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リナリア   作者: チカ
1/3

『モモ』



奇妙な少女だった。




百瀬萌香というそのひとは、稀有な存在だった。

いるだけで空気を変えるのに、本人はそれを嫌い、あまりひととかかわらない。

みんながわいわいと楽しげに騒ぐのを否定するでもなく、かといって直視することはなく、ただ音だけを聞くような。

長く黒々と艶やかな黒髪をそぉっと垂らして、真っ白で柔い線の鼻を下に向け、大きな潤いのある目を囲む睫毛ごと、伏して。

きゅう、と引き結ばれた唇だけが紅い。

まごうことなきその美しさは毒であった。

彼女を憎むものはいても、ほんとうの意味で嫌うものはいなかった。

すべての感情をねじ伏せてしまうような、無機質で儚い彼女の存在の前では、誰もが息を飲むだけだったから。


『モモ』

彼女はそう呼ばれ、籠の中に閉じ込められた小鳥のように、みなに遠巻きに愛でられ、憎まれていた。


わたしはどうでもよかった。

いずれ別れ忘れ消えるそんな美少女の存在も、それを憎み恐れ愛し羨む多くの存在も。

しかしわたしはこの考えを撤回する。

籠の中を覗き込んで手を伸ばして触れて見たら、彼女はただの、かわいそうな少女だった。




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