もふもふは一人じゃ戦わない
街に静けさが戻った翌朝、私はモコと一緒に広場を歩いていた。
昨日の戦いから一夜明けても、胸の鼓動はまだ落ち着かない。
「……モコ、昨日はありがとう」
もふもふは、いつも通り尻尾を振り、顔を舐めてくる。
その温もりに、少しずつ不安が溶けていく。
その時、遠くの森の影から不穏な気配が迫ってきた。
昨日の男――いや、昨日よりも強そうな魔力をまとった人物が現れた。
「……また来たの?」
私は思わず後ずさる。
でも、モコは前に出て、低く唸る。
「ワフッ!」
相手は魔法の光を放とうとした瞬間、モコがその前に飛び出す。
力強く振るった前足で、魔法を弾き飛ばした。
「……すごい……」
息をのむ私をよそに、モコは戦う意思を一切見せず、ただ私を守るために立っている。
その姿に、私はようやく気づいた。
「モコ、もふもふは、一人で戦ってるんじゃないんだね」
私がいるから、私は無力でも、モコは力を発揮できる。
そして、私が覚悟を決めることで、モコの力はさらに安定する。
魔法の光が再び飛んでくる前に、私は大きく声を出した。
「――私も、ここにいる!モコと一緒に!」
その瞬間、モコの瞳が輝き、全身の毛が光を帯びた。
まるで私の声と決意を力に変えたかのようだ。
もふもふが前に出る。魔法を弾き、相手を軽く吹き飛ばす。
男は完全に力負けし、逃げ去った。
広場に静寂が戻る。
街の人々が息を呑み、そして歓声を上げる。
「契約主様……無事で!」
神官たちが駆けつける中、私はモコの頭を撫でた。
「……ありがとう、モコ。やっぱり、私たち一緒だよね」
もふもふは嬉しそうに鼻を鳴らし、私の膝に頭を乗せる。
その存在が、私にとって何よりも力強く、心の支えだった。
戦いの恐怖は消えないけれど、もう一人ではない――
モコと一緒なら、どんな試練も乗り越えられる。
夕陽に染まる街を眺めながら、私は心から思った。
「……異世界でも、私はここにいる。モコと一緒に」
もふもふは小さく尻尾を振り、静かに私の隣に寄り添った。
最強の相棒と、無力な私。
でも、この絆さえあれば、もう何も怖くない――。




