大ヒットアニメ制作作戦1号
ド素人が、暴走して書いた恐ろしく駄目な小説です。
興味を惹かれた方は、「しょうがないから、読んでやるよ」的な上から目線でお読みください。
季節の変わり目、番組改変期。
今まで見ていたアニメに別れを告げ、新しいアニメに出会うこの季節。
ヒットを期待されている大手のアニメが視聴率と円盤の売り上げを競うこの季節に
とある、弱小アニメ制作会社『ダストアニメーションBOXスタジオ』の作ったアニメを見た人々は一斉に驚いた!。
「ば、馬鹿な」
「血迷ったのか!」
深夜アニメを見て固まるオタクたち。
「ちょ、これいいの!地上波でやっていいの?」
深夜、お目当ての声優さん目当てに視聴する少女漫画家。
「なんだ、ここまでやっても大丈夫なんだ」
動画配信を見ながら恐い笑みを浮かべ、口元を緩ませる女性プロデューサー。
「これは、見続けないと」
「いやー●●さんのキャラが穢れる」
と言いつつ高画質録画する女子。
「だめだ、こんなのが流行ったら萌えアニメの根幹が狂ってしまう」
「最悪だ、こんなアニメが流行ったらアニメ業界がダメになっちゃう」
多くの、業界関係者やファンが心配するなか放映されたこのアニメは……大ヒットしました。
その内容から、一部週刊誌やニュース番組で叩かれたものの特定の嗜好を持った一部のファン達の
妄想をかきたて、布教を続けた結果、大量の信者という名のファンを世界中に生みだした。
どういう経緯で、大ヒットアニメ『テンタクルハンターズ』が制作されたかを遡ってみよう
そう、それは、季節外れの雷が鳴り響く日に安っぽい貸しビルの中にある、会議室のなかで熱い制作会議が行われていた。
弱小制作会社『ダストアニメーションBOXスタジオ』
小さな下請けアニメ会社でありながら、堅実で作画崩壊をしないということで有名なスタジオ。
大手からの仕事を受けつつも、確実にこなし実力を上げていきついに自社でアニメを一本制作するぐらいの実力を付けた時に悲劇が起こった。
『ダストアニメーションBOXスタジオ』初制作作品
人気ライトノベルメーカー XSイナズマスマッシュ文庫作品『白銀の魔剣戦争』をアニメ化したのが全ての始まりだった。
原作は、もうじき二百万部に届くという超人気作でありアニメ化すれば絶対に当たるといわれるほどの作品だった。
だが、ここで不幸が起こった。この作品を多くの人へ知らせたいと日夜、睡眠を削って働く編集者が過労で倒れてしまう。
その編集者が、あまりにも多くの作品を抱えていたため、大混乱に陥った編集部は何本かの作品を新人編集者に任せることにした。
そして、その任された作品の中に『白銀の魔剣戦争』があった。
『白銀の魔剣戦争』を任された編集部員 ムーノはとにかく無能だった。
まず最初に、しでかしたことは、作者や挿絵のイラストレーターにアニメ化が決定した事を伝えるのを忘れた事だった。
「え!?」
「アニメ化って、嘘!聞いてないよー」
ネットで発表を聞き大慌ての原作者達。さらに、悲劇が起こった。
「え、ムーノさんが原作者さん達がアニメ会社の好きにやってくださいというからもう制作にはいっているのですが」
「え!」
「ちょ、これ原作七巻を1クールでって内容が破綻しますよ」
制作会社の会議室で、初対面の原作者さんとイラストレーターさんとの会話で明かされる恐ろしいほどの破綻ぷりだった。
「ムーノさんが「原作で最も人気な『黒色魔剣編』は絶対にやってくれって。原作者さんが『絶対にやってくれ』っ言っているからと」
「私、そんな事、一言も言ってませんよ!」
「え、じゃあ主役の声優に、自分がファンだったとかいう新人アイドルを原作者さんが抜擢したとかいう話も」
「そのアイドルの名前、今初めて知ったんですが……」
次々と真実が明かされることにより、どうしようもないほどの重い空気と沈黙が発生し会議室を支配した。
「これ、やめてもらう事ってできますか?」
「もっと早く言ってもらえれば、大丈夫だったんですけど……もう六話ほど納品してしまっているので」
「ぶっちゃけますとね……私達もこんなアニメ作りたくないんですよ」
オレは、原作者さんに心情を吐露し始めた。
「本当は、三巻ぐらいを1クールでまとめて、『黒色魔剣編』は二期でやるために取っておきたかったんですよ」
「特に、アークが新必殺技を会得するところは二話使ってでもやるべきだって……」
気が付くと、オレは、自分がファンである作品で是非ともやりたかったことを一方的に話していた。
(やべえ、やっちまった)と思いつつも、もう止めることもできない私は一生懸命に語った。
そして、一通り話し終えた後、私は原作者の先生とできる限りの修正案の打ち合わせを開始した。
だが、こんな醜態を曝ししてしまったのに、原作者さんとイラストレーターさんが少しうれしそうだったのはなぜなんだろうか?
