夢の微睡み
やぁ、はじめまして………かな?
君のことは知っているよ、【高橋 穂希】ちゃん?
私かい?
私は、そうさな。
まあ名乗る程の者ではないけれど、君の前世だった女だよ。
いいや、違うね。
完璧無欠な、絶世の、美少女だっ!!!
…………こほん。
さて、君は今年高校新一年生ちゃんだ。
君はこの現状――――――――この夢を、どう思うかな?
起きたら忘れてるかもしれないし、運良く忘れてないかもしれない。或いは、断片的に覚えているかも?
まあいいさ。
……………ん?
何故、私が話しかけてきたって?
ふむふむ。
そもそも、本当に、私が君の前世なのか?と疑問だろうな。
信じるか、信じないかは、君に任せるよ。
それよりも、だ。
今この瞬間、中々奇跡的な状況なんだよ。
何せ、前世の私が覚醒しているんだからね。そう、本来前世の記憶というものは無意識に封じされ、眠っているんだ。
…………なんだい?
弟がよく読んでいる、異世界転生みたいなの?ってか。
うんうん、前世の記憶とかそういうキーワードはそういうものに関連し易いか。
中々ロマンあるものだけど、転生とかは中々シビアなものだよ。
もし、この世に前世から今世へ人格をそのまま転生した!という者が居たのなら、それは余りにも酷い殺人者だ。何故かって?至って簡単なことだよ。
前世と今世は別人なんだ。
それが、前世の人格が今世と同じ、というのはあり得ない。例えクローンであっても、何かしら異なっているハズ。
まあ、簡潔に言うと、だ。
転生したら、その転生先の人格を殺してるってわけ。
身体一つに魂は一つ。
余分なものは、弾かれるか壊れるかのどちらかさ。前世の魂や記憶は、出しゃばらず、大人しく見守るべきだ。
おっと!安心してよ。
私は君に危害を与える気はサラサラない。
ただ、私の力について教えておきたくてね。
まあ、あれだよ。
魂はアレだけど、力はそういうわけじゃないってことさ。
私は最強だからね。
この星ではないけれど、過酷な世界で私は最強だったのさ。
…………嘘じゃないよ、ホントだよ。
それに、私には私に次ぐ最強の右腕と左腕もいたのさ。
けれど、所詮は病で倒れたんだけどね。
まあまあ、私のことはいいのだよ。
私の力…………全て、という訳じゃないんだけど、その瞳。私はその瞳を、【色彩の瞳】と名付けている。
【色彩の瞳】は凄くてね。ああ、けれどあくまで使いこなせばの話しさ。
これは、想像力とある程度の知識が必要なんだ。
まず、【色彩の瞳】は色による力さ。例えば、“赤”とイメージするなら何かな?あっと、攻撃とかに使えるイメージね。
――――――――そう、“火”だ。
“青”であれば“水”、“黄色”であれば“雷”、“緑”であれば“葉”、“白”は“雲”や“霧”。“茶”は、“土”や“根”かな。まあ、そういうのを色をイメージして、そこからその色に関連するあらゆる現象や力を発生させるんだ。
それが、【色彩の瞳】の力さ。
ん?まあこの眼は、本来使えない力も行使出来るなら………中々のチートだべ?
けれど、注意しなよ。
その【色彩の瞳】は所有者しか使用出来ないけれど、危険視されるもの。一度でも使う…………ううん、顕現してしまえば狙われる可能性もある。
だから、そうだね。
仲間を集めるんだ。
かつての私のように。
【王】になるのさ!
私の名前?
あはは、まだ知る時じゃないさ。
まあけど、君にかつて私が名乗っていた次期【色彩の帝】に成り得る存在なんだ。
…………うむ、そろそろ目覚める時かな。
まあ覚えていたら嬉しいかな。
君はこれから、今まで過ごしてきた日常に巧みに隠された驚くべきことや、新しい出会いをしていくだろう。
さあいってらっしゃい、来世の私。
さて、そろそろあの子覚醒すると思うよ。
だから、そんなに威嚇しないでほしいかな?
―――――――――――グルルル。
いやはや、最強だと言った手前にこんなバケモノがいるなんて驚いたよ。この星に私と張り合える奴なんざ、片手でしか数えられないぜ?
―――――――――――…………。
しかし、初めてみたよ。
キメラ、と表現するには正しくはあるが同時に正しくもない。
狐と龍。
厳密には狐の要素は強く、龍の尾と鱗に爪、そして両翼を持つ合成獣………合成と表現するには、あまりにも表現が足らないか。それ程気高く、美しい、完成された一個体。
では、こう名付けようか。
【狐龍】と。
恐らく、君のような掟破りな存在は初めて――――――いや、彼を思い出すよ。
ほらほら、牙を見せながら唸るなんてやめなやめな。愛らしい顔が台無しじゃないか。
え゛っ、黙って、って酷くない?
あ、そろそろ眠れって?はいはい、わかりましたよーだ。ま、君のような人が居ればあの子も安心だ。でもまあ、仲間は増やしてよね。何たって、来世の私なのだから―――――――――――
【人物名説明】
色彩の帝(主人公の前世さん)
本人は絶世の美少女と自称するが、上の中の容姿。本人はクールでミステリアスだと思っているが、バカ。あとアホ。