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黒き来訪者

第一章 黒き来訪者


 目を開けた時、空は赤黒く濁っていた。血と煙の匂いが風に混ざる。草一本生えぬ荒野に、ぽつりと立っている自分の影がやけに長く見える。


 「……また、ここか。」


 呟く声は乾いていた。異世界転移などという安易な言葉で片付けられるものではない。神界から目を覚ませば別の世界。600億年、長い修行とあらゆる殺し方と生き方を叩き込まれた果てに、ようやく地に足がついた。


 足元の地面を軽く蹴る。土の感触が懐かしい。だがその一歩が、大地を震わせた。周囲に潜んでいた魔物が恐怖で逃げ出す。そんな中ー


 「……やめておけ。死ぬぞ。」


 振り向く前に、影が3つ飛びかかってきた。狼のような魔獣だ。爪が頬に届く寸前、音もなくその首が落ちた。


 剣は抜いていない。魔法も詠唱もない。彼はただ、目の前の命を消しただけだった。


 「……名前は、なんだったか。」

 ふと思考に耽る

 長すぎる修行のせいで、自分の名すら曖昧になっていた。だがそんなことはどうでもいい。


 唯一、確かなのは――


 俺は、もう人間ではない。



「……あ、やべ。」


 足を滑らせて転んだ。ゴロゴロと転がり、死体だったはずの魔獣の上で止まる。血でベタベタだ。


 「……くそ、洗うの面倒だな。」


 淡々と呟き、死体を蹴り飛ばす。世界が彼を恐れても、本人はこれでも少しお茶目でドジだった。


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