離れたりしない
読んで戴ければ倖せです。
シヴィルは時折眉間に皺を寄せて唸った。
オレは眠るシヴィルのベッドに腰掛け、シヴィルの手を握り、じっと寝顔を見詰めていた。
ドアがノックされて、ジールが壁に腕をついて顔を覗かせた。
「リュジー、俺たちは帰る」
オレは立ち上がってジールの傍へ寄った。
「ジール、有り難う
こんな事に巻き込んで、すまない」
ジールは腕を下ろすと肩を竦め言った。
「いいさ
どうって事無い」
ジールはオレの眼を見て言った。
「リュジー、あんなクソ野郎は少し痛い目に遇わせた方が、物解りが良くなるんじゃないか?
お前がいいと言うなら仲間連れて、あいつを足腰立たないくらいボコってもいいんだぜ」
オレは笑った。
「有り難う、ジール
でも、暴力ではなんの解決にもならないよ
腹を立てたクソ野郎がシヴィルに何をしでかすか解らない
オレは正々堂々とシヴィルを、あの悪魔の館から連れ出すよ」
ジールはオレの肩を叩いた。
「解ったよ、王子様」
笑ってジールは言った。
「リュジーらしいな
だが、手遅れにならない内にやれよ
あの様子だと、これ以上時間が経てばシヴィルの心が持たない」
「解ってる」
「じゃ、俺たちは帰るよ」
ジールは踵を返すと、手を振りながら階段を降りて行った。
「リュシアン? 」
オレが振り返るとシヴィルは不安そうな面持ちでオレを見ていた。
「シヴィル………………」
オレがシヴィルの枕元に腰掛けるとシヴィルはオレの腰に腕を回してオレの膝に伏した。
オレは優しくシヴィルの髪を撫でた。
「ごめんなさい…………………」
「大丈夫だよ
フォード市長がオレたちの味方になってくれたんだ」
シヴィルは顔を上げた。
「レジーナもオレもシヴィルの傍に居られる
誰も失ったりしないんだ」
「本当に? 」
「誰もシヴィルから離れたりしない
フォード市長が上手く話してくれるって約束してくれた」
シヴィルは子供の様に笑った。
ドアがまたノックされた。
振り返るとフォード夫人が立っていた。
「シヴィルは落ち着いたかしら? 」
シヴィルは起き上がると軽く身なりを整え言った。
「大丈夫です
すみません、取り乱したりして」
「いいのよ」
フォード夫人はシヴィルの足元に腰掛けながら言った。
「リュシアン、少し外してくれるかしら」
オレは部屋を出てリビングに下りた。
リビングではフォード市長とレジーナが話していた。
レジーナはオレに気付くと言った。
「今、パパと話してたんだけど
児童福祉士に介入して貰うのはどう?
パパがいい人を知ってるの」
オレはソファーに腰掛けながら言った。
「それはオレが決めていい事じゃ無い」
「今、その事をママがシヴィルに話してる筈よ」
「どうかな?
シヴィルはそれでもウィスフィールドを父親として愛しているんだ
そこが厄介なんだ」
レジーナは腹立たしそうに言った。
「そんな父親、愛される資格なんて無いのに」
「オレもそう思うよ
でも、シヴィルはそう云う娘なんだ
だから苦しんでる」
フォード夫人が下りて来た。
「ママ、シヴィルはどうだった? 」
フォード夫人は静かに首を振った。
「残念だけどネガティブよ
シヴィルは虐待を受けている事は認めたけど、児童福祉士の介入については承諾しなかった
パパが悪者になるのは嫌と言っていたわ」
レジーナはソファーに身体を沈めた。
「お手上げね」
フォード市長が言った。
「だが、放っておく訳にはいかない
市長としても、同じ親としても、虐待は見過ごせない」
フォード夫人が言った。
「あんな風になるのは、もうシヴィル自身が耐えきれなくなっているのよ」
フォード市長は背中を伸ばして言った。
「知り合いの児童福祉士には、わたしから話してみよう」
オレは慌てた。
「フォード市長、あの……………」
「解っている
シヴィルを刺激しない様に気は配るつもりだ
シヴィルはもう落ち着いているんだろう?
もう、こんな時間だ
明日は君たちも学校へ行かなければならない
車で送って行こう」
読んで下さり有り難うございます。
時々、なろうに投稿されてる他の作家さんの作品を読ませて戴いて思うのですが、私の作品、可なり異質だなあーと思う訳です。
活字中毒の娘にも、母さんの作品は少数派だよねーと言われるのです。
目茶苦茶、自覚あります。笑
読んで下さっている、あなた様に心から感謝です。
小説書いてて、誰にも読んで貰えないのは淋し過ぎます。
読んで戴き、本当に有り難うございます。
m(_ _)m




