表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンドラ王女と死神王子の呪われた婚姻  作者: あまNatu


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/49

最低最悪な話題

 ハデスらと楽しい昼食を終えたパンドラは、廷臣たちとの会議に出ていた。

 いまだあの大震災による被害が出ている場所も多く、支援の手は足りていない。

 国を安定させるためにも、今は急ぎ動かなくてはならないだろう。

 しかし――。


「いい加減備蓄も底をつきます! これ以上の支援は国を滅ぼしますよ!?」


「ですが未だ苦しんでいる民がいるのです」


「女王陛下は小さな村のために餓死しろと、我々や他の国民に言うつもりですか!?」


「そんなつもりは――!」


 自分にできることをしようと、ちゃんと意見を言おうと決めてやってきたのに。

 気づくとこうして、無知であることを指摘されてしまう。

 もちろん勉強はしている。

 国を運営するためには、綺麗事だけで済まないこともわかっている。

 それでも自国の民を見捨てることなんて、パンドラにはできないのだ。

 だからこそギリギリまで手助けしたい。

 そんな思いを口にすれば、彼らはこぞって否定した。


「女王陛下はわかっていらっしゃられないのだ。国を運営すると言うのがどれほど大変なのかを」


「綺麗事を口にするだけなら誰だってできます。もっと現実をごらんください」


「――っ」


 ここ最近は常にこのやりとりをされて、パンドラの意見なんて聞いてもらえない。

 それがわかっているからか、最近は常に下を向いて黙っていた。

 しかしそれではダメだ。

 パンドラがこの国の王なのだから、ちゃんとしなくては。


「私はっ!」


 そのための対応策も考えてきた。

 ハデスとも一緒に考えて、ひとまずマグリアに支援を仰ぐ。

 メイア国の作物は妖精がいれば必ず豊かになる。

 パンドラがいるかぎり、妖精たちは力を貸してくれるはずだ。

 なので必ず、倍の量を返すことを約束して援助を求める。

 今は貯蓄をはたいてでも、国民を救いたい。

 そう口にしようとしたパンドラの隣で、一人の初老の男性が立ち上がった。

 古くからメイア国の中枢を支配していおり、パンドラが女王になるのを最後まで反対していたアース卿と呼ばれる貴族だ。

 彼はそのでっぷりとした腹を揺らしつつ、パンドラへと笑みを浮かべた。


「女王陛下はそのように難しいことを悩まなくてもよいのです」


「――それはどういう意味ですか?」


 パンドラでは力不足だとそう言いたいのか。

 眉間に皺を寄せたパンドラに、アースは慌てて首を振った。


「誤解なさいますな。女王陛下は今はまだ学ばれている最中でしょう? 今は我々に任せて、女王陛下は健やかにお過ごしください」


「ですが……それでは……っ」


 お飾りの女王となってしまう。

 それはパンドラの望む姿ではない。

 やはり意見を発言したほうがよいと口を開きかけたパンドラより早く、アースが部屋にいるものたちに向かって告げた。


「女王陛下には女王陛下にしかできないことがあるではないですか。なあ、みなのもの」


「――おお、そうだそうだ!」


「女王陛下には速やかに行動に移していただきたい」


 なんの話だ?

 とパンドラは眉間に皺を寄せる。

 彼らの言いたいことがわからず黙っていると、アースがにやりと口角を上げた。


「女王陛下には速やかにお子を成していただかなくては」


「――」


 パンドラは思わず固まってしまった。

 ニタニタと卑下た笑みを浮かべるアースに、同調するように周りのものたちも頷き始める。


「そうですそうです。女王陛下にはまず、後継者を産んでいただかなくては。もちろん王子を、です。二代に渡って女王となると、さすがに近隣諸国に示しがつきませんし……ねぇ?」


「そうですなぁ。女王陛下、王配殿とは仲睦まじくしておりますかな?」


 パンドラは自身の背筋がぶるりと震えたのがわかった。

 二の腕には鳥肌が立ち、冷や汗が額を伝う。


「いやはや、仲睦まじくともそう簡単な話でもないでしょう?」


「確かにそうですな。相性というものもありますし」


 この人たちは、なにを当たり前のことのように語らい合っているのだろうか?

 全くの他人である彼らが、どうしてそんな話をパンドラにしてくる?


「そこで女王陛下。我々から提案があるのです」


 アースは人当たりのいい笑みを浮かべると、両手を揉み合わせる。


「この際、愛人を娶ってはいかがでしょうか? 各国から見目よし、家柄よしの選りすぐりの美男子を集めておりますので、すぐにでも王宮にお届けできます」


「おお! それはいい。女王陛下のお眼鏡に叶う男子がおりましたら、ぜひおそばに侍らせていただいて――」


「――もう結構ですっ!」


 パンドラはテーブルを叩きながら立ち上がった。

 なんて失礼な人たちなのだろうか。

 この人たちはパンドラのことを女王としてではなく、繋ぎとしか見ていないのだ。

 次の王子を産むための存在としか、思っていないのがよくわかった。

 悔しさのあまり目に涙を浮かべていると、そんなパンドラにアースは大きくため息をつく。


「女王陛下。王配殿と初夜すら済ませていないでしょう? それではいけません。あなたには若いうちにお子を――」


「――私はっ!」


 もう聞きたくないと声を荒げようとした時だ。

 少し離れたところにいた男性が、そっと声を発した。


「アース卿、女王陛下に失礼ですよ。……女王陛下はこの国の現状をうれいてくださっているのです。それなのに話題をすり替えるなんて……無礼を知ってください」


「――シリウス。お前こそ知った口を開くな、若造が」


 アースの眉間に深い皺がよる。

 そんなアースを横目に、パンドラは声を発した男性、シリウス・スカーレットを視界に入れた。

 その名のとおり美しい赤い髪と目を持った、美しい男性だ。

 彼はアースから言葉に、静かに肩をすくめた。


「事実を申したまでです。その若輩者に無礼を諭されるなんて、恥ずかしいと思ってください」


「貴様っ!」


「聞こえませんでしたか? 恥を知れ、と、言ったんですよ」


 シリウスの射抜くような視線がアースに刺さる。

 その強い瞳に気押されたのか、アースはグッと押し黙るとしばしの沈黙ののちに椅子へと座った。


「ふんっ! わしほどこの国を思っているものはいないというのに!」


「女王陛下が一番ですよ。……誰よりもこの国を思ってくださっている。まさに妖精女王だ」


 そう言って優しい面差しを向けてくるシリウスに、パンドラは小さく頭を下げた。

 ひとまず彼のおかげで、このおかしな会話は一旦終わったらしい。

 ならさっさと次の議題に移ろう。

 こんな話、もう聞きたくはない。


「次の議題は――」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