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硝子の肖像  作者: 楓 海
12/24

駄々っ子

 読んで戴けたら倖せです。

 オレが学校のロッカーの前で帰る支度をしているとシヴィルが話し掛けて来た。


「リュシアン!

 今日、レジーナが話し掛けてくれたの!

 彼女って、やっぱりステキ!

 とても綺麗で、自信に(あふ)れていて堂々とてて

 ワタシ、レジーナみたいになりたい」


 オレは慌てて言った。


「シヴィルは今のままで充分魅力的だよ」


「有り難う、リュシアン

 でも自分の持って無いものを持っている人には憧れちゃうものでしょ」


 シヴィルとオレは玄関に向かって廊下を歩いき始めた。


「オレはシヴィルがレジーナみたいになるのは嫌だよ

 今のままのシヴィルが好きなんだ」


「あら、じゃあワタシがレジーナみたいになっちゃったらリュシアンはワタシを嫌いになっちゃうの? 」


 オレは苦虫を噛み潰した様な顔になった。


「性格が変わってもシヴィルはシヴィルだから嫌いにはなれない」


 シヴィルはクスクス笑った。


「ごめんね、シヴィル

 今日からバイト始めるんだ」


「バイト? 」


 シヴィルは眼を丸くした。


「うん 

 メインストリートにある楽器屋の店員

 マリリン・マンソンとエミネムのファンだって言ったら直ぐ雇って貰えた

 シヴィルとのホテル代までジールに面倒掛ける訳にはいかないだろ? 」


「リュシアン」


 シヴィルは哀しそうな顔をした。


「ごめんね、バイトしている間は頻繁に逢えないかも…………」


 シヴィルは首を振った。


「そうじゃ無い

 何もかもリュシアン頼みで申し訳ないなって………………」


 オレは笑ってシヴィルの長い癖毛を撫でた。


「あれ……………………

 まだ気付いて無いんだ

 オレはシヴィルの為なら何をしても苦にならないんだ

 それが例え女装でも」


 シヴィルは両手で口をつつんで、身体を折って笑った。


「あれは傑作だったね

 きっとワタシよりもお化粧が上手だよ」


 オレは不貞腐れて言った。


「できれば記憶を消したいよ

 未だにジールたちにからかわれるんだ」


「シヴィル! 」


 振り返るとレジーナがこちらに近寄って来る。


 シヴィルは輝く様な笑顔でレジーナに手を振った。


 レジーナもそれに応えながらオレにウィンクした。


「ハイ、レジーナ」


「ハイ、シヴィル

 本当に仲がいいのね」


 レジーナが言うとシヴィルは恥ずかしそうに上目遣いでレジーナを見た。


「やあ、レジーナ」


「ハイ、リュシアン」


 レジーナは言った。


「いい友達を紹介してくれて有り難う」


 オレは自慢気に胸を張ってシヴィルの肩を抱いて言った。


「ああ、オレの恋人だからね」


「その自慢の恋人を借りても? 」


「オレはこれからバイトだから」


「じゃあ一緒に帰りましょ、シヴィル」


 シヴィルは照れくさそうな顔をして、オレに手を振った。


「じゃあね、リュシアン」


 シヴィルとレジーナは直ぐに、楽しそうに会話を始めて歩き出した。



 その日からシヴィルはオレと顔を合わせる度に、まるで愛しい恋人の話でもするようにレジーナの話をした。


 シヴィルはレジーナに夢中だった。


 お陰でオレはすっかりレジーナの情報通だ。


 秘密の場所でレジーナの話に熱中するシヴィルに言った。


「シヴィル、

 シヴィル、

 シヴィルの恋人は誰? 」


 シヴィルは何を言ってるのと云う様に笑った。


「リュシアン、どうしたの? 」


 オレは抗議した。


「シヴィルの話し方は、まるでレジーナがシヴィルの恋人みたいだ」


 シヴィルは笑って肩を(すく)めた。


「リュシアン、妬いてるの? 」


「ああ、妬いてる

 最近のシヴィルは口を開けばレジーナ、レジーナ、レジーナ

 折角二人で居るのに、オレたちの話をしようよ

 一切話すなとは言わないけど、オレと居る時はできればオレの事だけ見て、オレの事だけ考えてよ」


 シヴィルは驚いた様にオレを見た。


「リュシアンがレジーナと超仲良しになれって言ったのに」


「そうだけど、そんなに嬉しそうにいつも話されると……………妬ける」


 シヴィルは笑って言った。


「リュシアンと離れてる時は、いつもリュシアンの事だけ考えてるよ」


 オレは上目遣いでシヴィルの眼を覗き込んだ。


「ほんとに? 」


「本当よ」


 シヴィルは笑った。


「なら、許す」


 シヴィルは声を上げて笑い出した。


「リュシアンって、時々駄々っ子ね」


「シヴィルの前ではね」


 シヴィルはからかう様に言った。


「よちよち、リュシアン坊や

 ママはいつでもリュシアン坊やを愛してる」


「シヴィルぅ」


 オレは脱力した。


 いよいよ、レコーディングは三日後だ。






 読んで下さり有り難うございます。


 今日は、ずーっとルー・リードがBGMでした。

 ヴェルヴェットアンダーグラウンドも大好きでした。

 音楽はよく聴くのですが、余り詳しくは無いです。

 音楽的にはデーヴィッド・ボウイーより好きかもです。

 デーヴィッド・ボウイーは「スケアリーモンスター」を聴いてみたいです。

 ずーっと憧れのアルバムなのですが、まだ聴いた事無くて。

 日本語がはいってる曲あって、その曲が狂気的で大好きなんですよお。

 目茶苦茶カッコいい曲だと思ってます。

 アメリカの好きなアーティストは、トーキングヘッズやイギー・ポップとか、あの辺が好きです。

 昔、デーヴィッド・バーンやアンディー・ウォホールなんかが、日本のCMに出てた時は目茶苦茶胸をときめかしてました。

 今から40年も昔の話です。

 今思えば、青春でしたねー。

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― 新着の感想 ―
[良い点] シヴィルがどんどん明るくなっていますね。 このまま行ってほしいのですが。 青春ドラマのヒトコマみたいです。
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