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良かったね、死ななくて。

 ざぶーん、ざっぶーーん。


 うん、泳ぐのは気持ちが良いね。

 どうも、ピックです。あっという間に3歳になり、今は御海原でバタフライしてます。

 何故、泳いでるか?って、それはちょっと隣国の港を滅ぼしに行くように父さんからはじめてのしれいをもらったからです。

 気分は前世で言うはじめてのおつかい、頭の中にはあの有名なBGMが流れている。


 まぁ、陰ながら見守っている人たちがいるから。よりはじめてのおつかい感が増しているけどね。

 隣国の港を滅ぼす理由は俺たちの領土範囲の海で漁をしているからである。


 ちなみに一回や二回ではなく、何回もである。その度に俺たちの海洋騎士団が沈めているんだが、あまりにも多い為、見せしめに二、三個港を潰す事になったので、俺やアンのように戦場未経験者に経験を積ませる丁度良い相手として、俺やアン、他年少組はそれぞれ泳いで目的地に向かっている。

 泳いで向かっているのは、俺とアンの一族の伝統らしい。海を泳いで攻め込むのが。

 馬鹿だな、これやり始めたご先祖、もしくはこれを伝統にしたご先祖は絶対に。


 そんなこんなで、密漁している船(一部関係ない船)を沈めながら港まであと少しまで泳いできた。

 いや、面白かったなジョーズみたいに迫ってくる俺をクジラかなんかだと勘違いして慌てて逃げていく船達。ジョーズのサメもこんな気分なのかな?

 まぁ、見間違えるのも仕方がないと思うけどね。俺の今の身長は150cm以上、体重も100キロに迫っている。どう見ても3歳児には見えない。これでも常に戦う俺の一族では身体の成長は遅い方である。中には一年やそこらで体は完全に大人になる子もいるって聞く。

 アンが正にその典型例である。

 アンは既に170センチという大人な女性でも高い方である体格をしている。

 というより、俺以外の血の繋がりがある兄妹全員成長が早い。大体が一年もしくは二年で成人と同じ体格をしている。


 そうこう考えているうちに港に着いた。

 俺は一回深く潜ってから浮上し、その勢いのままイルカみたいにジャンプをして空中で回転してから着地した。


 我ながら満点の演技である。

 ………ここの港の住民はノリ悪いみたいで拍手の一つもおきない。


「……、…………。」


 港のいかにもな漁師のおっさんが話しかけてきたが、この国の言語を取得していないので、分からない。そもそも、俺達の領地は島国から取引で今の国に属している為、所属の国の言葉もあまり知らないのに他国の言葉を知っている訳がない。

 なんとなく、お前は誰だ。と言っている気がする。


 まぁ、そんな事はどうでも良い。

 ちゃっちゃと滅んで貰おう。


「っ!……!!」


「無駄、無駄。逃げようとしたってもう既に折っているから。」


「ギャァァァァァ!!!」


 俺は魔法を使ってここら一帯の人達の脚の骨を折った。


 やった事はシンプルである

 俺の全体重とパワーを乗せた四股踏みで地面を揺らし、そのエネルギーをその魔法で強化する。

 増幅した振動エネルギーは地面から脚に伝わり、粉々に粉砕した。


「ぐが!!」


「ギャァ!」


 人が水に溺れた虫のようにもがき苦しみ、俺から必死に這って逃げようとしている。

 もう脚だけじゃなくて手や腕も折れているのに。


「まぁ、この技は危機察知が高い動物には効かないんだけどね。」


 魔法を使った瞬間に地面から離れていたら、効果がない。欠陥品なこの魔法は雑魚を一掃する今回みたいな時にしか使えない。


「お陰で、森とかに住む動物には被害がないのは良いよね。環境は大切にしないと、そう思わない?」


 俺は背後から攻撃した人に振り向きながら言った。


「っ!」


「あっ、その格好、騎士の方?道理で危機察知が高いわけだ。」


 その人はこの国のエンブレムが付いている甲冑を着ていた。この時点でこの国に属する騎士である事はわかった。


「………、…………。……………………!」


「あぁもう、だから、この国の言葉は分からないだって言っているのに。」


 当たり前だが、向こうもこちらの言語を理解していない。しかも、元々、島で孤立していた国の言語である。周辺の民族が攻めてきては追い返してきた歴史がある為、独自の言語プラス大陸の言葉が混ざって複雑怪奇な言語になった言葉をなんとなく理解するのは無理である。


