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雛祭り、その他

〈春霧を一瞬二瞬見たり朝 涙次〉



【ⅰ】


 一味の女性メンバー(君繪・由香梨・悦美・遷姫・でゞこ)の為に、方南町のマンションから、カンテラ事務所に、じろさんが雛飾りを持ち込んだ。君繪は雛を怖がつて泣いてゐる。「どーれよしよし、これはお雛様と云つて、女の子の節句に飾り付ける物なんだよー」と、じろさんがあやしても、君繪は泣き止まない。「これは、嫌はれちやつたと見ていゝのかな?」悦「よく見てみると、お雛様つて不気味だものね」じ「きみまでさう云ふのか」悦「だつて雛祭りの日まで押し入れに仕舞つて置くものでしよ? 黴臭くて何だか嫌だわ」じろさん折角の心配りが無殘に拒否されて、膨れつ面である。


「さう云へばきみも、子供の頃雛飾りを見て泣いてゐたなー」「だつて日頃見慣れないものが、居間にでんと置かれると、畸異な感じがするものよ」「これは岩槻の職人に頼んで、特別あしらへした逸品なんだがな」「子供には分からないわ、そんな事云つたつて」


 と、云ふ譯で、雛飾りはまた方南町の押し入れに仕舞はれたのだつた。



【ⅱ】


 カンテラはそんな家族間の對話をよそに、だうしたら傳・鉄燦の短刀を活かせるか、思案中であつた。「まさかニ天一流もあるまい。俺には二刀流は無理だな」とかぶつぶつ云ひつゝ、稽古に励んでゐる。彼には雛祭りのハレの日もなかつた。

 そしてよもや「傍観者null」が、雛壇を利用してカンテラ一味に干渉してくる、なんて事も、思ひも寄らなかつたのである。


 nullは、通稱「セールスマン」と云ふ【魔】に命じ、カンテラ事務所の内部を探らうとしてゐた。「セールスマン」は、金尾と同じく、ぱりつとしたスーツにネクタイ姿。いつもアタッシュケースを片手に、【魔】の息がかゝつたものを賣りつける事で、人心を攫ふ【魔】なのである。



【ⅲ】


「お客様には、こんなもの、如何でせう」さうとは知らず、何やらじろさん、彼と事務所玄関で立ち話。「新感覺のお雛様。お雛様、お内裏様とも、テレビでお馴染みの女優・俳優の顔を模してをります」

(そんなものがウケるのか。輕薄な世の中になつたものだ)と思ひつゝも、じろさんつひつひ、長話をしてしまふ。結局、その「セールス」は断つたが、nullは手應へを感じてゐた。事務所玄関まで來たのだから、もう一押しで、「相談室」まで辿り着く。「セールスマン」は、數尠ない、結界をものともせぬ、【魔】であつた。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈雛の日に魔が訪れるなどゝ云ふ事を許して男は哀れ 平手みき〉



【ⅳ】


 次に「セールスマン」は、「相談室」に新しいソファを納入せんと、じろさんに話を持ち掛けた。「お宅様も云つてみれば、客商賣。古びたソファでは、だうかと」じろさん、結界が張られて安全な事務所内、と云ふのに、慣れ切つてゐて、彼らしくもなく油断してゐたのである。

 nullは、そこで「セールスマン」に自爆させやうと企んでゐたのである。勿論、成功した暁には、蘇生、及び永遠の生、を彼には約束してゐた。


 じろさん、ちらとだけなら、と、「相談室」のドアを開け、中を「セールスマン」に見せた。...と、テオ、「報知器が鳴つてゐます。じろさん、その男、危険物を持ち込んでゐますよ!」じ「なに!?」

 慌てゝ遁走しやうとする「セールスマン」。じろさん、足払ひを飛ばして、彼を轉ばせた。



【ⅴ】


「どれどれ、丁度良い練習台だ」と、ぬつと現れたカンテラ。短刀、脇差しを使つて、「セールスマン」をずぶり。「狹い室内での仕事に役立ちさうだ」-「セールスマン」作戦も失敗のnull。だが、誰もカネを払ふ者のゐない、仕事(ヤマ)であつた。

「まあいゝさ。稽古の一環だ」とカンテラ。


 じろさん、頭をぽりぽり。「カンさん濟まん。俺とした事が」カ「まあ間違ひは誰にでもあるよ。カヴァーし合つてやつていくのが、仲間ぢやないか」じろさん、カンテラの口から「仲間」なんて言葉が出てくるとは思はなんだ、で、少しばかり驚いた。-子が出來ると、人間(?)かうも變はるものか!



【ⅵ】


 null、四敗め。彼がどんなに地團太を踏んでも、負けは負け。「ぐぬゝ、猫め~」

 テオの危険物探知機の勝利、だつたと、今回はして置かう。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈捨雛や斯くも重くちや捨てられぬ 涙次〉



 お仕舞ひ。nullはお尻に火が點いたやうですね~。次回が樂しみだ。これ、作者の獨り言。ぢやまたー。


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