ニ,過去の約束
俺はつかさと一緒にいたい。なのにそれがかなわない。かなわない。気がつけば立場が逆転していた。昔の俺たちはもっと距離が近かったのに。
「南〜!今日遊びにいかね?」
「・・・・・・あ〜ごめん、用事があるんだわ」
「なんだよーいつもそれじゃん。なにしてんのお前」
「・・・・・・いや、まぁ、俺にもいろいろあるんですよ」
誘いはいつも断って、少しでもつかさといたい。それが本音。でも正直に言えば避難されそうで出来ない。
こんなところで、臆病な自分が出てくる。俺は明るく振舞ってるだけでクヨクヨした臆病者。
「・・・ふーん、まぁ、いっか。今度遊べよ」
「あぁ、大丈夫な時に」
軽く返事をするが、遊ぶ気は特にない。いつだって俺にはつかさが優先。つかさ以上に一緒にいたいと思うものはいない。
仲良く1番したい相手なのに出来ない、かなわない。なぜなら俺たちの立場が逆転してしまったから。
俺たちの間に変化が訪れたのは3年前中学に上がった頃。
それまではつかさは友達もそこそこいた。それに引き換え俺はいなくてクヨクヨして弱々しい性格の為いじめられ友達は居なかった。
いつもからかわれていた俺をいつだって助けてくれたのはつかさだった。
彼女のスパッとものを言うので、よく思わないものもいたが、愛想もそこそこ良かった彼女は人気者でクラスの中心に常にいた。
中学に上がる前くらいからつかさの様子がおかしくなった。何か今までの友達たちから避けられはじめているような、そんな感じがした。
だから俺はもしかしたらっと思い、自分が今度は守れるようになろうと心に誓った。
『つかさちゃんってズバズバいいすぎてムカつく』
『分かる〜、あんな言われすぎると傷つくよね』
偶然きいた言葉も、俺にとってショックでやはり自分が今度は守りたくて密かに努力した。クヨクヨして弱い自分を空元気に明るく振る舞えるように。
中学に上がると同時にそのカラ元気の明るさを全面に出した俺は人気者になった。しかし、つかさは反対にスパッとものを言うその性格から取り囲む友達はいなくなった。
けど、守りたい俺はできるだけつかさと一緒にいた。株をあげたかった。だが、それも叶わず俺のいない隙につかさは影で虐められていた。原因が自分だと分かって守りたいのに守れない自分がもどかしい。
『つかさ、俺が今度は守る。だから頼って』
『・・・・・・悠依、ダメだよ。そしたらまた悠依が虐められるじゃない。それはダメ。せっかく人気者になったのに。それでは意味ないの、だからいいの悠依。私なら大丈夫』
『・・・・・・そうやってつかさはすぐ言う。俺にも守らせてよ』
俺は中学上がったと同時にできたスクールカーストという差別のようなピラミッドの人気者と地味にはまってしまった俺たち。だけどどうしても守りたい俺と関わりを増やそうとしないつかさとの秘密の話し合いに終止符を打ったのはとある約束だった。
『・・・・・・じゃあ、3つ約束して』
『3つ・・・・・・?』
一,学校では話さない。関わらない。
ニ,用のある時はメールする。
三,学校で会うのは昼休みの1度だけ
つかさと学校での条件として、この3つを約束させられた。俺は気に食わないけど、つかさを守るためのこの条件は崩すことは出来ない。
『・・・・・・そんなんで守られるの』
『守られるよ。大丈夫』
『・・・・・・わかった。じゃあせめて放課後だけはそばに居て?俺の・・・・・・俺だけのつーちゃん、でいて』
交換条件を提示すれば迷いなく了承してくれた。
これが俺たちの約束。崩せぬ絆確かめあっていたい俺のわがまま。
今日も愛しいものの待つ我が家へ急ぐ。きっとおやつでも用意して待っててくれている。
「ただいまぁー! ・・・・・・つーちゃん、いる?」
「悠依、おかえり」
「つーちゃん! ただいまぁ〜」
愛しいものの出迎えで俺は家に入る。放課後は俺たちが俺たちで居られる場所。これだけは崩せぬ絆。