あれは!クジラか!いや!
さぶーん…ざぶーん…
「うん?なんだあれ?」
「おい、新入り、どうした?」
「あっ!先輩、あれなんですか?」
漁師たちが船で漁をしていると、怪しい影が遠くの海に見えた。
「あぁ、あれはクジラだろ。もうすぐ、船が大きく揺れるから。どこか捕まってろ。」
「わ、分かりました。」
新入りは急いで、先輩の言う通りに手すりに捕まった。
「お、おい!あれ!こっちに来ているぞ!」
「なっ何!」
他の漁師がこっちにクジラらしき生物がこっちに来ているのが見えた。
「船長!大変です。クジラが!こっちに迫っています!」
「なんだと!今すぐ!進路を変更しろ!」
船長は漁を中断して、急いで進路をクジラから避けるように指示を出した。だが……
「船長!」
「今度はどうした!」
クジラの進路から外れたと思った船長に船員が衝撃の報告をもたらした。
「ク、クジラが!船に向かって方向転換をしました。」
「ば、バカな!そんな事あるか!」
クジラ、もしくは、クジラ型の魔物はそのデカさから天敵が少なく、こちらから攻撃しない限り、何もしてこない温厚な生物と知られている。
その為、船長はまるでこの船を沈めようと行動するクジラに対して不審に思った。
「急いで、速度を上げろ!逃げるぞ!」
「は、はい!」
幸い、この船は逃げる事も考えてられる為、軽量に設計されている。
だから、速度は通常のクジラを余裕で振り切れるはずだった。
「船長!クジラとの距離が離せません!」
「時速80キロだぞ!そんな事があるか!」
クジラは60キロ程度しか出せない。
そんなクジラに80キロだしている船が離すどころか、むしろ迫りつつある。
「くっ!野郎ども!船のもの全部捨てろ!」
「で、ですが、船長…それだとこの先の漁が…」
「バカヤロウ!船が沈んだら!どうせ、無くなるんだ!さっさと捨てろ!手が空いたやつから予備燃料に魔力を注いでいけ!」
この船はガソリン以外に魔力でも動くハイブリッド船なのである。
「船長、時速が90キロにのりました。」
「よし、ここまで出せば、やっとで追いつけまい!このまま港へ帰るぞ!」
「はい!」
このクジラのことをみんな伝えなければならない。
船長はその事を考えながら、港へ向けて運転していた。このスピードでの運転は船長にしか無理だった。だから、レーダーの様子がわかっていなかった。
「せ、船長!れ、れ、レーダー!の様子が!」
「どうした!」
「船の下にピッタリと魚影ではない影があります!」
「なんだと!こ、この揺れは!」
その瞬間、船が大きく揺れた。
「せ、せ!船長!!!」
「船長!船底に大穴が!!!!」
「すぐに塞げ!まさかこのスピードに追いついたとでも言うのか!」
「そ、そんなバガな!」
次の瞬間、さっきよりも大きく揺れた。
「う、うわぁ!」
「船長!」
「全員!急いで!船の何か浮かぶものに掴まれ!」
さっきの衝撃に耐えられなかった船は沈んだ。
「ぶはっ!」
「全員!ぶじか!」
「船長!一応、全員無事です!」
船長は不幸中の幸いで船員は全員無事だった事を喜んだ。
「せ、船長!あれを!」
「バ、バカな!あれはクジラじゃない!ヒトだ!」
「う、嘘だろ!ヒトが泳いでこの船に追いついて沈めたというのか!」
船長含めた船員全員がそれが起こした波の大きさからクジラだと推測していた。そして、確信していた。
だが、現実は少し大きめなヒトが全て起こした波だった。
「お、おい!あれが向かった方角は!」
「まさか!港に向かっているのか!」
「急いで!港に連絡しろ!」
船長は連絡役の船員に指示を出したが……
「それがさっきの魔力供給で連絡用の魔道具を使う魔力が残っていません。」
「なに!くっくそ!」
船長は船の性能から逃げ切れると判断した事がミスだった事を今気づいた。
早めにクジラ(仮)の正体を確かめて、港に報告するべきだったと後悔していた。
「やつはなんだったんだ!」