第60話「一時疎遠」
藤原の能力の取得は速やかに行われた。
修哉が前からの会敵を警戒し、藤原家の護衛は背後で見守る。
しばらく歩いて見つけたスライムを修哉が誘導し、藤原がそれをメイスで叩いて倒した。
「...どう?何か分かった?」
ステータスを開いて自分の能力を確認している藤原にそう問いかける。
「....いえ、あまり手掛かりになるようなことはありませんでした」
が、残念ながら特に思い出すようなことはないようだった。
修哉は少し残念ではあったが、そもそも自分以外全員記憶がなくなっているという状況なのに1人だけ記憶を取り戻すなんて都合が良すぎるのだ。
ましてや普段から運の悪い自分にそんな良いことが起きるわけもない。
藤原の記憶が戻ることに期待するのは諦めておとなしく1人で攻略しきろう。
そう考えた修哉はダンジョンから出てきた後、再びリムジンに乗って自宅に向かおうとする藤原に対して攻略の約束を取り付けるなどといった事はしなかった。
藤原と別れた修哉はそのまま家に帰ったのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
藤原邸の一室。
その中で藤原家の直系の息女である藤原陽菜は先程ダンジョンでモンスターを倒すことによって獲得した自分の能力を見ていた。
「これが....私の能力」
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『共愛』
愛するものと同じ場所でいられるように。
所有者の好感度が最も高い相手に対してバフをかける。
バフの強さは好感度の高さによって変化する。
さらにその相手と「両想い」が成立した場合、
ステータスの共有が可能になる。
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陽菜はこの能力を見た瞬間、彼には絶対言えないと思った。
(手伝ってくれたのはありがたいですけど...こんなもののことは絶対に言えません)
彼は自分について何か知っているようだった。
それでつい相談してしまったが、彼は快く受けてくれた。
陽菜は彼の提案にのって、この能力を得た。
結局、違和感が解消されることはなかった。
しかしこの能力を見て少し分かったことがある。
「私に足りないのは愛する人...?この喪失感はそれを失ったからなのですか?」
陽菜は考え込む。
が、結局のところ記憶がないので何もわからない。
「....そういえば、彼と次のことについて何も言わず帰ってしまいました」
考えているとそれとは別のことを思い出す。
「...彼とは一度距離を置きましょうか。もしもこの能力がバレてしまったら顔を合わせられません」
陽菜は彼とパーティーを組むなどといったことはやめておくことにした。
これから少しの間、藤原と修哉の距離は再び離れる。
....しかし、2人が完全な再会をするときは近い。
何度も匂わせのようなものをしてすいません。もう少しで一気に話が進む予定です。
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