AI使用。今のあなたたちには分からないでしょうけど、ホントは妬ましかったのよ。
普通は王妃になればこうなるだろうといった道筋。
AI使用の作品です。アレルギーがある方は、健康に悪いのでまわれ右でお願いします。
2026.11/5加筆修正しました。あと、恋愛ジャンルから、ヒューマンドラマに変更しました。恋愛ではないな、と、思いましたので。
王立学園の大広間には、息を呑むような静けさが広がっていた。 壇上には王太子が立ち、その隣には淡い桃色の髪を持つアイラ男爵令嬢が寄り添っていた。
そして、その二人と向かい合うようにして、一人の公爵令嬢が堂々と静かに立っていた。
彼女の名前は、アデライード・フォン・クラウゼン。王太子の婚約者として、幼い頃から将来を約束されていた令嬢だった。
けれど、その輝かしい未来は今日という日に終わろうとしていた。
王太子の側近たちが集めたアイラに対する数々の危害。それを直接間接的に支持したのがアデライードだという発言。そして言い逃れできない証拠が多数示された。そして、何人かのクラスメートはさもありなん。と思っていた。
「アデライード、このようなことを君がしたのか? 信じられない。君は優れた人格を持つ素晴らしい人であることは確実だ。なのになぜ、彼女に稚拙な意地悪をし、あまつさえ殺害しようとしたのだ? 君はそんな事をする人ではない。するなら堂々と戦うのが君だろう!」
王太子の言葉ににこやかな表情を浮かべたまま、普段のように柔和で優しい口調で答えた。
「私も人ですから。醜いどら猫が私の目の前をうろついているならばさっさと処分したいのですわ」
ギスついた表情を浮かべる王太子。
「そんな、まさか、君がそんなことを言うはずがない」
「バカですか? 王太子。見る目がないのですね。たまたま国母になれる機会がありましたから、努力しましたわ。それでもそんなドブ猫がいると思うと、虫唾が走りますわ。実際他の方は役に立たなくて、しなければなりませんでしたわ。まあ、触るのも嫌だったので力がはいらなかったのも事実ですけど」
その言葉に裏切られた顔を見せる王太子。やがて、彼は決心した。
「わかった。僕は君との婚約を破棄することに決めた。そしてアイラを新たな婚約者とする」
王太子の声には、決意と緊張が混じっていた。その腕には、男爵令嬢の細い指がそっと絡んでいる。
「僕は彼女を愛しているんだ」
その言葉が響いた瞬間、周囲から小さなどよめきが起こった。さもありなん、と、言った表情が、周囲に広がる。
男爵令嬢は不安そうな顔を浮かべながら、王太子の腕へさらに身体を寄せていた。
「殿下、お待ちくださいませ」
一人の貴族令息が、たまらず声を上げた。
「アデライード侯爵令嬢の後ろ盾がなければ、王国は、いえ、あなたの王位が……」
側近の発言に、それでも王太子は首を振る。
「済まないが、これは彼女の国母の資質の問題だ。確かに彼女の後ろ盾は必要だ。しかし、個人の感情で言動をあらわにしては問題が起こる。残念ながら場合によっては王太子を辞してもこの女を王宮に入れるわけには行かない」
「し、しかし」
その言葉によって、広間の空気が一気に冷え込んだ。
王太子は、基本的には有能かつ真面目で婚約者にも節度ある対応をしていた。確かに男爵令嬢とは親しげではではあったが、節度を守り友人としての範疇を超えはしなかった。少なくとも国を導く資質はあるように思える。
しかし、アデライードは、ゆっくりと目を伏せた。
「あら清濁併せ呑むこともできぬ情けない御方。この分では王になったとしても、碌な事はできませんわね」
ふ、不敬だぞ! と、言う誰かの声。
しかしその答えに、王太子が最も驚いた顔を見せたのだった。
「アデライード、君は……そんな人間だったのか? 私は君を見誤ったのか」
「ええ、認めますわ。私は」
彼女は静かな声で答えた。
