契約の本当の意味
翌日、私は再び神殿を訪れた。
気持ちは少し落ち着いたとはいえ、モコを守るという覚悟は、まだ自分の中で揺れていた。
「契約主様、少しお話ししてもよろしいですか?」
神官は優しい笑みを浮かべながら、私を奥の部屋へと案内した。
部屋の中央には、小さな祭壇と魔法陣が描かれている。
「今日は、契約の本当の意味をお話しします」
私は背筋を伸ばして聞く。
「聖獣と契約する――多くの者は、力を得ることだと思っています。ですが、真実は違います」
神官は静かに手をかざすと、魔法陣に光が灯った。
その中に映し出されるのは、モコと私が笑いながら散歩する光景だった。
「契約とは、力を貸すことでも、戦わせることでもありません」
私は首をかしげる。
「では……?」
「互いを信じ、心を通わせること。それが契約です」
目の前で光が揺れ、私とモコの絆が、まるで目に見えるように輝いた。
「……絆……?」
「そうです。契約主の存在こそが、聖獣を聖獣たらしめるのです」
衝撃が走った。
私はずっと、自分は役に立たないと思っていた。
戦えない、魔法も使えない、知識も特別ではない。
けれど――
「私……モコのためにいるだけで、いいんですか?」
「ええ。その存在が、聖獣にとって何よりの力になります」
モコは私の足元で、尻尾を揺らしている。
低く唸ることもなく、ただ温かく、安心できる存在だ。
「……わかった」
私は胸の奥から力が湧くのを感じた。
戦えなくても、知識がなくても、私はモコの契約主として、ここにいる。
神官は静かにうなずいた。
「これで、あなたも契約主として胸を張ってください」
外に出ると、光が街を優しく包んでいた。
モコは私の隣で、今日も無邪気に尻尾を振っている。
「……よし、モコ。私、守るよ」
「ワン!」
もふもふの温かさと心強さに包まれて、私は初めて自分の役割を実感した。
異世界での生活は、まだ始まったばかり。
でも、モコと一緒なら、怖いものはない――。