(オタクの一人語りってすっげーウザイはずなんだけどな)
その後、俺達は話し合い、なんとか現状の素材を使い再構成しようと試みたものの。編集部とムーノ編集の空気の読めない発言によって全て霧散した。
そして、半年後。アニメは完成した。
アニメ『白銀の魔剣戦争』は酷い出来だった。 内容破綻、キャラ削除、ボー読み声優(主演)、おまけに海外の下請けにて
にトラブルが起こり作画崩壊まで起こってしまい今世紀最大のクソアニメという称号を受け取った。
原作者とイラストレーターさんは、「あなた達は、悪くないです」と逆に励ましの言葉をくれたがこちらとしてもとんでもない駄作を作ってしまい申し訳ないという気持ちでいっぱいだった。
そして、この駄作のせいで信用を失った『ダストアニメーションBOXスタジオ』は原作付きの仕事は入らなくなってしまった。
結局、この作品を作って得れたのは、制作環境を拡大するために設備投資の資金の借金だけだった。
以前同様の、下請けの作品でなんとか会社を廻す事はできたが、利子を払うのが精一杯で借金は減らない日々を過ごしていた時だった。
「このままじゃ駄目だ!もう一度アニメを作ろう」
給湯室でパエリアを作っているオレに向かい社長が叫んできた。
「はいはい、今、動画部のみんなのご飯作っているところだから後でね」
「いや、そうじゃなくて」
「今日は、週に一回の凝ったご飯の日だから。邪魔しないでくださいね、社長」
「はい!」
寂しそうに、去っていく社長の背を見つめ終え、俺は、再び具材の下ごしらえ開始した。
「つまり、借金の元金を減らしたいと」
「そう、『白銀の魔剣戦争』のせいでうちの会社には原作付きの仕事が来ることはほぼ皆無になった」
「まあ、あんな作品作るようなところに大事な原作を任せたくはないですよね」
「そう、だから私は考えた! 『原作付きが駄目なら、オリジナルを作ればいいじゃないか』と」
俺の作ったパエリアを食べながら社長は俺の疑問に答えてくれる。
(うん、ちょっと水分を減らしたのが正解だったかな。パサパサ具合がいい感じだ)
「ねえ、聞いてるプロデューサー君」
「はいはい、聞いてますよ。マリーは、パン党ではなくご飯派だったんですよね」
「おい、聞いてねえだろう」
「大丈夫、聞いてますよ。ご飯はご飯でも炊きこみご飯派なんですよね」
「おい、いい加減にしろよ! これから新作アニメ作るんだからちゃんと話聞けよ」
ちょっと怖い顔した社長のアップから逃れるためにの背をそらしつつ俺は、重大な事実を言った。
「アニメ作るって言ったって、予算がないでしょ予算が。いくら、アニメ作る意思があっても、予算がなきゃ何もできませんよ」
とりあえず、現状を説明し諦めさせようとしたが、社長はその言葉を聞いて諦めるどころかニヤリと笑みをうかべ自慢げに言い放った。
「安心しろ、資金は用意した。遺産相続で確保した爺ちゃんの山一つ担保にして融資してもらった」
「え!」
社長の発言に驚き固まってしまったオレさらなる爆弾が投下された。
「そしてスポンサーも見つけた。 放送枠も確保してる。後は、作るだけだ!」
もう、何も怖くない。そんな自信が社長から発せられている。
(こ、これが未来へ突き進む男の輝きなのか!」
「そして、オリジナルならあのムーノのようなクソ編集達に邪魔される心配はない」
驚く俺を見ていた瞳が、何かを思い出したのか。社長は、黒い笑みを浮かべながら持っているスプーンが変形するほど力をこめる。
「ああ、そういえば社長」
「何?」
「まだ、丑の刻に藁人形に向かって釘を打つ禁断のおまじないを実践しているんですか」
「もちろんだとも。 あの禁断のおまじないを始めてから胃痛が良くなってきたんだよ」
胸元を手でさすりながら嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「ほら見たまえ、新しい木槌と五寸釘を新調したんだよ」
