第58話「不完全な再会」
今回は面識のないはずの藤原が訪ねてきたことに混乱していたが、そのままにしておくのも悪いので家に入れた。
「と、とりあえずここに座って」
「はい...」
藤原を居間の椅子に座らせ、自分はその向かい側の席に座る。
「えぇと....藤原、陽菜さんだよね?入学式で代表の挨拶をしてた」
修哉は藤原に対してあくまで初対面といった感じで話すことにした。
「はい...、あなたは赤城さんですよね?」
「そうですけど、俺と貴方って何か面識ありましたっけ?どうかしたんですか?」
修哉がそう言うと突然藤原はポロポロと涙をこぼし始めた。
「だ、大丈夫!?」
慌ててそう言うと藤原は涙を流しながらポツポツと話し始めた。
「...2年前ぐらいからずっとおかしいんです。何か大切なものがあったはずなのにそれが失われてしまった、そんな喪失感。それが続いているんです」
「.....」
「入学式の時にあなたの顔を見てからずっと引っかかっていたんです。あなたのことを知ってるはずなのに知らない.....それで悩んでた時にあなたを見かけて、相談してみようと思って少しついてきてしまいました..」
「....なるほど」
修哉は『回帰』によって全てが戻されたはずだったのに完全に失っていない藤原に驚いた。
家族も友人も教師も誰も何も覚えていなかった。
だが、藤原は「何かがおかしい」という事実に気がついている。
修哉のように能力の範囲外だったならまだしも藤原は能力の影響を受けている。
それでも藤原は全てを忘れなかった。
そのことに修哉は驚き、そして嬉しくもあった。
「藤原さん、あなたの違和感を俺は知っている。けれどもどうやったらそれを解消できるかはわからない、でも解消できる可能性は十分にある。どうか俺にそれを手伝わせてくれないか?」
彼女なら言っても大丈夫、そう感じた修哉は真実を伝えて藤原がどうにか記憶を戻せるように手伝うことにした。
「....本当ですか?」
「あぁ、君のそれは俺が予想していなかったことだけども....とても嬉しいことでもある」
「....ありがとうございます、これからしばらくよろしくお願いします。赤城さん」
「よろしく、藤原さん」
こうして修哉と藤原の2人の新たな関係が始まった。
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