総て良好
読んで戴けたら嬉しいです。
オレたち三人はビールを買って店を出ると店の壁に凭れてビールを飲んだ。
ジールが言った。
「取り敢えずレコーディングだな」
「レコーディング?! 」
オレはビールを吹き出しそうになった。
ノヴァは黙々とビールを飲んでいる。
ジールは瓶を腕に挟んでタバコに火を点けながら言った。
「とにかく手当たり次第ラジオ局に行って売り込むんだ
『サプレス』はアメリカ人のハートをぐっと掴む最高の楽曲だ
いいアレンジを付ければ、もっといい曲になる
あちこちのラジオ局でかけて貰う
勿論、その間レコード会社にも売り込む」
オレは根本的な疑問をぶつけた。
「レコーディングの金はどうするの? 」
ジールは言った。
「銀行強盗でも計画するか」
オレは肩を竦めた。
「話になって無い
目先の事に囚われて刑務所入りはごめんだな
オレには、そんな無駄な時間は無い」
ジールは笑った。
「オレに任せとけ」
「あてでもあるの? 」
ジールは吸っていたタバコを地面に落とすとビールを煽って、オレの肩に手を置いた。
「リュジー、オレはお前の才能と度胸と悪運に賭ける
それも面白そうだ」
オレはジールの眼を見詰めた。
「処でリュジー
バンドの名前はどうする? 」
「ずっと決めてたんだ
レベルアゲインスト」
「反逆する…………か………………
うん、悪くない」
オレはジールの顔を見た。
「問題無い
総て良好だ」
オレはノヴァを見た。
ノヴァはこちらを見て言った。
「総て良好だ」
放課後、シヴィルと秘密の場所でオレは毎日、とにかく曲を書いた。
永遠の一発屋なんて呼ばれるのはごめんだ。
『サプレス』に負けない、いい曲を書く必要があった。
オレが小難しい顔で曲を書いている隣で、シヴィルはオレの邪魔をしないように、スケッチブックに絵を描いている。
こうしていると、オレとシヴィルに離れていた時間が存在したのが嘘に思えて来る。
余りにも真剣にシヴィルが絵を描いているから、オレは思わず言った。
「シヴィル、何を描いているの? 」
シヴィルは顔を上げると悪戯っぽい笑顔で言った。
「ワタシの王子様」
オレは焦った。
「王子様あ? 」
「ほら」
シヴィルはスケッチブックをひっくり返してオレに見せた。
俯いて真剣な顔でギターを爪弾くオレがそこに居た。
「シヴィルぅ………………」
オレはデレデレになって笑った。
「ねえ、シヴィル
今夜、家を出られるかい? 」
「どうして? 」
シヴィルは小首を傾げた。
「今夜、練習と打ち合わせがあるんだ
シヴィルにもオレの最高の仲間を紹介したい」
シヴィルは暫く考え込んでから言った。
「女の子が迎えに来てくれたら、行けると思うけど……………」
「女の子かあ…………………」
オレも考え込んだ。
「解った、何とかするよ」
読んで下さり有り難うございます。
今日、初めてデーヴィッド・ボウイーのアルバム、ジギースターダストを聴いたのですよ。
この頃のデーヴィッド・ボウイーのアルバムはまともに聴いた事無くて、時代の先を行く男のジギースターダストは素晴らしかったです。
五十年前の音とは思えない、今聴いても古さを感じませんでした。
さすが、ボウイー様。
ジャケの出で立ちには意表を突かれましたが。笑
でも、ボウイー様美しいですう。
この作品はアメリカが舞台なのですが、実は私、ブリティッシュロック派なんですよ。
未だにイギリスのロックには胸、ときめきます。
´90年代はブリットロックと言うみたいですね。