「………。」


「おっ、分かってくれたみたいだね。まぁ、僕も君達の言語は分からないけど、言っている事はなんとなく分かるよ。どうせ、なんでこんなことをした、とか、貴様は何者だ、とかでしょ。」


 複雑な言語を扱わない動物は空気を読むのが上手い。ピック達の民族は戦闘の中での作戦を説明する時間や連携を円滑に進める為に空気を読む感覚が複雑な言語と引き換えに退化した他の人間とは違ってむしろ発達させた民族だった。これはより後天的に鍛えると、まさに心を読んでいるみたいな芸当も可能である。


「他にもいる事は分かっているよ。」


「っ!」


「……………。」


 後ろから別の騎士が攻撃してきたが、気配で動ける人間は分かるから。

 この程度の気配隠蔽では俺を誤魔化して奇襲するなんて不可能だ。何人でかかってきてもな。


「……………、…………。」


「………!」


「言葉が分からないから。堂々と作戦を立ててきたな。」


 まぁ、そんな事しても意味ないけどな。


「「………!」」


 こっちの骨粉砕を警戒して出来る限り空中にいる様にしている。別に着地のタイミングと次の跳躍までの時間を考えて粉砕するなんて訳はないが、面倒だからこっちでいこう。


「ホエールボイス」


「「っ!」」


 危機察知して急いで耳を塞いでも無駄だ。


「ァァァァ!!!!!!!」


「「ぐはっ!」」


 耳を塞いでも完全に聞こえない訳がない。その上、骨伝導で聞こえる様にしている為、結局予防程度にしかならない。


「……。くっ!」


「………………。」


「おぉ、骨が粉砕していても最低限の受け身は出来るんだな。さっすが〜騎士だね。」


 俺が余裕でいると、騎士二人が笑みを浮かべていた。


「うん?この気配は………」


「く、く、く。」


 骨が粉々でうまく笑えないのか?途切れ途切れの笑い声をあげている。


「………、…………。」


「僕程度を化け物呼ばわりって大陸のレベルは低いんだな。この術含めて。」


「「なっ?!!」」


 禍々しい気配が一瞬にして霧散したことに驚いている騎士達は何故術が失敗したか疑問に思った。


「これ、呪術だよね。悪いけど、僕らの一族は今も昔も多くの兵士、英雄、市民、魔物、ありとあらゆる敵を殺してきた。その数は万では収まらないほどにな。そんな奴等から末代まで呪われることなんて日常茶飯事、生まれた時から死者の怨念などから呪われて産まれてくる僕達は呪いに対して高い耐性を持っているだよ。多分十数人の魔力と生命力を合わせた程度呪いなんて僕らには効かない。」


 少し離れた教会からの気配が弱くなったのをみると、あそこが発生源か、どうやら死んでない様だ。


「良かったね。こっちが呼ばわり呪いで死なない限り、術者も死なないより呪いみたいだね。」


「…………。」


「…………………!!」


 おお、怒ってる。怒ってる。無力な自分達と理不尽な僕に対して怒ってるね。

 まぁ、どうでもいいけど。


「じゃあ、仕事も終わったし、帰るね。」


「っ!」


「…、……。」


 殺さずに帰ることに騎士達は驚いているらしいけど、俺の仕事は港とそこにいる人達の破壊であって殺しではない。

 というのも、外交的な事で殺してしまうと、この後が面倒になるらしいから。全員重症を負わせて国の力を削ぐのが目的である。


「さっさと帰ろう。」

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