6 再会
「キースお兄様……!」
「フィオナ、何故お前がここにいる」
兄キースは優しい両親と違って、昔から冷たい人だった。
フィオナはそんな兄が好きではなかったが、回帰した今ならそれがすべて愛であったとわかる。
「お兄様ッ!!!」
フィオナは自分を睨むキースに抱き着いた。
「なッ……何をするんだ、離れろ!」
「お兄様、会いたかったです」
キースは何とかして引きはがそうとするが、彼女は彼にしがみついた。
二十四年ぶりの再会だ、これくらいはいいだろう。
「お兄様、私反省してるんです」
「何だと……?」
キースの手の力が緩まった。
フィオナは抱き着いたまま顔を上げて兄を見つめた。
「あのとき、お父様やお母様の反対を聞かずに家を出て行ったこと……深く反省しています」
「フィオナ……」
「私はとても愚かだったと思います」
フィオナは両親の反対を押し切ってアロイスの元へと向かった。
そのことで家族が悲しんでいることは知っていた。
知っていながらも、彼女は知らないフリをした。
キースがフィオナと会わなかったのは、勝手な行動で両親を悲しませた妹を許せなかったからだろう。
「私、もう二度とお父様たちを悲しませるようなことはしません。約束します」
「……」
キースはしばらく黙り込んだあと、フィオナの背中に手を置いた。
「無事でよかったよ……フィオナ……」
「お兄様!」
いつも冷たい兄だったが、本当は誰よりも家族思いで優しい人だということをフィオナは知っている。
ただ、伝えるのが下手なだけだ。
兄の腕に抱きしめられていると、背後から声がした。
「フィオナ!?フィオナなのか!?」
「フィオナが公爵邸にいるなんて……私は夢を見ているのかしら……?」
懐かしい声に驚いて振り返ると――
「お父様!お母様!」
涙ぐんだ両親が立っていた。
フィオナはすぐに駆け寄り、胸に飛び込んだ。
両親に抱きしめられた彼女は、子供のように泣いた。
「お父様、お母様……ごめんなさい……もう勝手なことはしません……」
「いいのよ、こうやって帰ってきてくれたんだから」
「そうだ、目が覚めたようでよかった」
その光景を見て、呆れたようなキースの声が耳に入った。
「……父上と母上はフィオナを甘やかしすぎですよ」
「あら、その代わりあなたがいつも厳しくしてくれているじゃない」
「なッ……俺は……」
キースが顔を真っ赤にした。
「お兄様が本当は優しいこと、私知ってますから!これまでのは全部愛のムチですよね?」
「馬鹿なことを言うな、俺がそんなことするわけないだろう」
彼はそう言いながらそっぽを向いた。
「キースは昔から素直になれないからな」
「本当は妹思いなくせに」
「お兄様ったら、照れ屋なんだから」
好き勝手言う三人に、彼の表情が凍り付いた。
あ、まずいと思った頃にはすでに手遅れで、フィオナは一人そっとその場を後にした。