「私は私の意のままにならないものは嫌いです。彼女を嫌い、何度も嫌がらせをいたしました。もう嫌で嫌で、殺したかった。まあ、無理でしたけど」
アイラ男爵令嬢の顔から血の気が引いていった。
その顔ににこやかに笑うアデライード。
「なんで死ななかったの? このどら猫」
広間には、今度こそ完全な沈黙が落ちた。
アデライードは言い訳も、涙も、謝罪もしなかった。が、アイラを、言葉ほど恨んでいる様子もない。いつものような柔和で穏やかな表情。
「いくら下位貴族令嬢とはいえ、殺意をここまで大っぴらにしては弁解の余地も無かろう。おって罪状を渡す」
と、ここで王太子は息をつき、小さく囁いた。、
「まさか、こんな女だったなんて。僕の目は節穴だつたのか。国母になってくれると思っていたのに」
アデライードは王太子かの独り言は聞こえなかったふりをして、静かに頭を下げた。
「承知いたしました」
ともかく、なんとか婚約破棄はなされたのだ。予想通り。
アデライードはほっとした様子で、それでも表側に出さないように静かにその場を去るのだった。
前世の記憶をたぐりながら。そう、彼女には前世の記憶があるのだ。正確に言えばこのあとの記憶が。
以前も王太子は、あの男爵令嬢を心から愛していた。
しかし王太子は、王族としての責務を捨てられなかった。また、自分がこの恋を、貫けばどうなるか、多くの人から聞いて分かっていた。パーティーなどなで婚約破棄をするなど、流石にそんな愚かな事はしなかった。国の安定のため、全てはそのために。
男爵令嬢との恋を泣く泣く諦め、アデライードと結婚した。
そして王太子は王となり、アデライードは王妃となった。
国民から見れば、二人は理想的な王と王妃だった。
けれど、その夫婦生活は最初から歪んでいた。
初めて夫婦として夜を迎えた日、義務的な王太子の行為にアデライードは強い痛みを覚えた。そのまま続ける事に耐えられなかった。王もまた、それ以上を求めようとはしなかった。いや、できなかった。それ以降、二人の間には子供ができなかった。
しかし、アデライードには政治の才能があった。彼女は王と共に政務を担い、次々と問題を解決していった。
「陛下、北部の税制について再検討が必要でございます」
「アデライード、君に任せても構わないか。私は南部の公爵との交渉に向かう」
「もちろんでございます」
「悪いが頼む」
「悪いだなんて。国王陛下が政務を滞らせるわけには参りませんから」
最初のうちは、王も彼女を気遣っていた。しかし、仕事ができる人間には仕事が集まる。それは王妃という立場になったアデライードにも例外ではなかった。
外交文書が届けば、彼女が目を通した。
貴族同士の争いが起これば、彼女が仲裁した。
財政に問題が起これば、彼女が帳簿を確認した。
地方で飢饉が起これば、彼女が救援物資の手配をした。
軍部と文官が衝突すれば、彼女が双方の間に入った。
多種多様な案件がアズライードのところへやってきた。
いや、王も多くの案件を、抱えていた。しかし問題解決能力は彼女のほうが高く、少しずつ彼女の仕事が多くなっていった。眠る時間さえ、少しずつ削られていった。
いや、正確には自ら働き続けた。
「王妃様、もうお休みくださいませ」
「まだ書類が残っていますわ」
「しかし、三日ほどまともにお休みになっておりません」
「では、この書類を処理すれば、休みます」
「王妃様、そのような調子では、お身体が持ちません」
「国が持つなら、それで十分です。それに、まだまだ大丈夫。まだ余裕はあるのよ」
そんな日々が、何年も続いた。そして、子供が生まれないことを理由として、王は側妃を迎えることになった。その側妃となった女性こそ、かつてのアイラ男爵令嬢だった。王になっていたが、彼の計らいで側妃になったのだ。いつか迎えに行くと密かに約束していたとおりに。
