ジョニBグッド
読んで戴けたら嬉しいです。
あれから二、三日してジールから電話が来た。
「リュジー、いいベーシストが見付かった
今夜にでも逢えないか? 」
オレのテンションは一気に上がった。
「凄いっ!
OK、で、何処で逢うの?
できれば音を聴かせて貰いたい! 」
「解った
ライヴハウスの閉店時間に来てくれ」
「解ったよ、ジール」
オレは電話を切ると両手を振り上げて叫んだ。
「何なの、リュシアン? 」
テレビを観ていた母さんが驚いてソファーから振り返る。
「スタローンの真似さ」
オレは二階に駆けあがると自分の部屋のベッドに寝転がった。
着実に計画は進んでいる。
オレは踊り出したいのを抑えて枕に顔を押し付けた。
深夜、母さんが寝静まったのを確認すると、オレはギターを持って家を出た。
こんな風に深夜の住宅街を歩いているとあの時の事を思い出す。
可哀想なシヴィル、もう少しだ。
待ってて。
ライヴハウスに入ると客はもう捌けていてジールと、見知らぬ痩せ形で長身の白人の男が居て、バーテンダーがテーブルの椅子を片付けていた。
「やあ、リュジー
やっと来たか」
ストゥールから降りてジールが言った。
「遅れてごめん
一応、高校生なんでね
親に知られるとマズイんだ」
ジールは、こっちを無表情で見ている長身の男を眼で指して言った。
「こいつはノヴァ
ノヴァ、この坊やがリュジー・スミスだ」
「やあ、ノヴァ」
オレはノヴァに近付くと握手を求めた。
ノヴァはオレを見詰めたまま握手には応じなかった。
「まあ、取り敢えずおっぱじめようじゃないか」
そう言うとジールはドラムの前に座って、軽くスネアを叩いた。
オレもステージに上がるとチューニングを始めた。
ノヴァはそれを見届けてから、のっそりとステージに上がって来てアンプに立て掛けてあったベースを取って肩に掛けた。
ジールが言った。
「で、何やる? 」
ノヴァを見るとアンプの傍で頻りに弦を弾いている。
「ジョニBグッドでもやる? 」
オレが言うとノヴァは直ぐにジョニBグッドのイントロをベースで弾き出した。
「そこはギターでしょ」
オレはイントロのフレーズを三回繰り返した。
ノヴァはその間にベースラインを弾き始めたが、チョッパーで音数を増やして攻めて来た。
オレはイギリスで少しだけジャズをかじったのが功を成して、この手のアドリブに乗せる勘は身についていた。
攻めはギターでしょ。
と思いながらも、ジールはエイトビートを刻み、かつて聴いたことも無いジョニBグッドが誕生した。
オレはそれが面白かったから、一発でノヴァのベースセンスに魅せられた。
類い稀に見るジョニBグッドにバーテンダーが眼を白黒させているのが可笑しかった。
上手いベーシストなら腐るほどこの国には居る。
だが、センスのあるベーシストに巡り逢える確率は、クラスで一番モテないポンコツ男ジョシュアが街を歩いてナンパに成功するより低い。
演奏が終わるとノヴァはオレに近付いて来て、手を差し出した。
「気に入ったよ」
オレはノヴァの手を思い切り握り返して言った。
「光栄です」
オレとノヴァは初めて笑い合った。
読んで下さり有り難うございます。
ジョニBグッドはチャック・ベリーと言う黒人アーティストの曲です。
古い曲ですが、凄くノリのいい曲です。
この作品、結構アメリカの曲とかアーティストの名前出て来ます。
洋楽が好きな方は私がどう言う曲が好きか、
筒抜けですね。笑
それでは、また明日。




