13 彼女の行方 アロイスside
「……おかしい、何故まだ帰ってこないんだ」
フィオナがお茶会を終えた頃、アロイスは公爵邸で彼女の帰りを待ち続けていた。
彼女が公爵邸へ戻るつもりなど無いことを、彼は未だに知らない。
「セレナイト令嬢がここまで家を空けるのは珍しいですね。いっそ、もう帰ってこないのでは……ッ!」
永遠に帰らないのではないかと言いかけた侍従を、アロイスが物凄い目で睨んだ。
「じょ、冗談ですよ!冗談!令嬢はきっとお帰りになられますよ、閣下!」
「当然だろう」
アロイスは仕事中だったが、手を止めてフィオナのことを考えた。
「……もしかして、何かあったんだろうか」
家を出て行った先で誘拐でもされていたとしたら……?
彼は心臓が急速に冷たくなっていくのを感じた。
(まさか……そんなことあるはずがない……)
何故自分はこれほど焦りに満ちているのか。
わからなかった、彼は心を乱されるほどフィオナのことを気にかけてなどいなかったからだ。
(なら何故こんなにも不安なんだ……)
フィオナがいなくなってからというもの、彼は落ち着かなかった。
そういえば昨日の夜はフィオナの夢を見た。
夢の中での彼女は今よりもだいぶ幼く、アロイスは何だか懐かしい気持ちになった。
たった一日フィオナに会っていないというのに、こうも恋しくなるのか。
「……お前、探しに行ってこいよ」
「……え、私がですか!?」
「お前以外に誰がいるんだ」
侍従が驚いた顔でアロイスを見た。
人探しなど、侍従のやることではない。
「私の業務は閣下をサポートすることで……」
「お前がいなくても何の問題もない」
その言葉に、彼は大きなショックを受けた。
アロイスは元々、公爵としては非常に優秀な人物だった。
そのことを知っているからこそ、余計に悔しい。
「わかりましたよ、探してきますよ。探してこればいいんでしょう!」
侍従は拗ねたようにそう言うと、部屋を出て行った。
しかし、少しして慌てたように戻ってきた。
「た、大変です閣下!!!」
「何だ、フィオナが見つかったのか?」
慌てようからして、フィオナが見つかったのかと思ったが、そうではないようだ。
「閣下……セレナイト嬢がベルーシア侯爵家のお茶会に参加していたとの情報が入りました!」
「……ベルーシア家の茶会?」
アロイスは驚いた。
フィオナは茶会など、これまでほとんど参加したことがなかったからだ。
「ということは、フィオナはベルーシア家にいるのか?」
「いえ、そういうわけではないようです」
ベルーシア侯爵家は由緒正しい家門で、当主は厳格な人だった。
よそ者を匿って家に入れるとは思えない。
「どうやらセレナイト令嬢は実家に戻っているようです」
「実家……?」
そんなことあるはずがない。
だってフィオナは実家とは縁を切っているも同然で――
「先ほど、セレナイト嬢の部屋を掃除していた侍女からこんなものを預かったのです」
「……」
侍従はアロイスに一枚の紙を手渡した。
それはどうやらフィオナからの手紙のようだった。
『拝啓 親愛なるアロイス閣下
諸事情により、公爵邸を出ることにいたしました。
突然のことで申し訳ございません。
どうかお元気で。
フィオナ・セレナイト』
彼の目が見開かれ、そのまま時が止まったかのように動かなくなった。




