プロローグの前に
地球ではない、もう一つの世界。
そこに、数多の国や権力者達が"最強"と呼ばれる存在がいた。
【色彩の帝】という異名であり、数多の権力者や強者共を降した―――――――まさしく、最強の中の最強である。
しかし、彼女に野望などというものは無かった。欲がない訳ではないが、世界征服や復讐などの他社や国々を巻き込んだり、被害を出すようなことは微塵も無い。
それは彼女が、最強の中の最強が故だろう。
しかし、彼女が最強の中の最強と呼ばれる所以は、彼女自身の戦力だけではない。
彼女には、彼女に継ぐ力を有する"右腕"と"左腕"が存在していたのだ。その"右腕"・"左腕"もその気になれば一国家を転覆することも一刻も待たずとも成し遂げられる程と評価されており、実際に過去に【色彩の帝】に宣戦布告をした秘密結社と闇組織が"右腕"一人で壊滅させられたという事実。そしてその秘密結社と闇組織の支援者らも"左腕"から警告され、確実に潰されたのである。
それも、戦争開始後たった4分での終結であった。
【色彩の帝】には"右腕"と"左腕"以外にも桁外れの異能を有する者達を配下としており、"右腕"・"左腕"が居なければ、かの組織によって秘密結社と闇組織は壊滅していたと言われている。
しかし、【色彩の帝】も生きた存在。
地球の人とは異なりはするものの、一生命体だ。
【色彩の帝】―――――――彼女は、19歳という若さで、産まれつきに患っていた不治の病で亡くなってしまう。
【色彩の帝】の死は、世界各国まで広がり、最強の存在が崩壊した事に喜ぶ者や、彼女に救われた者達は悲しんだ。中には【色彩の帝】という最強の抑止力を失った事にこれからの世界がどの様に変化してしまうのかを危惧をする者、或いはその真逆の感情を懐く者もいた。
その悲報、ある者達からすれば朗報である【色彩の帝】の死は、地球にまで広がった。【色彩の帝】は直接関わりは無いが、交流はあったのだ。
【色彩の帝】の死後、彼女に支えていた"右腕"・"左腕"や彼女の配下達は一人、また一人とかつての城から去ってしまう。
【色彩の帝】の配下を勧誘しようとした国や権力者達は予想外であっただろう。城から去るだけではなく、行方を眩ましてしまったのだから。
城の跡地には、【色彩の帝】が飼っていた龍が根城とし、更にその龍が放つ晴れぬ事なき霧を発生させて蜃気楼を起こし、不可侵の要塞と化したのである。彼女の城は、かつて汚染された亡国の領土にあり、そこは【色彩の帝】が現れるまでは余りにも酷すぎる汚染の為にそこの近隣諸国はおろか、他の国々も権利を手放した誰の土地でもない領域だった。
彼女が亡き後、浄化された領域の領土問題となったのだが、その龍がかつての主の城を守護するように君臨する。それ故に結局は誰も彼も手を出すことは出来ない…………最も、それ以外にも原因はあるのだが。
【色彩の帝】は、最強の中の最強と呼ばれるに相応しい力を複数有していた。その中でも【色彩の帝】という異名にもある、彼女自身しか有される事を許されない、彼女の代名詞でもある力があった。
それは瞳。
その瞳は、あらゆる事象や現象、概念までも干渉或いは上書き、又は修正をしてしまう人が持つには過ぎた物と言われる眼力。
世の中には、"魔眼"・"心眼"など"特別な眼"はあるものの、それすらの領域から脱した瞳。
それを、色を与え、色を操り、色の概念、色に連なる事象までも現実にしてしまう眼。
その名を―――――――――――――【色彩の瞳】。
【色彩の帝】の死から約数十年。
新たに【色彩の瞳】を保有した少女が地球に現れる。
これは、望まぬ力を手にし、次期【色彩の帝】と呼ばれ、地球だけではなく先代【色彩の帝】が住まう世界から、数多の種族に命を狙われたり、守られたりする、一般人?少女の物語である。