アイラは王の愛を再び受けることになった。そして驚くほど早く、三人の息子と二人の娘を産んだ。王は子供たちを溺愛した。側妃もまた、王や子供たちと仲睦まじく暮らした。
宮廷には明るい笑い声が増えていった。
その一方で、王妃の執務室には相変わらず大量の書類が積み上がっていた。いや、少しづつ量が増えていった。王と側妃の時間が増えるとともに少しづつ案件も増えていったのだ。
「王妃様、今年の予算案が届いております」
「そこへ置いてください」
「王妃様、外交官から報告書が届いております」
「確認いたします」
「王妃様、北部の貴族から陳情書が届いております」
「そちらも確認いたします」
気づけば、アデライードの姿は変わっていた。
かつては美しい令嬢だった彼女の頬は痩せ、目の下には深い影が落ちていた。
髪には白いものが混じり、華やかな夜会に出れば、周囲から痛ましそうな視線を向けられた。
一方で側妃は、夜会で華やかな笑顔を振りまいていた。年齢や経産婦にも関わらず、少女のような若々しさ、そして美しさ。
王も側妃と並んで歩くことが増えていった。子供たちは父親と母親を慕い、幸せそうに笑っていた。
アデライードは、その光景を遠くから眺めていた。
パーティーでは出席者たちが囀りまわる。
「陛下と側妃様は、本当に仲睦まじくございますね」
「ええ、王妃様とは長年のご夫婦でございますから」
「ですが、王妃様には……」
そこで貴族たちは口を閉ざした。
腫れ物を扱うような空気が、いつしか宮廷全体に広がっていた。
アデライードは、それを知っていた。
それでも案件は彼女を襲う。案件に立ち向かい続けるアデライード。
国のため? 王家のため? 民のため?
否。もはや自分の意地だった
アデライードは、老いてもなお、最後まで政務机の前に座っていた。
「もう十分でしょう」
誰かが、そう言った。
「あれだけ働いたのだから、もういいでしょう」
その言葉を聞いたアデライードは、静かに笑った。
「バカじゃない? あの人たち、何の役にも立たないのよ。私が何とかしなければ!」
「あなたがしなければならなかったのですか?」
その言葉には、アデライードは答えなかった。
その顔には、喜びも怒りもなかった。
時は変わって現在。王太子に修道院へ送られるアデライード。両親は、彼女を見放した。高々男爵令嬢にこだわって。と。たかが男爵令嬢。だが、生き馬の目を抜く貴族の世界。表向き認めないならともかく、堂々と貴族に危害を加えようとした、と宣言したのだ。取り巻きも含めて没落するのは必至。
公爵家はアデライードを切り捨てた。即、修道院へと送り出したのだった。
修道院へ向かう馬車の中で、アデライードは窓の外を眺めていた。断罪された公爵令嬢として、彼女は王都から追放される。けれど、不思議なほど心は穏やかだった。
「もう、無駄に働かなくて済む」
小さく呟いた声には、今までにない安堵が滲んでいた。もう、あんなに働かなくてよい。
多分、この先、王太子と男爵令嬢は結婚する。そして二人は夫婦として国を治める。王太子は、未来の王として男爵令嬢を愛し続けるだろう。
しかし、その治世が前世と同じように進むとは限らない。前世では、アデライードが国政を支えていた。税制改革も、外交政策も、貴族間の調整も、彼女が中心となっていた。それ故かどうかは別として、国は安定していた。少なくとも自分の力だったと思いたかったアデライード。
けれど今回は、その役割を担う人間がいない。王太子は優しい人間だった。男爵令嬢も人々を愛する女性だった。
しかし、政治は愛情だけでは動かない。アデライードには、それが痛いほど分かっていた。
「ま、もう関係ないしね。ゆっくり過ごすわ」
それが彼女の本心だった。
「でも、まあ、うまくいったものね」
よく、こんなふうにうまくいった、と内心喜んでいた。
