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ある悲劇

作者: 雪見

 何がとは言わないが、下った。

久方ぶりに感じる、目の前が白むようなあの痛み。

ヒーロー的な彼に柄にもなく「wcに住みたい」と言わしめる程の、あの痛み。

 主に本屋に棲む(はずだ。ぜったいにそうなのだ。)あの魔物は、今までに何人を絶望の淵へ追いやってきたのだろうか。

一世一代のプレゼンを目前にしたキャリアの彼も、液晶画面に微笑む蠱惑的な女優も、裏社会を牛耳る暗黒のボスさえも、やつは容赦なく奈落の底へ叩き落とす。

 やつの前に我々はただひれ伏し、通り過ぎるのを待つほかない。やつに目を付けられたら最後、哀れなる犠牲者に許されるのは、ただ祈るのみ。これほど理不尽で平等なものがあるだろうか。

 ところでこの面白いのは、下り龍の痛みは、どこか滑稽ではないか。

無論、当事者にとってはまさにto be or not to beの真剣な戦いであるが、傍観者からしてみると、自らの経験に照会した少しの同情と、理由はわからぬがなんだか面白いという、残酷な感情が入り混じる悲喜劇である。

 つまり今この瞬間もわたしが苦しんでいる痛みを嗤う誰かはきっと存在するのであるが、わたしも誰かの痛みを嗤うから、それには目を瞑らねばならないだろう。

 閑話休題。

 このようにして、偶然性と理不尽さ、さらには少しの滑稽味と当事者の背負う独特の悲壮感が相まって、下り龍は滑稽な悲劇のマスコットとして、これからも君臨し続け、幾人もを雪隠の戦士とするのであろう。

 



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