机の中から取り出した妙に禍々しい形状をした釘と新しい木槌を取り出し満面の笑みを浮かべてくる。
「分かりました。とりあえず、今の仕事がひと段落する二日目に企画会議でもしましょうか」
「うん、それでいこう。 絶対に『白銀の魔剣戦争』の汚名を返上するアニメを作るぞー」
「というわけで、我が社の赤字経営が一挙に解決できる物凄く売れるアニメを考えてください」
妙な沈黙が会議室を支配する。
「えっと、マ●マギの続編を作る」
「却下! ウチの会社でそんな大作できるわけないだろうが」
「じゃあ、ホモホモしいロボットアニメ作る」
「そういのは、腐海の住人の方々が自然にやってくれるから狙っちゃダメです」
「ケモミミ少女が友達的なだけのアニメを作る」
「オタクが大好き、貧乳キャラだらけの百合アニメとかだめっすか?」
「じゃあ、女の子だけしかでてこない頭の中がお花畑ですかって感じの萌えアニメ」
「そういう作品は、、当たればいいけど、当たらなかったらあっという間に廃れますよ」
「よし。それじゃあ最終的に登場人物が全員死ぬの作ろう。謎パワーの暴走とか、大津波であっというまに滅んじゃうような」
「じゃあ、仁義なき戦いする極道系ロボットアニメ」
「小さい頃に誘拐された少女が、宇宙人に怪獣兵器に改造されて戻ってくる話とか」
「絶対順守の魔眼持ちの主人公の復讐劇」
「生き別れの兄弟の片割れが洗脳されて、殺しあうアニメ」
「氷漬けにされた主人公が、ノコギリでバラバラにされるとか」
スタッフ達が次々と、欲望にまみれた意見を上げていくのにキレたオレは無言で、部屋の隅まで歩き、備え付けのロッカーから金属バットを取り出しテーブルを殴りつけた。
「よし、お前ら色々な意味で黙ろうか! それ以上いうとこの『洞爺湖』って書いた金属バットでおまえの頭をフルスイングするぞ」
「もう、みんなさっきから何言っているんですかーーー」
俺の行動で頭が冷えたのか一部のスタッフ達が正気を取り戻し会議が再開した。
「そうですよ、さっきから問題作とか、心病んだクリエイターの若さゆえの過ちネタとか、パロディネタばっかり」
「もっと……こうなんていうか、せっかくのオリジナル作品なんだから、人々の心に残る作品を作りましょうよ」
「感動作ね……」
その単語を聞いた瞬間何人かのスタッフが苦い物を食べたような表情を浮かべる。
「そうですよ、深夜放送でも子供達に見てほしいとかいう作品作たっていいじゃないですか」
「そういう作品を作って、アニメの素晴らしさをみんなに知ってもらう。それが私達の目標じゃないですか」
輝きに満ちた目で熱弁を振るう若いスタッフ達。
ああ、まぶしい! まぶしすぎる穢れの若者達なんだ。君達みたいな……君達みたいな若者を見ていると、汚したくなるんだよ(笑)。
「そんなもん受けないし、売れないよ」
「え!」
「ぷっ、プロデューサー! 何をっ、何を言っているんですか」
「そんな売れないもん作ったって売れないって言ったんだよ」
反抗的な視線をぶつけてくるスタッフの目を見ながら俺はゆっくりと語りだした。
「いいか、俺達みたいな中途半端なクリエイターがそんな感動物作ったて誰も見てくれないんだよ。俺はそういう作品をいっぱい見てきた」
「今、俺達が作らなきゃいけないのは、アニメ見たやつが円盤が欲しくてたまらなくなるような作品なんだよ」
机の上に手を叩きつけ大きな音が会議室に響く。
「だから、みんなが感動するような作品を……」
「普通に感動するようなアニメなんて、どっかの偉い監督とかの名前じゃなきゃ売れないんだよ。作りたかったら偉くなってからやれ!」
「いいか、ウケルアニメに必要なのは。分かりやすいエロと衝撃的な映像や内容から生まれる話題性なんだよ」
「アレとかソレとか見てみろ。突拍子もないことや衝撃的な映像や内容のおかげで社会現象にまでなっただろう」
