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硝子の肖像  作者: 楓 海
22/24

プロム

 読んで戴けたら倖せです。

 その日は朝から忙しかった。


 ジールたちと三人で、プロムの会場へ行って機材を運び込み、サウンドチェックを済ませると入念なライブの打ち合わせをし、家にとんぼ返りしてシャワーを浴び、タキシードに着替えた。


 夕方、チャーターしてあった白いロールスロイスに乗り込み、いざお姫様を迎えに行く。


 チャイムを鳴らすと、仏頂面のウィスフィールドが出て来た。


 オレはそれは無視して、姿を現したシヴィルに眼をやった。


 シヴィルは少し浮かない顔をしていたが、オレを見ると微笑んだ。


 オレには直ぐに解った。


 夕べ、ウィスフィールドがシヴィルに何をしたのか。


 だが、今日はプロムだ。


 事をわざわざ荒立てる事も無い。


 総てが台無しになってしまう。


 オレはワザと気付かない振りをして笑顔でシヴィルに手を差し伸べた。


 ドレスを着たシヴィルは妖精の様に美しくて思わず見とれてしまい、危うく用意していたコサージュを着け忘れる処だった。


 薄紫色のカトレアのコサージュを胸に着けると淡いピンクのドレスによく映えて、オレは胸を撫で下ろした。


 ずっと車の中で、シヴィルのドレスに合わなかったらどうしようか、と悩んでいたからだ。


「綺麗だよ、お姫様」


 シヴィルはぎこちなく笑った。


 ロールスロイスに乗り込むまで、オレはシヴィルをエスコートしたが、シヴィルはやはり沈んだ顔をしている。


 オレは車の中に居る間中、シヴィルを笑わせようと必死でおどけてみせた。


 努力のかいあってシヴィルの沈んだ気持ちは少しずつ浮上し、会場に着く頃にはすっかり笑顔になってくれた。


 シヴィルの為に最高のプロムにしたい。


 会場に入ると、レジーナが大学生の彼氏と来ていてオレたちに気付くと、大学生に合図してオレたちの傍まで来た。


 レジーナは大学生を紹介してくれた。


「彼はK大学のジョン・ベイスンよ

 ジョン、私の大親友のシヴィル・ウィスフィールドとリュシアン・エヴァースミス」


 ジョンはシヴィルを見て言った。


「君が噂のシヴィルだね

 レジーナは君に夢中で、逢う度君の話ばかりするから、焼きもちの妬きどおしさ」


 シヴィルは照れて笑った。


 オレはジョンを見詰め、ブルータスお前もかの気分だった。


 ステージにはジールとウッドベースを弾くノヴァ、そして今日だけ雇ったスタジオミュージシャンのジムが、スチールギターでムード音楽を演奏している。


 フロアでは想い想いの装いに身を包んだ卒業生たちがポンチをのんだり、音楽に合わせて踊ったりしていた。


「シヴィル、踊らない? 」


「有り難う、リュシアン

 でも、ごめんなさい

 ワタシ、踊れないの

 レジーナに教えて(もら)ったんだけど

 まだ、よく解らなくて………………」


 オレは少し(かが)んでシヴィルの顔を覗き込み、じっと見詰めた。


 シヴィルは最初、真面目な顔でオレを見詰め返したけど直ぐに笑い出した。


 オレは言った。


「大丈夫、オレとなら踊れるよ」


 オレはフロアの中央にシヴィルを誘って、シヴィルの手を自分の肩に載せ、シヴィルの腰に腕を回した。


 オレはシヴィルの耳元に囁いた。


「オレの足の動きに合わせて」


 シヴィルは最初、足元を見ながら合わせていたが直ぐにコツを(つか)んでオレを見詰めながら踊り始めた。


「リュシアン……………………」


 シヴィルは急に熱の籠った眼でオレの眼を見詰めた。


 オレは訊いた。


「どうしたの? 」


 シヴィルは眼を潤ませて言った。


「沢山の倖せを有り難う

 ワタシ、リュシアンが居てくれるから、いつもとても倖せなの」


「シヴィル……………………」


 オレは踊る足を止めてシヴィルを抱き締めた。


 そして言った。


「オレがシヴィルにあげたい倖せは、こんなものじゃ無い

 もっともっと倖せにしたいんだ」


 シヴィルは答える代わりにオレを抱き締め返した。


 暫くの間、オレとシヴィルは抱き締め合っていた。



 少ししてシヴィルはオレの耳元に口唇を寄せて言った。


「ノヴァがつまらなそう」


 オレはノヴァを振り返った。


 確かに、気の無い顔でウッドベースを弾いている。


 見ればジールもロボットみたいに同じフレーズを繰り返している。


「あれは、そろそろ限界だね

 早く救出しないと、その内頭から煙を出すかも」


 シヴィルはクスクス笑いながら言った。


「早く救出してあげて」


「ごめんね、シヴィル

 一人で大丈夫? 」


 シヴィルは悪戯(いたずら)っぽい笑みを投げ掛けて言った。


「大丈夫

 エヴァースミス夫人はフロアで鼻高々よ」


「シヴィルぅ………………」


 オレはその言葉にデレデレになった。


「さあ、行ってあげて」


「よっしゃあ!

