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硝子の肖像  作者: 楓 海
8/24

女装

読んで戴けたら嬉しいです。

 夜、車で迎えに来たジールとノヴァはオレを見て、思い切り引いた。


「リュジー……………………」


 オレは仏頂面で後部座席に乗り込んだ。


 ジールは振り返り声を震わせて言った。


「お前、そう云う趣味があったのか」


「違う!

 苦肉の策なんだ」


「苦肉の策? 」


 ジールとノヴァは顔を見合わせた。


「今夜、オレの恋人を二人に紹介しようと思ったのさ

 だけどシヴィルの家は凄く厳しいんだ

 女の子が迎えに来れば来られるって言うから」


「しかしさあ

 しかし、女装は無いだろう」


 ノヴァは笑っている。


「仕方無いだろう

 オレには頼める姉妹が居ないんだから」


 ジールがオレの見てくれを見て言った。


「その服、どうした?

 お袋さんの服じゃ無いだろ」


「友達のパティーに借りた」


「その()に同行して(もら)った方が早かったんじゃないか? 」


「あ…………………」


 オレは愕然とした。


 ジールとノヴァは腹を抱えて笑い出した。


 いつも無口なノヴァが笑いながら言った。


「脚の毛まで剃ってる」


 ジールは面白そうに誘う様な眼でオレを見詰めて言った。


「今夜は離さないぜ、お嬢ちゃん」


 オレは真剣な顔をして訊いた。


「女の子に見えるか? 」


「その化粧、誰から習ったんだ? 

 もともと色男だからな、リュジーは

 顔はクリアしてると思うよ

 しかし、ガタイのいい女だなあ」


「やっぱりい」


 オレは落ち込んだ。


「その胸にはなにが詰まってるんだ? 

 まあ、行ったらそのデカイ胸を強調して、身体はドアで隠すんだな」


 ジールは車を発進した。


 よほど面白かったのかノヴァはまだ笑っている。


「ノヴァ、笑い過ぎだよ」



 シヴィルの家のチャイムを鳴らすとシヴィルが出てきた。


 オレを見たシヴィルは一瞬硬直した。


「リュ……………………」


 言い掛けてシヴィルは慌てて口を手で押さえた。


「シヴィル、誰だい? 」


 ウィスフィールドがソファーからこちらを見た。


 オレは咄嗟にドアの陰に寄りながら膝を折って背を低く見せた。


 そしてウィスフィールドを、必死で睨まないよう努力した。


「さっき言ってた、お友達よ

 迎えに来てくれたの」


「ああ、行っておいで

 たまには気晴らしするといい」


「有り難う、パパ」


 シヴィルは玄関の横に置いてあったバッグを持つと、オレを押しのける様にして出て来た。


 ドアを閉めるとシヴィルは直ぐに言った。


「どうしたの?

 その格好…………………」


 シヴィルは言い終わらない内にプッと吹き出してクスクス笑い出した。


「適当な女友達が見つからなかっただけだよ」


 シヴィルにまで笑われて、オレは不貞腐れた。


「とにかく乗って」


 ウィスフィールドがオレたちの会話を聞きつけて出て来るのを懸念してオレは笑うシヴィルを(うなが)した。


 車のドアを開けるとシヴィルは笑顔で乗り込んだ。


 オレが乗り込むとジールが振り返って手を差し出した。


「やあ、シヴィル

 俺はドラムのジールだ

 こっちはベースのノヴァ」


 シヴィルはジールの握手に応えた。


 ノヴァも振り返り言った。


「宜しく、可愛いお嬢さん」


「ノヴァ、お前相手が女の子だと愛想がいいんだな」


 ノヴァが手を差し出すと、シヴィルは笑顔で応えた。


「シヴィル・ウィスフィールドです

 宜しく」


 挨拶が終わるとジールは車を発進させた。


 オレはやっと安心してウィッグを脱いだ。


 頭がめちゃくちゃ(かゆ)かった。






 読んで戴き有り難うございます。


 この作品に出て来る「サプレス」と言う曲の事を考えた時、洋楽お好きな方でしたら歌詞を見て、直ぐピンと来たと思いますが、ブルース・スプリングスティーンの「ボーンインザUSA」をイメージして書いたんですよ。

ユナイテッドステイツアメリカと言う言い方、あまりしないイメージあるのですが、書いた時USAの三文字だと淋しかったので、フロムユナイテッドステイツアメリカにしました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 読んでいて、とても楽しいのですよ。 主人公とヒロイン、バンドのメンバー全員にハピエンを迎えてほしいのですが。
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