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主人公は楽しく遊んだ

「富麗さん、俺らと一緒に遊ばない?それとも、他に予定ある?」


「博人さんからお誘いいただけるなんて…!夕方5時半まででよろしければ空いていますわ」


(分かってるな、江西)


(うむ、仔細承知じゃ)


「順番に…行きたいとこ…回る…」


「最初は俺からで良いか?」


「ええ。博人さんの行きたい場所、気になりますわ」


「そんな期待されてもただのゲーセンだから困るんだけどな」


たまに行きたくなる存在、それがゲーセンだ。あのビカビカ光る筐体とクソうるせぇ空間が無性に恋しくなるんだよな。メダルゲームの可愛い感じの競馬のやつと原始人が狩りするやつが俺は好き。


「ゲームセンター…行ったことがありませんわ」


「確か、三階。ワタシ…クレーンゲームやりたい…」


「なんか狙いのやつあんの?」


「ううん…お菓子のやつ。取るの得意…」


「マジか。俺クレーンゲーム成功した試しがねぇんだけど」


「富麗先輩も…クレーンゲームやろ…?」


「ええ、ご教授のほど、よろしくお願いいたしますわ」


てなわけで先にクレーンゲームコーナーに来た。メダルはコツコツ預けたやつが二百枚はあるから、新しく買う必要はないんだよな。五百円分くらいならやっても良いかもしれない。ケチとか言うな。


「ヒロトも…コツ、教えてあげる…」


江西は箱詰めされたチョコ菓子に目を付けたようだ。金を入れるとカシャンと落下していく軽い音が鳴る。


「これは橋渡し。アームは弱いやつだから、直接持ち上げるのは無理。奥の方を左右に振って…焦らない、楯向きにする。この後も…変わらない。ん、おしまい」


「それができたら苦労しねぇんだよな」


「そうなのですか?見た限り簡単そうですが…」


四百円くらいで無事戦利品をゲットした江西を見て、富麗さんは感覚が麻痺したようだ。


「やってみると分かるぞ」


「挑戦してみますわ…!小銭を」


ずっと気配を消してた執事がすっと無言で百円玉を手渡す。


「前後の空間把握が重要そうでしたわね。んん…あら…?」


一度アームが引っ掛かりはしたものの、あえなく外れて元の位置に戻った。マァ初心者はそんなもんだよな。むしろ富麗さんまで上手かったら悲しい気持ちになるところだった。


「も、もう一度…!」


「引き際見誤ると金溶けるから気を付けろよ」


「ん…台を変えたり、店員さん呼んでも、良い…」


「なるほど…奥が深いですわね。筐体を買って練習しますわ!」


「待て待て待て待て」


富豪ムーブは説得して止めて、その後は色んな筐体を巡って楽しんだ。なんだかんだ富麗さんは上達していって、見事でっけぇポテチの筒をゲットしてた。俺は五百円が虚空に消えた。悲しい気持ちになった。


コインゲームにまで金を使わせるのは忍びないから、俺の貯金から二十枚ずつ渡した。江西は二秒で溶かしてたが、その一方で富麗さんは持ち前の豪運で最終的に約二百枚まで増やしてくれた。十倍じゃねぇか。   


「ジャックポットは激アツだったな」


「あの演出、非常に心躍りましたわ。博人さんが熱中するのも頷けます…!お次は江西さんの行きたいところですね。そちらも楽しみですわ」


「ん、ワタシの行きたいところは、フードコート…」


「夕飯には早くねぇか?」


「でもお腹空いた」


(お腹空いたのじゃ)


分かったから脳に直接ハンバーガーとかラーメンとかのイメージを送り付けてくるのやめろ。全部食いたくなってくるだろ。


「フードコートも初?」


「ここのフードコートに行ったことはありませんが、チェーン店はよく利用しますわ」


「そうなん!?」


「意外…」


「もちろん、良い物を知ってはいますが、味覚の好みは広くってよ?クリスマスに飲むシャンメリーが好きですの。好きなアニメのパッケージだとさらに嬉しくなりますわ」


え、好きになっちゃう…


(ちょろいのう)


(庶民派お嬢様キャラ大好き)


とはいえ自分で注文するのは初めてだったらしく、並んでいる間にメニューを決めかねていたり、呼び出しブザーに肩を跳ねさせていたりする新鮮な姿が見れた。あと富麗さんの高そうなお召し物にカレーうどんの汁が跳ねないか江西と一緒にハラハラしたり、クレープとハンバーガーを一口交換する俺と江西を羨ましがった富麗さんが人生初一口交換に挑戦したり…。まぁとにかく楽しかったな。良い時間なので解散し、今日は充実した休暇だったと一日が終わる――


「で、服は?」


「あ」


忘れてた。

博人、江西、平等院はバイトやってそう

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