 一丁、ぶちかましますか! 」


 オレはシヴィルの頬にキスするとステージに駆け上がりマイクに向かって叫んだ。


「イッツァショウタイム! 」


 フロアのみんながステージを振り返った。


 オレがアンプに立て掛けてあったギターを首に掛けるとジールは「待ってました!」と声を上げてバスドラを鳴らした。


 ノヴァはウッドベースを引っ込め、オレを見てニヤッと笑った。


 オレはマイクに向かって言った。


「有り難う、ジム!

 このプロムの為に駆け付けてくれた最高のギタリスト、ジム・オブライエンに盛大な拍手を! 」


 フロアから盛大な拍手が沸き上がった。


 ジムは一礼してステージを降りて行った。


 フロアを見ると、みんな期待に眼を輝かせている。


「このプロム出演に熱烈なお誘いをしてくれたレジーナ・フォードに感謝します

 そして、オレたちレベルアゲインストは今夜、このプロムを最高に想い出深いプロムにする事を約束します」


 オレがジールを振り返って合図すると、ジールはスティックをクロスさせて叩いた。


 演奏は始まった。


 ムード音楽にうんざりしていたジールとノヴァは、水を得た魚の様にノリノリで演奏し始めた。


 フロアのみんなはオレたちが奏でる軽快なロックに合わせて踊り出した。


 オレはステージからシヴィルを見た。


 シヴィルにレジーナがポンチを渡して、オレにウィンクした。


 オレはサンキューと云う意味を籠めて、レジーナにウィンクを返した。





 読んで戴き有り難うございます。


 アメリカにMRCと云うレコード会社はありません。笑


 昨日、旦那がCDを流していて、それが凄く私好みの音だったので、旦那に訊いたんです。

「なんてバンド? 」

 すると旦那は答えてくれました。

「スリップノット」

『バンド名、だせぇ』

 と思ったのですが、めっちゃ気に入ってたので貸して貰う事に。

「デスメタルだぞ」

 と言われて、私はがっくり。

 最近のメタルバンドって見た目、長髪洗って無さげに子汚いし、オッサンくさいし…………。

 ま、でも演奏してるとこ見る訳じゃ無いし聴くだけならルックス関係無いし。

「俺はこれ聴かないから、やる」

 と言われ、儲けた儲けたと早速パソコンでイヤホン付けて聴きました。

 ギャンギャンのデスメタル聴きながら、チマチマと縫い物しとりました。

 ド派手なデスメタル聴きながら、なんとも超地味な事してて、フと、どんなバンドなんだろうとブックレット引っ張り出して見たら。

 仮想パーティーでした。(ⅢΔⅢ)

 わたしゃ普段美しいヴィジュアル系ロックを愛して止まないのに、なんだこの失敗した幽霊みたいなメイクはっ‼️

 ゾンビでも無く、マリリン・マンソンのようなカッコ良さも無く、ただ汚くて、お笑い目指しとんのかおのれらは、と思う様なダサいメイクに何を抱けと……………❔ 

 きょーび、ハロウィーンでもやらんような見てくれにアメリカ人、美意識の欠片もねぇなと絶望しました。

 白と黒の絵の具塗ったくったような顔面にあの子汚そうな長髪のっかってて、悪魔も裸足で笑うだろうな、あれは。

 いや、聴きますけどね。

 聴きますけど、どうにかして欲しい見てくれではあります。

 日本のヴィジュアル系に弟子入りして、出直して来いと切に訴えたいです。

 きっと違うとは思うのですが、スリップノット、知ってる英語だと訳は「滑らない」。

 見てくれが滑っとるわっ‼️


 スリップノットのファンの方、ごめんなさい。

 m(_ _)m

 音は最高にカッコ良かったです。

 愛が湧いた故のショックです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しい青春の一コマですね。アメリカン。 私にはこんな青春はありませんでしたが。 [一言] もう、楓海様。 ヴィジュアル系をテーマにエッセイ一作立ち上げた方がよくないですか? あとがきだけに…
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