実例を出すと納得したのか反抗的な視線が消えた。俺は、それを確認するのと同時に背後にあるホワイトボードをマジックで書き殴る。
「だから、俺達は作らなきゃいけないんだ。こう色々と思春期の僕たち、私たちの心にトラウマとか変な性癖目覚めさせるような『末期なアニメ』を」
「末期なアニメですか?」
ホワイトボードに書かれた『末期なアニメ』という単語に混乱するスタッフ達。
「具体例をあげると、幼馴染が人間爆弾に改造されたり、守っている人達に迫害されたりするようなアニメだ」
「後、女の子にミミズ食べさせたり、異世界に迷い込んだ女の子が兵士を産むための慰安婦にされ妊娠してしまったとか、幼馴染の女の子がモンスター産む身体に改造されたとか、そんなLVの末期な奴だ」
「それ、怒られなかったんですかP〇Aとかに。 大丈夫、夕方に放映されていたけど怒られなかったらしいから」
俺が上げた実例に「うっげ~」とした表情を浮かべるスタッフ達。
「とにかくだ、俺達は後がない!後がないんだ!」
「深夜枠で、お子様が眠る丑三つ時に青少年や少女にトラウマ刻み付けるような作品を作ってやろうぜ!」
自分が持てる最大限のスマイルを浮かべ握った拳の親指を立てた。
「はい! 主人公が精神崩壊したり、狂った妹と二人で世捨て人になるとか」
「自分の事を育ててくれた宇宙人を、街の住人が集団暴行して殺すとか」
「人気が下から数えた方が早いヒロインでメインのシナリオ作って、一番人気のヒロインが脇役で失恋したショックで空鍋をかき混ぜるとか斬新じゃね」
「円盤が売れなさそうだから却下」
「スーパーボールのようなキャベツ斬るとか、アゴが異常にとがったり、肩が風船のように膨らむロボットとか」
「どっかの特撮に出てくるような幹部軍団のパロディをやるとか」
「人気原作のエロゲーの二期とかやって、水着シーンとか温泉のシーンでも邪魔な光や湯煙が無くならない」
「イケメンボイスのニートな六つ子達が、ブラック工場に勤めて精神が破たんするとか!」」
「ヒロインが首だけになるとか。お腹切り裂いて赤ん坊の有無確認するとか」
「うーん、さっきから衝撃的なネタに偏っているな。 そういうのも必要だけどなんかこう……別の要素とかないかな?」
「はい!毎回、毎回、助けた少女が目の前に悪魔に殺されるのを目撃する」
「親友の妻寝取って生まれた子供が、寝取られた男のクローンと戦う」
「悪魔召喚の生贄にされた少年の復讐劇」
「うーん、悪くはない!悪くはないんだけど……なんかこう分かりやすくて目を引く要素が欲しいな」
「じゃあ、女の子が触手モンスターと戦う作品なんてどうですか?毎回、毎回エロく絡みついてくれればみんな食いついてくれると思いますし」
「そっ、それだーーー!」
「捕まった女の子たちが、触手によって改造されて悪の手先にとかの要素入れれば話題になりそうですね」
「円盤になれば光が消えて触手さんの描写が30%アップしますとかすれば、売れるんじゃね。 さらにBOX限定とかでやればマジ売れそうじゃね」
「さらに、今現在人気どころのアイドル声優とか使えばさらに売・り・あ・げ・U・P」
「いける!いけるよ!よし、さっそく制作開始だーーー!」
「じゃあ、監督、まずはキャラクター作りましょうか!とりあえず売れそうな声優さん適当に選んでキャラデザの原案描いてください」
オレは、近くに置いてあった声優雑誌の今月号を手に取り、監督に見せながら話を進めた
「えっと、この声優さんは確か金髪で眼鏡のキャラが当たっていたな。 この声優さんはプラチナブロンドのショートのロリキャラが」
「とりあえず、当たりキャラに似せたたのを作りましょう。そうすればファンの奴らはきっと手を出してくれますよ。薄い本でしか再現されなかった
のを本家の声優さんと、その当たりキャラで再現するんですよ」
「監督、それってパクリですよ!いけないーんだ」
