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気がついたらもふもふな愛犬と異世界転移してました  作者: 加藤 すみれ


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1/10

愛犬がでかい。ここはどこ。

最初に感じたのは、地面の冷たさだった。


「……ん?」


 目を開けると、見知らぬ空が広がっている。やけに青くて、雲が近い。寝転んだまま首を動かすと、周囲は深い森だった。


「え、ここどこ……?」


 昨日までの記憶ははっきりしている。

 仕事を終えて、いつものように愛犬のモコと夜の散歩に出かけて――そこから先が、ない。


「夢……じゃないよね」


 起き上がろうとした瞬間、腕が何か柔らかいものに当たった。


 ――もふっ。


「……?」


 恐る恐る視線を向ける。


「……でっか」


 そこにいたのは、白くてふわふわした巨大な毛の塊だった。私の胴体くらいある。心臓が跳ねる。


「ちょ、なにこれ……!」


「ワン!」


 元気な鳴き声と同時に、毛の塊が動いた。

 大きな黒い目、ぴんと立った耳。


「……モコ?」


 呼ぶと、その巨大な犬――間違いなく私の愛犬モコが、尻尾をぶんぶん振りながら顔を近づけてきた。


「ワフワフ!」


「待って待って、近い近い!」


 顔が埋まる。息ができない。

 けれど、知っている匂いと温もりに、混乱より先に安心が込み上げた。


「……ほんとに、モコだ」


 やっとの思いで距離を取ると、改めて周囲を見る。見たことのない木々、遠くで聞こえる不思議な鳴き声。そして――


「グルルル……」


 低い唸り声。


 振り返ると、角の生えた狼のような生き物が、茂みの奥からこちらを睨んでいた。牙が光る。


「……うそでしょ」


 足がすくむ。声も出ない。


 その瞬間、モコが私の前に立った。


 大きな背中。揺れる白い毛。

 いつも散歩のとき、車が来ると前に出てくれた、あの背中だ。


「モコ……?」


 モコは振り返らず、低く唸った。


「――ガウッ!」


 次の瞬間、視界が揺れた。

 モコが一瞬で距離を詰め、角の狼を弾き飛ばす。鈍い音とともに、魔物は木に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。


「…………え?」


 呆然と立ち尽くす私の前で、モコは何事もなかったかのように戻ってくる。


「ワン!」


 誇らしげな顔で、尻尾を振りながら。


「……強すぎない?」


 答える代わりに、モコは私の頬を舐めた。


 もふもふで、温かくて、確かに現実だった。


 異世界かどうかは分からない。

 でも一つだけ、はっきりしている。


「……一人じゃないんだ」


 私はモコの首に抱きついた。


 この世界で、何が起こっても――

 このもふもふがそばにいる限り、きっと大丈夫だ。

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