プロローグです。
「な、何が起こって…………?」
私、【高橋 穂希】はこの状況に困惑していた。
こんな状況、私には縁がないと思っていたんだ。そしてそんな事を目撃したりその当事者になるなんて想像すらしたこともない。
「ふ、ふははっ!そこの女があの【色彩の瞳】の所有者とは!殺すよりも、その眼を抉り取ればかなりの価値になる!」
「させる訳、ないよね?」
「なっ!?く、くぅ……ッ!」
目の前には二人の女の人が場違いな高レベルの戦いを繰り広げていました。
拳や剣などの近接戦闘、飛び道具や魔法による中遠距離戦闘を同時に行われている光景に、どこぞの映画の撮影なのではと勘違いしてしまいます。
「―――――――――さて。まだ続けるつもり?」
私を助けてくれたのは、同級生であり、幼少の頃からの幼馴染みの【不知火 藍璃】。
蒼髪でショートヘアー。キリッとした凛々しく端正な顔立ちから、校内で"王子様"と呼ばれてる。しかも制服もスカートじゃなく、スラックスな為に余計なのです。
けど、アイリが"異能力者"だなんて……。
"異能力者"とは文字通り、魔法や特殊能力を保有している人たちのことです。
「わ、わたしの魔法をこうも容易く―――――――――し、下っぱ一号!」
「はいはいなーっ!」
「新手かっ!?」
魔女の様な格好をした少女が呼び出したのは、頭に狼の被り物をした黒タイツの男性でした……え、何ヘンタイ?
「下っぱ一号、そこの背の低いアホ毛の女を捕まえろ!【色彩の瞳】さえ大人しく差し出せば許してやらんでもないぞ!」
「いやだよ!?眼でしょ!?抉りとるって言ってたし!痛いし!怖いし!」
「ホマレ!」
「っ!」
流石に「はいそうですか。目を抉られますねー」と自ら進むわけがありません。あまりの恐怖で、しかし大人しく言う通りにする気もさらさらない。
思わず言い返したらアイリに抱き抱えられてしまう。
おぉ、これがお姫様抱っこ。
アイリは背は高いし、かっこいいし、皆から告白されるのもわかるなー。それにイケメンだし……私の幼馴染みなのは自慢だけど、同性なのは嬉しいやら残念やら。いや、嬉しいが勝ってるね、うん。
「まて!!!」
まてと言われて待てる人は居ない。特に敵からのその言葉は。
「痛くしないぞ!?ちゃんと麻酔はするし!私の魔法ならどうとでもなるから大丈夫!」
そういうことじゃねーよ。
「そういうことじゃないと思いますよ、お嬢」
「黙ってろ、下っぱA!」
「やー、こわーいっ!」
こほん。あらやだ、わたしも怖いわー。
「大丈夫だホマレ。ボクが何とかするよ」
「いやでも!」
守ってるれるのはありがたいです。けれど、アイリを巻き込んでしまう。既に手遅れだけど、これ以上は巻き込まれてほしくない。
「大丈夫。ほら、しゃんと捕まってて―――――――ほら逃げるよ!」
「へ――――――――ひやぁぁぁぁあ!?!?」
突然、身体に浮遊感を感じる。
そしめ暫くすると、空を飛ぶ飛行機がぐわっと下に落ちるような感覚。本来なら、そんな感覚は冷や汗が出るほど青ざめて震えてしまうけれど、今は無い。
なぜなら。
「ほら、逃げられた」
夜空に輝く星空、その上空にいるにも関わらずに何時も私を安心させるアイリが微笑んでいたから。