二十四話、最後に
一章の最終話です
愛が日本にいるのもあと数日という頃。
久々に、と町の散策を始めていた。
「あ、愛さん戻ってきたんですねー」
神社で働いているパートの春風、彼女は愛が海外に行く前にすでに顔合わせをしていた……というより、数年前まではずっとお祭りで巫女の舞をしていたのは愛なので、町の人間はほぼほぼ愛のことを知っている。
「久しぶりだね春風ちゃん。
うーん、いいおっぱい。
旦那さんがいなければ手を出していた」
春風のおっぱいへ手を伸ばしながら、挨拶をする。
「愛ちゃん、従業員へのセクハラはダメ」
「そうですよ、これは彼のものなのでっ」
そこへ巫女服の雫の叱責が入り、春風も胸を腕でガードする。
「まったく……じゃあ私、向こうでらいかと見てくるので、くれぐれもセクハラはダメですよ」
「まかせろ」
「愛ちゃんの任せろは微妙に信用できない……」
ジト目で言われるので、仕方ないと苦笑いして、セクハラは諦める。
愛がそんな風にしていると、春風がふと近寄って、そわそわしながら声をかけてきた。
「愛さん……もしかしてなんですけど、来夏さん、雫ちゃん…一線超えました?」
「私が留守の間にいつの間にか…子供の成長は早いねー」
そういうと赤面して、きゃーと、嬉しそうに悲鳴を上げて体をくねらせる。
やっぱり女の子は、こういう色恋の話題が好きなんだなぁ、なんてことを思いながら愛はまた散歩を再開した。
◆◆
愛が商店街のほうへ向かうと、雑貨屋があり、そこに彼女も見知った顔があった。
「ありゃ、愛。戻ってきたんだ」
「そりゃーね、かわいい子供たちがやばいって聞いたもんで」
雑貨屋を営む、狭間ケイに会う。
高校からの仲で、今でもたまに連絡を取る間柄だ。
「でも本当に凄いね。
今回も––––––二人が独力で解決する未来が見えてたんだろ?」
「そうだねー。私の介入した未来も見たんだけど、二人に任せた未来のほうが良さげだったんだよにゃー」
二人が解決できるところまでは二人に任せた。
こうしてみると愛は徹のことを馬鹿にできないな、なんて苦笑する。
「ほうほう、ということは?」
「喜べ、今回で神坂家は優秀な婿を手に入れたぞ。
今までは92パーセントだったのが、今回で99になった」
これでほぼ、来夏が婿入りすることが確実だと喜ぶ。
来夏の人柄は知っているし、二人が結婚した未来も、愛は観測していた。
なかなかに覚悟が決まっていて、雫への執着でどんな絶望だろうがねじ伏せるという未来が見えている、ゆえにそれは間違いなく吉報だった。
「はー、相変わらず怖いね。
幼馴染じゃなければ怖すぎて逃げ出してるよ」
「学生時代、屑男に騙されそうになってるの見抜いたの誰だっけー?」
そんな昔話をしてから、愛はまた歩き出した。
◆◆◆
「おや、神主様。戻っておりましたか」
「あーー、愛ちゃんだあーーー」
「お、愛さん。いい野菜が入ったんで見てってよぉ」
歩けば声をかけられる、それらに会釈したり、雑談したり、それを繰り返している間に、いつのまにか夕日が背を照らしていた。
「そろそろ、帰ろっかな」
◆◆
家についてから、居間のほうへ向かうと、来夏と雫が何か真剣そうに机へ向かっているのが見えた。
「おりゃーー、二人とも何してんだーー」
仲間外れは許さん、と言わんばかりの自由奔放さで二人に近づく。
「おわっ」
「愛ちゃんおかえりー」
少し驚く来夏に、もう慣れ切っている雫。
少ししたら来夏も慣れるのだろうと愛は思いながら、二人の机を見た。
「おー、勉強かー」
「うん、夏休み中、全然やれてなかったから。
最近忙しかったし…特待生だしね」
そう、雫は特待生なのだ。
勉強できる良い子。
「お金ならあるから気にしなくていいのにな。まったくもう」
「私の気分なの。良家の令嬢だしね、一応」
良家、そう神坂家は神社の運営と、その近隣の土地の管理……と、表面だけ見れば良家のようなことをしている。
というか、本当に歴史ある家なのだ。
平民思想で平和と節約を愛するようになっているが、雫、貴族なのである。
「いい、い一応!?」
「雫、一応は失礼だろ」
「そうそう、ライカはいいことを言う」
貴族制度があった時代から続く家なので、一応ではなく正真正銘良家であった。
「……まあ、当主がこんなだからそういいたくなるのも分かるけど」
「ライカ????」
そして裏切りに会う愛。
「けど、二人とも頑張ってるなー」
そんな二人の頑張りを前に、親としては何かねぎらいをかけてやりたくなる…と、愛は思い、決心した。
「よし」
その声に、どうしたんだろうと首をかしげる二人。
そして愛は親としての責務を果たすべく、立ち上がった。
「愛ちゃん特製愛情たっぷりロイヤルミルクティーをいれてやんよぉっ!」
「「それだけはやめてくれ」」
二人が即答するもすでに遅く、愛は言葉と同時に台所へ全力疾走を始めていた。
そして刹那の前にミキサーを取り出し、コンセントを入れたところを見て、来夏たちは絶望し膝から崩れ落ちた。
「はあ、はあ…あの栄養をとりあえず詰め込めばいいというコンセプトの飲み物はもう一回飲むことになるのか…?」
「う、ぅう、ハイポーションは嫌…ハイポーションだけは…あの液状ドメスティックバイオレンスだけは…」
子供たちは大げさだ…人のロイヤルミルクティーを飲める暴力だとちょっとした精子だの言って飲みたがらない。
なので何が何でも飲ませよう、そう決心して愛は冷蔵庫を開けた。
「あれ…バルサミコ酢がない…ごめん、二人とも。ロイヤルミルクティーつくれないや。
鈴ちゃんと遊んでるときにまーちゃんところで買っておけばよかった」
だから作れないの一言で心底幸せそうな顔を浮かべるんじゃない親不孝ども。と、ジト目をして二人を見る。
「……」
だが、こんなことで、いつもの調子を取り戻す二人を見て、愛は……ふと、聞きたくなった。
「ねえねえ」
いつも聞く言葉、同じ言葉が返ってくると分かっていても、つい聞きたくなってしまう。
「二人とも、この夏はどうだった」
「「?」」
愛の問いかけに、少しだけきょとんとして……けれど、ややあって。
「「––––––楽しかった」」
そう、微笑んでくれる、そんなかわいい子供たちがいるから
「…そっか」
二人の笑顔を見て、そっと、愛も、うれしくなって微笑んでしまった。
一章ここでおわりーーーー!! 人気出れば、続きかきます!!!
二章になったら異世界からの来訪者とか含めて書きてえなあ




