対策会議
「昨日はお疲れ。みんなのおかげで、この村を守ることができた。」
次の日の早朝、クロとシロは冒険者協会の入った酒場に呼ばれた。そこにはアレックスとファーブルのほかにも、ニール達や他の冒険者も集っていた。
ここの冒険者協会の長であるアレックスが話を続ける。
「今日集まってもらったのは、今後についてみんなと考えるためだ。」
「知らない人もいますので、まずは現状を確認しましょう。事の発端は一週間ほど前、採石場がゴブリンに襲撃されたところから始まります。数人が命を落とし、多くのけが人が出てしました。我々は数名調査隊を出すとともに、町の協会に一報を知らせる使者を送りました。」
ファーブルがニールに視線を送る。その視線を理解し、ニールが話を引き継ぐ。
「俺たちは村に来る前、町の協会から依頼を受けてきた。実際は使者が町まで来ていなくて、定期報告も途絶えていた。だから、俺たちは村の様子を確認して来い、という依頼を受けていたんだ。」
「ということだ。この村はゴブリンたちに包囲されている可能性が高いと、俺たちは見ている。現状は危機的状況だといっていいだろう。君たちにはこの村のためにも、協力してほしい。」
アレックスの言葉に、全員が大きくうなずく。
「まずは、救援要請を送りましょう。ニール、君たちに任せたいと思います。」
「俺たちですか。」
ファーブルの言葉にニールが自信なさげに声をだす。
「ああ、道中襲われる危険が高い。だからある程度の実力のあるパーティーに任せたい。君たちの実力は、問題ないと思っている。」
「だが、俺たちはこの町に来る途中襲われ、シロとクロの助けがなければ死んでいた。」
「そうかもしれない。だが、依頼の件もある。だから、君たちがやるべきだと適任だと判断した。」
アレックスは強い眼差しでニールを見つめる。
「分かった。引き受ける。」
ニールは耐え切れずに視線を外して、返事をする。
「これを持って行ってください。」
ファーブルが筒に包まれた書状を渡す。ニールが受け取ると、ニール達は酒場を後にした。
「さて、あとは調査に関してだが…。」
アレックスの言葉が淀む。
「はい。ボクたちに任せて!」
シンと静まり返った中、元気な声が響き渡る。手を挙げて声を出した主に、全員の視線が集まる。
「君に?」
「うん。ボクとクロに任せてほしいな。」
シロは自信に満ちた表情で話す。
「ありがたい申し出ですが…。」
ファーブルの言葉を、アレックスの手が遮る。
アレックスは時間をかけて思案し、そして固く閉ざされた口を開いた。
「仕方ない。君たちにお願いしよう。」
「おい、アレックス。どういうつもりだ。」
ファーブルが強い口調で訊ねる。
「いずれにせよ、早い段階で調査をしなければならない。彼女たちなら実力もある。ならば、任せるべきだろう。」
アレックスは淡々と話す。
「だが、彼女たちは土地勘がありません。」
「そうだな。だから、条件を付ける。」
アレックスは一度間を開ける。
「俺も同行する。」
「何を考えているんだ。」
ファーブルの口調が一段と荒くなる。
対するアレックスは落ち着いた口調で、淡々と話す。
「俺なら彼女たちを守ることができる。この辺りの土地勘もある。」
「現場の舵取りは、誰がとるんだ!」
「お前がいれば問題ないだろ。それに弟子たちもいる。俺が抜けたとしても、対処できるだろう?」
アレックスはそうだろう、と言わんばかりに弟子たちに視線を向ける。
その視線に、彼の弟子たちは少し自信気に頷く。その光景にファーブルは反論を諦め、ため息をついた。
「はぁ…わかりました。留守は俺が引き受けます。」
「決まりだな。防衛線の構築は任せたぞ。」
アレックスは全員に視線を向ける。
「さて、一難去ったが、危機が去ったわけではない。心引き締め、誰も欠けないよう全員で協力して頑張ろう。」
アレックスの締めの言葉に全員が頷き、この場は解散となった。
連続予約投稿は今日で終わりますが、もしかしたら来週も投稿できればなと思っています。