「フフフフ、大丈夫だよプロデューサー君。これはインスパイアだよ。私は声優さんのイメージに合わせたキャラを制作しているのであって決してパクッっているのでは
ないんだよ。 ただ偶然にもその声優さんのイメージでキャラを作ったら人気キャラに偶然似てしまっただけなんだから」
と監督とお代官様ごっこをやっていると、一人のスタッフが私達に声をかけてきた。
「監督、プロデューサーさん。声優さんはちゃんと選ばないと大変ですよ」
「はあ!?」
「なんで! 俺達は、ちゃんと私情とか捨てて、声優雑誌の人気ランキングの上の方の声優さん選んでいるよ」」
「だめですよ、監督、プロデューサーさん。 上位に載っている声優さんのなかには時々顔だけでとか売れているけど微妙な人とかがいるんですから」
「仕事が上手くいってなくてSNSのフォローアーに喧嘩売ったりとか、合コンで王様ゲームやっているのをスクープされたり、イベントで結婚宣言したりとか
アニメ放映中は大人気でもBOX出るまでの間に、孕んで結婚しちゃったとか、彼氏いるのバレたりしちゃったら途中で円盤やBOXの予約とかキャンセルされちゃいますから」
大量の円盤がキャンセルされるのを想像した俺達は顔を合わせてうなずく、詳しい奴の意見を取り入れようと。
「うーん。君、とりあえずやめといた方がイイ的なアイドル声優さんとかがいるなら教えてほしいんだけど」
「俺も、あんまり詳しくないんですけど、とりあえずネットとかでうわさが出ているのは……」
俺と、監督で話し合っていると、いつの間にかスタッフがある待ってきた。
「えっと、僕の見立てだと上位に載っている、こいつとか、そいつとかがここ半年中にバレそうな気配が……」
スタッフの一人が、手元にあったアニメ雑誌を机の上に置き、そのページに載っている声優さんの顔写真を指しながら困ったような表情を浮かべる。
「あ、この娘、●●さんと付き合っているんじゃなかったけ?」
「知り合いがこの娘の付き合っている声優の大ファンで……恨み言の電話かかってきたことが……」
「あ、私、この間この声優が音響スタジオの近くにあるラブホから出てくるの見た」
「あ、この人週刊誌に狙われているってネットでよく言われてた人だ」
等と女性スタッフが次々とどっかから仕入れてきたヤバイ情報を暴露していく。
「おい、これ結構難しいぞ」
「はい、作品ができてもなんか旬が過ぎてしまった的な感じになりそうな気配がするんだよな」
「でも、路線としては間違ってないような気がするんだよな。正直、却下するには惜しい」
正直、聞けば聞くほど恐ろしくなっていく声優業界の闇に男性陣が恐々していた時に一人の女性スタッフが手を上げて言った。
「はい! わたし、考えました美形の男キャラが触手に襲われるアニメとかどうでしょう!」
「「「「「おい!」」」」
発言された斜めすぎる発言に一同が突っ込むが、発言者の女スタッフは気にせず
「とある、男子校に封印された魔物が目を覚まし。触手を使い学園の生徒たちを攫い生気を集める。 それに気づいた主人公達が
戦うのですが、一人、また一人と倒され触手達に囚われていく。 ラストは、触手に囚われたみんなを助けるために主人公と魔物のラストバトルを……」
「却下、売れねーだろう。そんなもん」
「さすがに、それは斬新すぎて誰もついていけないんじゃ」
頭の中で絵を想像し、げんなりした顔をする
「いや!それ、案外売れるんじゃない」
「はい?!」
一人の女スタッフが目を輝かせていう、
「そうだよ!服がボロボロの半裸男子にいやらしい触手が絡みつく。絵的にありじゃね」
「おい」
「そうですよ。声も人気男性声優なら彼女とかいてもあんま影響ありませんし、むしろもっとヤレとかいってお金落としてくれそうですし」
「おいおい」
「よし、さっそく制作を開始しましょう」
「私の知り合いに、乙女ゲーの原画家さんがいるんですけど連絡しますか?」
