一、関係
「南くぅーーん♡ やばっこち見た! かっこいい!」
みんなの南くんは学校一のモテ王子スクールカースト上位に君臨する、王子の南 悠依である。私はそんな彼の幼なじみ、大空つかさ。スクールカーストの中の下あたりの平凡な女の子。
「南くんほんと、やばい可愛い」
女子の黄色い声援が飛ぶ。
近くで聞こえた声援の声が「こっちみた」と騒いでいた。そしてその「見た」理由それは悠依が私だと確信した。だって彼がスマホを出したから。彼は決まってそれをだすとき私に気がついた時が多いからだ。
「・・・あぁ〜、いいね、スマホをいじる姿も目の保養だわ」
「ほんとそれ。朝から見れて最高だわ」
女子の声援に耳を傾けているとやはり私のスマホが振るえた。『いつもの場所昼休み集合』と彼からのメッセージが入る。
彼なりの気づかいらしい。可愛い顔した彼はモテるがゆえに平凡な私がいじめられたりしないようにこうしてこっそりメッセージを送って来る。それも私との約束になっているからだ。
午前中の授業をボーッと受けていると、昼休みを告げる鐘が鳴る。挨拶が終わると、カバンを持ち席をたった。クラスに友達のいない私には気にしてくる相手もいない。
待ち合わせのいつもの場所につき、カバンの中身を広げる。2人分の弁当。
「つかさ!お待たせ」
「・・・・・・待ってないよ」
5分程待つと悠依がやってきた。彼といつもお昼を食べる約束をしている。彼との決め事の1つ。
「・・・・・・フッ、つかさはさそう言うの知ってるけど、待たせてるからな」
「・・・・・・どーでもいいから早く食べれば」
「相変わらずだな〜。・・・・・・いただきます」
『相変わらず』のその言葉がサクッと胸に突き刺さった。けど、それは言わない。
「うん、美味い」
「・・・・・・ん。ありがと」
「・・・・・・ところでさ? つーちゃんはさ、いつになったら高校で友達作るの?」
彼の美味しそうに食べる姿は好きだ。だが、食べてる合間のこの質問は嫌いだ。だって友達作らない理由知ってて聞いているからだ。
「・・・・・・うるさい。分かりきった質問するな」
「ハハッ・・・! ほんと相変わらずだよね。でも俺はそんなつーちゃん好きだけどな〜」
友達なんて言ってくる彼だって仲の良い友達はいない。しかし彼は人気者なのだ。だから友達はいる。
「・・・・・・わかったから食べたんならさっさと戻れば? “人気者の南くん”?」
「・・・・・・そうだね〜。でも俺としてはつーちゃんと一緒の方がいいんだけどなぁ〜。しょうがねぇ、わかったよ、つーちゃん、明日も弁当期待してるな」
そういった彼は私の額にキスを落とし、笑顔で去っていく。
可愛げなく口の悪い私はいつもスパッと切り捨てるように言いすぎてしまう。それもあってか私には友達がいない。と言うか、高校生になった今ではいなくなってしまった。唯一仲の良い幼なじみの悠依も学校では話しかけてこない。それも私に気を使ってくれてるんだろうなってことは分かっている。
「・・・・・・悠依好きだよ・・・・・・」
無意識につかさは呟いていた。彼女は呟いてることには気がついていない。
実は毎回呟いてるよ(←By 悠依)
先に去って、入口の扉を閉めた悠依はいつも呟く、つかさの『好きだよ』を聞いてから離れるようにしている。それは、彼女には内緒なのであった。