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気がついたらもふもふな愛犬と異世界転移してました  作者: 加藤 すみれ


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8/10

最後の脅威

ある日の夕暮れ、街に異様な気配が漂った。

 昼間の穏やかさとは違い、空気が張り詰めている。


「……モコ、何かいる?」


 もふもふは低く唸り、毛を逆立てる。

 私は自然と後ろに一歩下がった。


 黒い影が建物の間を滑るように現れる。

 見覚えのある姿――昼間ちらりと見た、マントの男だ。


「……あれは、昨日の……!」


 男は鋭い目を光らせ、モコに狙いを定める。

 その瞬間、街の人々が騒ぎ始め、子どもたちは泣き叫ぶ。


「……やめて!」


 思わず叫ぶと、モコは私の前に飛び出した。

 巨大な体で風を切り、男の前に立ちはだかる。


「ワフッ!」


 男は魔法らしき光を放とうとするが、モコの一撃で吹き飛ばされる。

 その力に、私は言葉を失った。


「……モコ、すごすぎ……!」


 男は地面に倒れ、立ち上がろうとしない。

 街の人々は安心した様子で息をつく。


 でも、私は違った。

 ふと、目の前のモコを見て気づく。


「……モコ、私がいなかったら、あんた一人で戦ってたんだよね」


 モコは鼻を鳴らし、尻尾を振る。

 戦うことは当たり前、守ることも当たり前――そんな顔だ。


 私は強く胸を打たれた。


「……そうだ、私もやらなきゃ」


 力ではなく、勇気でもなく、知識でもなく――

 私ができることは、モコと一緒にいること、そして守ろうと決めること。


 男が完全に動かなくなると、神官が駆けつけた。


「契約主様、無事でよかったです」


 神官の視線が私に向く。


「……はい、モコがいてくれたおかげです」


 モコは私の膝に頭を乗せ、静かに体を震わせている。

 その温かさに、私は思わず笑ってしまった。


「……守られてるだけじゃない、守る側でもあるんだね」


 モコと一緒なら、怖いものはない。

 私はこの街で、異世界で、精一杯生きていける――そう確信した。


 夕暮れの空は、戦いの余韻を包むように、やさしく赤く染まっていた。

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