁ、飛び立ちましょう。