表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/55

旅の始まり編 16.「喋る声が気に入らなかったんです。うるさくて」

 森を抜けた先、空はすでに夕焼けに染まり始めていた。

 遠くで鳥が鳴き、空気の温度が静かに落ちていく。


 「今日は、森の外で野営ですね」


 リリィが肩にかけた袋を下ろし、見晴らしの良い岩場に腰を下ろす。


 「荷は十分か?」


 「はい。干し肉、硬パン、薬草、盗品と思われる銀貨が数枚。あと、ちょっといい匂いの香油。……これは使い道なさそうですね」


 「燃やせ。煙で虫が寄らん」


 「なるほど、騎士様って生活力高いんですね」


 ガルドは返事をせず、焚き火の準備を始める。リリィは黙って、その横で小枝を集めて火打石を取り出した。


 火が上がってしばらく――

 遠くの岩陰から、獣とは違う重い足音が近づいてきた。


 「……人の足音。数人、重量あり」


 「追ってきたか?」


 「いえ……足取りが雑すぎます。巡回でもないし、あの様子だと――」


 リリィの言葉が終わる前に、三人の影が岩場の反対側に現れた。


 「……あ? なんだお前ら。旅人か?」


 陽に焼けた顔に無精髭、手には粗いつくりの鉄槍。

 剣と盾を構えた軽装の男たちは、一見すると警備兵にも見えたが、その目は商人の獲物を探す獣のようにぎらついていた。


 「へぇ……なかなかいい荷持ってんな。しかも……女連れか」


 「旅の護衛じゃなきゃ、奴隷か何かだろ。ちょっと俺たちと話してもらおうか?」


 言葉の端に毒が混じる。

 ガルドは焚き火越しに立ち上がり、静かに剣の柄へ手をかける。


 「失せろ。話すことはない」


 「はは、威勢がいいな。地面に這いつくばったらどんな言葉を吐くのかな?」


 「なぁお頭……、噂聞いたことねえか? “黒鉄の処刑人”と“白髪の魔術師“がここら辺に居たって」


 近くの仲間の男が言った。


 「“黒鉄の騎士”と“白髪の魔術師”。……お前ら、まさか――」


 「馬鹿、それはもっと東の話だろ。どうせ似たような騎士崩れとガキだ」


 「でもよ、この雰囲気……なんか、ちょっと――」


 その時だった。

 リリィが焚き火の炎の先に立ち、ゆっくりと詠唱を口にする。


 「≪喉を奪え≫」


 突風のような魔力が走り、三人の喉元に鋭い痛みが走った。


 「が……っ!?」


 「喋る声が気に入らなかったんです。うるさくて」


 次の瞬間、ガルドが飛び出す。

 ツバイヘンダーの斬撃が地面ごと一人を叩き潰した。


 「二手に割れろ!」


 敵の一人が叫ぶ。リリィの剣が宙を裂き、すれ違いざまに敵の膝を断ち切る。


 「お前ぇ!……くぅ!」


 残る男が振り向きざまに槍を構えた瞬間、黒鉄のショートソードがその喉を貫いた。


 息を吐いたふたりは、敵の物資を漁り、燃え残った焚き火に敵の死体から奪った衣服を投げ込む。


 「――荷物は、大したものじゃありませんね。槍、腐った干し肉、酒……あとは銀貨と、なんか壊れた護符みたいな……」


 「護符?」


 「どこかの印がありますね。……どこかの組織だった野党ですかね?」


 「……練度は低そうだ。あいつらの動きは雑だった」


 「私たちの噂とかどうするんですか、? 賞金首になっているかも?」


 「向かってくるなら倒す、そうでなければ気にするな」


 夜は、再び静寂を取り戻していた。

 焚き火の炎に照らされながら、白髪の少女と黒鎧の男は、次の戦いに備えて目を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