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いつか来世で約束を 01  作者: 朱本来未
絶命因果編
43/63

第042話 生前想起02

 不安感を少しでも解消したくて今朝の出来事を学校で話したら思いの外不安は薄らいでくれた。

 ただ不安感を抱く私の話に便乗して何度か話したことがある程度で名前も知らない男の人が冗談めかして「なんなら泊まりに行こうか?」なんて言ってきたが、今日は友達のところに泊めてもらうからと受け流した。

 少し露骨に避けてしまったかなと思いもしたけれど私が彼氏と別れたばかりで、その原因を知っていた藤白さんがすぐに話題を切り替えてくれたので特に波風は立たなかった。

 その日の授業日程を何事もなく全て消化して近場の衣類店に赴く。予定外の出費は痛いけれど背に腹は変えられない。手持ちの服と合わせて着回せそうなものを適当に一日分の着替えとして一式買い揃える。そのまま部屋には帰らずにはじめちゃんが手伝いをしている喫茶店に向かった。


 来る時間が早すぎたようで店内にはまだはじめちゃんの姿はない。店主の夕子さんの話によると課題の提出が遅れていて学校で作業中とのことだった。いつ帰ってくるのかわからないのならと私は夕子さんに事情を説明して一泊の宿泊許可を貰う。彼女はさらに事情が事情だからとはじめちゃんを明日一日貸し出してあげようと言った。当の本人がなんと言うかなどお構いなしの口約束だったけれど帰って来たはじめちゃんに告げると「わかったよ」と短く返答して承諾してくれた。


 部屋数の関係で泊まるのははじめちゃんの部屋ということなった。部屋の広さはどうにか布団を二枚敷くことが出来る程度で、そこにふたり横になり電気を消す。なかなか寝付けそうもなかったので今朝のことに関する話に少しだけ付き合って貰うことにした。


「お前の元彼とかじゃなかったんだよな?」

「全然見たことない人だったよ。もしかしたら家族に間違って捨てられちゃったものをゴミの中から探してたのかも。私が捨てたやつ一番手前にあったし。それに私そんなヤバそうなことするようなのと付き合ったりしないよ」

「どうだかな。ちょっと前に付き合ってたやつで別れた後にやたらと電話かけまくって来てたやついただろ。お前がスマホの操作出来なくなるレベルで」

「あれはちょっと失敗したかなとは思ったけどさ。着拒してからは平穏そのものだし、私の前にまでは顔見せたりはしないんだよね。別れる原因も向こうにあったし、言い訳がしたかったんだろうけどさ」

「ホントかよ」

「最初の一回は電話に出てあげたんだけど泣き落としにかかって来たんだよね。「ごめん、悪かった」とか「二度とこんなことはしないから」とかそんな言葉繰り返してた」

「無視続けてたから留守電に罵倒とか入ってたんじゃねーか?」

「そんな気がしたから留守電は聴かないで全部消去しちゃった」

「大丈夫なのかよ、それ」

「うん。だって相手の三股? だか四股が原因なんだもん。たぶんセフレとしてキープしてたのがひとり減ったくらいの感覚なんだよ向こうは」

「なんでそんなのと付き合ったんだよ」

「頼まれたから?」

「まさかとは思うが別れるときは浮気相手の女に別れるように頼まれたのか?」

「そうだよ。よくわかったね」

「よくわかったねじゃねーよ。もう少し付き合うやつ慎重に選べ。頼まれたからとかじゃなくてな。それで昨日別れたやつも問題ないのか?」

「なんで昨日別れたってわかったの?」

「男いるときは、お前うちには顔見せねーだろ。うちに来るときはだいたい男と別れた日か、その翌日だしよ」

「毎度のことだし、そりゃバレてるよね」

「そういうことだ。で、どうなんだ」

「違うんじゃないかな。ちょっと突いたら罪悪感でいっぱいいっぱいになってたみたいだし」

「そいつはなにやらかしたんだよ」

「ヤったのが私が初めてだったらしくてさ。浮かれて調子に乗っちゃったのか私との情事を自慢げに吹聴してたんだってさ。マグロなんだってよ、私」

「なんだそりゃ、そいつはアホなのか」

「そんな話をしてたって教えてくれた男の人いたんだけどさ、なんで私に伝えたんだろって感じだったよ」

「まぁ、その話を直接聞いてたんだろうから元彼の類友でアホだったんだろ」

「だからさマグロって、なに? て訊いたら懇切丁寧に教えてくれたよ。勿論そのあと即ブロックしたけどさ」

「お前のことだから、その元彼にも同じ質問して追い詰めでもしたんだろ」

「そりゃね。ふたりの秘め事ベラベラと喋るようなやつだし、少しは反省してもらわないとさ」

「そんなんとばっかり付き合ってんな、お前は。もう少しまともなのはいないのか」

「全部こんなのばっかり。だからさ、この荒んじゃってる心をはじめちゃんに慰めて欲しいな」

「微塵もそんなこと思ってねーだろ」

「ひっどーい。こんなときくらい慰めてくれてもいいじゃん」

「はいはい、えるちゃんはおバカさんですねー」

「バカにして、もー、バカにして」

「事実だろ」

「そうかもしれないけどさ、こんなときくらい優しくしてよね。今朝は本当に怖かったんだよ」

「悪かったよ。ほら、こっち来いよ」


 はじめちゃんは自分の布団の中へと私を招き入れると抱きしめて背中を軽くさすってくれた。


「寝れそうか?」

「うん。でも、私さ、抱き枕ないと寝れないからこのまま抱きついてていいかな」

「暑苦しい」

「ひどーい」

「布団でも丸めてしがみ付いてろよ」

「なにもかも台無しだよ」

「とにかくだ。あとのことは知らん。お前の気の済むようにしろよ、私はもう寝るぞ」

「あ、うん。おやすみ」

「はいはい、おやすみ」


 そう言って私に背を向けるようにして眠り入るはじめちゃんの背中に手を触れ、その体温を感じているうちに私も知らぬ間にやら深い眠りに落ちていた。

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