ヘタをすれば、王太子がアデライードのためにすべて握り捨てる可能性もあったのだ。長いこと婚約者だったのだ。作ってきた信頼や示してきた能力はそう簡単には打ち消すことは出来ない。前世でも、能力的や信頼感は高かった。
だからこそ、王太子から完全に見放される必要があった。
王太子が彼女を王妃に戻そうと考えないほど、徹底的に嫌われる必要があった。そうしなければ、また王妃になってしまう。
また政務机の前に座ることになる。そして眠れない日々が始まってしまう。国のために、自分自身を擦り減らすことになる。
「私は、もう十分に働いたわ」
アデライードは、修道院の小さな部屋で呟いた。
「無理はしないで、ゆっくり生きるわ」
それはアデライードの本心だった。
修道院での生活は、驚くほど穏やかだった。
朝になれば鐘が鳴った。
鐘が鳴れば起床した。
朝食を食べ、祈りを捧げ、与えられた仕事をする。
昼食を食べ、午後の仕事をする。
夕方になれば夕食を食べ、夜になれば眠る。
それだけの生活だった。
「アデライード様、貴族の生活とかなりかわりますが、お疲れではありませんか」
嬉々として答えるアデライード。
「いえいえ、素晴らしい生活です。適度な労働に適度な勉強。夜もぐっすり眠れます」
「そうなのですか」
「はい、とても穏やかです」
アデライードは、少しだけ笑った。
「この生活が、私は好きなのです。何も考えなくていいし、ゆったり出来ます」
畑仕事もした。
薬草の世話もした。
古い書物の整理もした。
時には子供たちの面倒を見ることもあった。
それだけで、彼女には十分だった。いや、十分すぎる仕事だった。
「はあ、なんて楽なの」
アデライードは心底幸せそうに微笑んだ。山のような案件もない。煩わしい人間関係もない。幸せそうな連中も近くにいない。
年月が流れた。
王太子は男爵令嬢と結婚した。
二人は懸命に国を治めた。
しかし、国政は簡単ではなかった。
貴族たちの対立は激しくなった。
外交問題も増えた。
財政も次第に苦しくなった。
王と王妃は、それでも努力した。
いろいろな問題はあるものの、王国そのものは存続していた。
アデライードがかつて王妃だった頃からすると、その国威も国力もかなり見劣りするものだった。しかし、それでも修道院に来る商人かや近くの農民などからすると、大きな不満もなければかといって褒められるわけでもない、いたって普通の評価だった。
「私、なんであそこまで働いたのだろ」
つい、疑問をもったが、次の瞬間には今の仕事の事に集中し、いつしかそんなことを考えていた事も忘れて、次の仕事をするのだった。
その後、アデライードは、修道院で静かに最期を迎えた。
最後の日にも、朝の鐘はいつも通り鳴った。
彼女はゆっくりと目を覚ました。
窓から差し込む朝日が、白い寝台を照らしていた。
「今日も、いい朝ですね」
修道女が、彼女の手をそっと握った。
「アデライード様、何か欲しいものはございますか」
「そうね。特に何も要らないわ」
「本当に、何もございませんか」
「はい、大丈夫」
アデライードは穏やかに笑った。
「私は、もう十分に生きました」
彼女は窓の外を眺めた。
そこには小さな庭があった。
春には花が咲き、夏には緑が茂り、秋には葉が落ち、冬には雪が降った。
それだけの庭だった。
けれど、彼女には美しかった。
修道院の鐘が、静かに鳴った。
その音を聞きながら、公爵令嬢だった女は穏やかに目を閉じた。
社畜の人が結局社畜スキルを使って、国や貴族家を立て直す。のは実は嫌じゃないのかなって。
ちなみにこの人は社畜の前世ではありません。たた、王妃の仕事はそれに近かったと思われます。人間関係の調整もあったろうから。
もしかして、社畜の人はもっと酷い生活がしたかったのかな? 報われなくとも会社や国の為に働きたいと。
確かに国や企業のために働きたいとは思うけど、死ぬまではしたくないな、と思う。




