三,事件?
「ねぇ、知ってる? なんか噂で南くんと大空さんが一緒にいたって話」
ふと耳に入ってきた会話。どうやら自分たちのことを言われている。
休みの日2人で出かけた時のを見られていたようである。すさどちらからともなく話に夢中になる周りの目を避け目配せをすると、つかさから先に教室を後に。しばらくしてから悠依も教室を出た。いつもの場所で先に出たつかさは悠依を待つ。
しばらくしてから悠依がやってくる。
「・・・・・・つーちゃん、」
寂しげな声がつかさを呼ぶ。
「・・・・・・悠依、そんな顔しないで。考えようなにか・・・・・・」
「考えるってどーするのさ・・・・・・。俺はつーちゃん、守りたいよ、なのにいつも守れない・・・」
「・・・・・・守ってくれてるよ。悠依いつも」
約束も考え直さないとならない。人気者の悠依と地味な部類のつかさ。この2人だと噂の的になる。だから極力学校では関わらないことにしていたのに、学校外で見られたとなるとそれもよさないといけないのかとつかさは考えていた。だが、そんな考えを悠依はお見通しだ。
「つーちゃん、俺はつーちゃんと一緒にいてくれなきゃ嫌だからね! ずっとそばに居てくれるって約束したでしょ!」
「・・・・・・、」
悠依の言葉に、昔の約束を思い出す。今じゃない小さい頃。
悠依が可愛い顔してクヨクヨめそめそしていた頃、彼は同じ男の子にいじめられていた。そんな時いつも守ってあげていたつかさ。その頃の約束。『ずっと悠依くんのそばにいるよ。ずっと守るから』と。可愛かった悠依に『やくそく?』と聞かれ、『・・・もちろん。約束』そういったことを。
「・・・・・・つかさ! じゃあ、前みたいに俺の事守ってよ! それならずっと周り気にしないで近くに居るでしょ? それに俺もつーちゃんの言い過ぎちゃうことも守れる! それならお互い様でしょ?」
「・・・・・・確かに・・・・・・。でもそれを実行するのは私たちに直接噂の元が聞かれてからね、少し時間が欲しい」
「・・・・・・わかった、でも今戻ったら聞かれるかもよ」
「それはそれでいいよ、私たちの関係を話すだけだよ」
2人でこっそりと話し合いあとはやはり時間差でいつものように教室へ戻る。先に戻った悠依は聞かれるのかと身構えていたがあとから入ってきたつかさへ女子達が集まっていく。
「ねぇ! 大空さん! 南くんとどういう関係なの?! 一緒にいたって噂が・・・・・・、つきあってるとか!?」
「・・・・・・何言ってんの? 一緒にいたってだけで付き合ってる扱い? 意味がわからないわ。悠依とは幼なじみよ。だから一緒にいた、それだけよ。分かったらもう構わないで」
「・・・・・・え、ちょっと感じ悪くない?」
「つーちゃん、言い方・・・・・・全くいつもスパッと言い過ぎなんだから・・・あのね、本当に幼なじみ。親同士も仲良いの、だから俺達も仲良いんだよ、本当は」
つい言い過ぎたのを悠依がフォローしてくれる。昔はそんなこと悠依には出来なかった。しかし今はこうしてフォローができる。
「そうなんだ〜。でも、大空さん怖くないの」
「・・・・・・ごめんね〜、つかさは言い過ぎなところあるけど本当はやさしいから安心して?」
「・・・・・・で、でもすごく嫌そうな顔してるよ・・・」
すかさずフォローを入れる悠依に対して怒ったような顔をするつかさ。疑われてもおかしくない。
「大丈夫だよ、あれでも照れてるから」
2人の本当の関係が吉と出るか凶と出るか。
昔の2人に戻れたことで安心して関われると悠依は嬉しかった。
「・・・・・・悠依。余計なこと言わないで」
「またまた〜。つーちゃんも久々にクラスメイトと話出来て嬉しいくせに」
「・・・・・・黙れ。悠依は余計なこと言い過ぎだ」
口は悪いがつかさもただの照れ隠し。少し引き気味なクラスメイトに対して楽しそうな悠依。そんな彼の携帯かま鳴る。送り主はつかさ。『悠依だけが知ってればいいの、余計なこと言わないで』とだけ。
「南くん、誰から〜?」
「・・・・・・あぁ、家族からだよ、たいしたないようじゃないから気にしないで」
人気者はメールだけでも気にされて、そうでないものは気にされない。こんなにも違うと少しは気にされたいと思うのも事実だ。
交わし続ける悠依の嘘の裏には幼なじみとの愛の約束だった。
「つかさ、大好きだよ」
寝入ってる幼なじみへ一言呟いて軽くキスを落とす。それは彼だけの秘密互いに本音はいない時に呟いて伝えられず。だけど彼らは伝えるつもりは無い。それでも関係が崩れることがないから。約束があればずっと彼らは離れないから。
そうしてこれから先もずっと寄り添っていく。