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娼館に残っていたら貴族の妾に選ばれそうになりました

残り400金。娼館に戻った。


「メイル、戻りました」

「め、メイル、無事だったか」

「良かったわ、さらわれたかと」

「ご心配おかけしました」


心配をかけてしまったらしい。

主のグノーさんが出てくる。


「申し訳ありません。ご心配おかけしました」

「いや、それはいい。それよりどうした。さらわれたか」

「いえ。お話があります」



そして、話を簡単にまとめた。

商売の目があったこと。

キャラバン出身のため、そういう商売にとびついたこと。

結果成功したこと。


「これが、お詫び代です」

200金を差し出す。

グノーさんの顔がひきつる。


「な、なにをしたんだ」

「ドラゴン殺しです」


「な、な…」

呆然とする。


「わたしは、うまく行くと思いました、日数はかかりましたが、成功しました。今後もうまく行きそうです。わたしはこれからドラゴン殺しのキャラバンで食べていこうかと」

「ま、待て」

グノーさんが止める。


「なるほど、おまえの才能は本物だ。だが、落ち着いて考えろ。ここでの勉強はおまえの役に立つぞ」

思わぬ申し出。

「…勉強?」

「そうだ。おまえの話は聞いている。先生が誉めていた。おまえは商売で食べて行くにしても、しっかり教育を受けるべきだ」

「…娼婦として売らないんですか?」

「おまえは今、自分で自分を買い戻した。勝手には売れん」

「そうですか」

ちょっと安心。


「残りの金は教育費として受け取ろう。どうだ?」

「…正直、その条件は、わたしとしては願ったり、かなったりです。でも、それでいいんですか?」

「ああ、もちろんだ。こちらとしても助かるのだ」



ドラゴンの素材の売却は時間がかかった。

氷漬けなので腐らないせいか、交渉に時間をかけ、高く売れるところに交渉し続けたらしい。

結局ある程度の素材を売りさばき、全額契約の報酬が手元に来たのは1年近くかかった。


「これで全部だ」

「ありがとうございました」

結局鱗含めて350金が追加された。

手持ちは1000金近い。

ニールへ400金渡すにしても、十分すぎる。

次の討伐へ向かうべきだ。


「それで、どうするんだ」

「ええ。次の討伐に向かいます。次はゲニマ山脈にいるグランドドラゴンです」

「…遠いな」

「氷漬けにすれば問題は…」

「あのあたりは治安が悪い」


「護衛も必要ですね」

「近くの街に準備させよう」

「本当ですか?助かります」

「いや、こっちとしても、次の入荷はいつだとせっつかされているんだ」

オルグナは微笑みもせず言った。

「おまえさんの腕にかかってるんだ。頼んだぞ」



娼館に戻る。

「メイル、先生がお呼びですよ」

「はい」


この1年間、ここで過ごしているが、正直居心地はいい。

あれだけ嫌がっていた妾や娼婦としての人生もいいかな?と思う程度には。

まだ性技をしていないからというのもあるんだろうな。

まだ11だし。


「先生、メイルが参りました」

「ええ。入りなさい」

部屋に入る。

すると。入るなりため息。


「…あなたは、わたしの教え子の中でもピカイチなのにね…」

先生は、わたしが既に自分を買い取っていることを知っていた。

「明日貴族の方が参られます。失礼のないように」

「わたしも出てよろしいんですか?」

求められてもいけないのだが

「あなたが、自分の意志で選ぶ。という可能性はありますから」

なるほど。



翌日。貴族が来た。

これで貴族に会うのは三度目。

大変に態度が悪いがしかたない。

向こうは選ぶ側である。

それに、わたしはキャラバンの経験があった。

にこにこするのは慣れている。


「…あれが」

「…ふむ、たしかに使えそうだ」

ひそひそ話

貴族の中でも偉そうな二人がわたしを見て喋っていた。

気にせず対応。

宴も終わりかけのころ。


「メイル、こちらに来なさい」

「かしこまりました」呼ばれた。


「…デューン様、こちらがメイルです」

「ふむ、かわいらしいな。器量はまずまず、といったところだが、その目がいい」

デューンと呼ばれた人は老人だった。


「きみ、ドラゴンを殺したんだって?」


唐突に言った。

「はい。わたしはなにもできませんが、キャラバンを率いました」

「どうだ、アラバナ、こういうじゃじゃ馬を乗りこなしてこそ、我が血筋だと思うがな」


アラバナと呼ばれた青年が来る。

「まだ幼い。純潔は?」

「まだ純潔です」

「ふむ。ならば囲うのはかまわないが」

「カカカ、囲う、などでは、この娘はすぐに出て行くだろうよ。なあ、嬢ちゃん」


「…ご明察です。わたしは、好機とあらば、この娼館も抜け出してドラゴン退治にいきましたから」

「面白いな、お前」

アラバナはわたしの顔を掴んだ。


「ふむ、確かに良い目をしている。脱走か。そういうのもおもしろそうだな。おまえなら拷問をしても屈しなさそうだ」

その瞳をまっすぐ射ぬく。

「…あの、さすがに、拷問など言われますと…」オルグナさんが慌てて来た。

「言葉のあやだ。交渉しよう」

奥で交渉される。


ついていこうとしたが、身振りで

「ついてこなくていい。断る」とされた。


そのまま待っていると、デューンという老人が話しかけてきた。

「のう嬢ちゃん。あんたはまた狩りにいくのかい」

「はい。今度はグランドドラゴンを」

「カカカ、面白いのぉ。あんたは娼婦や妾など似合わん。公爵でも目指したらどうだ」

愉快そうに笑った。

メイルが娼婦に前向きになった理由はグノーと娼館の先生の教育(洗脳とも呼ぶ)のおかげです

オルグナが、メイルを対等のパートナーとして扱わなかったら、流されていたかもしれません。

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