「あ、お願い。 とりあえず、主人公のオレ様系と、眼鏡の似合う生徒会長キャラと、エプロンの似合うオカン系男子のラフを書いてもらって」
「あ、あの…… おれ、まだ許可を」
周りにいた女性スタッフ達は俺の声を無視し、次々に突っ走り始めていた。
「はい、連絡つきました。絶対に参加するそうです」
「よし、次にシナリオライター押さえるわよ。後、こういうの好きそうな原画家さんと動画を確保するわよ」
「ああ、動いていく。俺の意思とか決定とかを一切無視して勝手に状況が進んでいく」
俺は、その時ただ見ていることしかできなかった。 やる気を出したスタッフ達(七割)が一つの目的に向かって走り出した
光景を止めることができなかったんだ……(だって、恐かったんだもん。あいつら獣の目をしてたんだもん)。
結果から言うと、このアニメは当たった。
弱小プロダクションであったダストアニメーションBOXスタジオの赤字経営が黒字になるLV。銀行が二つ返事で融資してくれるぐらい当たった。
人気男性声優が演じる美形のキャラ達が、魔物と戦うというコンセプトだけでも女子達に喜ばれたうえに、いやらしい触手に絡みつかれ
艶っぽいあえぎ声や苦痛の声を漏らす描写がそれはもう大ヒットしたさ。
深夜枠でありながら、視聴率がどんどん上がり、お絵かきサイトの登録数もあっという間にミリオン。
話数が進むごとに、参加アニメーター(主に女性)が増え、エロアニメで触手のスペシャリストと呼ばれる監督やら原画家さんを引っ張りこみ(拉致に近い)
嫌がる彼らに触手を描かせまくった。
「もう嫌だ、男に絡む触手とか描きたくない―――!」
「穢れる……おれの技術が女どもの妄想で穢れていく」
等と毎回毎回、制作スタジオ内で嫌な悲鳴が上がっていた事は……うん、もう忘れよう。
このアニメのおかげで、うちの貧乏制作会社は見事に盛り返し、健康保険も雇用保険も入れて残業も少なくなりブラックアニメスタジオという汚名も返上できた。
「俺の給料も上がり、ボーナスも3倍になった」
うちの事務所は、名前もあがり原作の付きの仕事もちょこちょこと入ってくるようになった。
(乙女ゲーとか女子向けソシャゲが多いのは気のせいだと思いたい)
『テンタクルハンターズ』のおかげで、俺達は救われアニメ業界は活気づいた。
でも、近頃のオタク業界で美形の男キャラが触手やらオークやらに襲われるアニメとかゲームの本数が増えていき美少女アニメの数がどんどん減ってきている。
「これは、俺のせいなのだろうか? ……このブームを作ってしまったのは、あの時、女性スタッフ(腐海の住人)達の暴走を止められなかかったあの作品のプロデューサーだった俺のせいなんじゃないかと」
思い、悩む毎日。
そして、我慢できなくなった時俺はある行動に出る。
「そうだ、俺はプロデューサーなんだ。ファンが求める作品(お金になる)をこれからも作り続けていかなきゃならないんだからー」
と、近くの廃ビルの屋上に行き心に鎧を纏い自己弁護をし、沈みゆく夕日を見つめながら大声で叫ぶ。
ひとしきり叫んだら、スッキリするので、その間に酒飲んで寝て自分をごまかす。
そんな、日々を過ごしている。
だが、今日は少し違う日になりそうだ。
「プロデューサー君! 銀座のキャバクラでドンペリのドンペリ割り飲んで姉ちゃんの尻撫でに行こうぜ」
布団に入って寝ようとしたらご機嫌な社長の声が聞こえてきたからだ。
『 この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません・・・しかし、●×年後にはさだかではない』
駄目な話を作ろうとがんばったら、こんなのができました。
売れるアニメ理論とか、声優さん関係のネタは捏造です。
オチに引っ張っていくために、とんでもない理由を連発しなくてはいけないので現実にはありえない
ようなネタを作るのに苦労しました。