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主人公は不審者が怖い

俺は普通に学生なので授業はマジメに受ける。今日は6時間目が体育だった。我が校ではジャージ下校が許可されているため、ジャージ姿のクラスメイトがわらわらと教室から出ていってる。かくいう俺もジャージだけどな。今日は部活もないし、早く帰ってゲームするんだ。ストーリーも佳境で闇落ちしたヒロインを主人公がどう救うかが気になるところ…


──ハッ、気配!


「…」


江西があらわれた!


戦う

道具

逃げる←


逃げる一択!!!!ストーカー疑惑の女に近付く趣味はねぇぜ!!!あばよ!!!!!50メートル6秒の底力を見せてやる!!!!


さて、俺はなぜこんな情けない全力逃走を見せているのか。理由は簡単。あいつが怖いから。


ヤツの名は江西弥香。6月という微妙な時期に転校してきた謎の女。正体予想の本命はストーカー、対抗は中二病、大穴は宇宙人だ。


俺が一人でいると決まってじっと見つめてくるんだよな。だから正直めちゃくちゃ怖い。


マァ学校外で話し掛けてきたことはないし、そこまで害はない。逃げる内にいつもの下校ルートからは外れたが、そこまで遠いというわけでもない。今からでもゲームの時間は確保でき──


「はぁ…疲れた…」


ヒッッ、なぜここに!?


「全く、あちこちに行きよって、位置を確認するのは骨が折れたわ」


どこでバレた!?俺の逃走ルートは完璧だったはず…!?曲がり角を多用し、人通りの多いところを選び、果ては交番の前まで通ったんだぞ!?あんな速度で人を追い掛ける人間がいれば不審がられるに決まって──


「これ、話を聞かんか。お主に言いたいことがあるのじゃ」


──…あ?てか…


「めっちゃ喋るな??」


「ようやく気付いたか。これが鈍感系主人公というヤツかのう?」


「その上口調違くない??」


無口ミステリアス転校生設定はどこ行ったんだ。


「そんな設定元々ないわ。"江西弥香"は少々口下手なだけの普通の高校生じゃ。お主以外にはとっくに打ち解けておる」


「俺だけハブられた…?」


「違うわ!一人のところを見計らって話し掛けようとしたのに、その度お主が逃げたせいじゃろうが!!」


「あぁ…なんかすまん」


だって怖かったんだもん…


「そのせいで()()()()を伝えるのも遅れてしもうたわ」


なんか言いたいことがあったのか?そういや、一人のところを見計らってとか言ってたな…誰か人がいると言いにくいことか…?まさか…っ!


「お主の事情は理解しておるが、恋の告白ではないから安心せい」


良かったぁ…


「ふふ、ようやく言えるのう。聞いて驚け!わしこそ、糸鴛鴦(いとをし)神社で奉られし縁結びの神じゃ!」


ド近所じゃねぇか。


「ちっちゃい頃よくつららと遊んでたわ」


「おお、それは覚えておるのか。では、わしともよく遊んでいたのは覚えておるか?」


「お前と?」


それは…ないんじゃねぇかなぁ。ちっちゃい頃なんてつららの独占欲&ワガママが一番凄かった時代だし、俺が他の人と遊ぶのなんて許さねぇと思うが。


「あの頃は信仰が集まらず存在も希薄じゃったからのう…お主以外には見えておらんかった。境内から離れればお主にも忘れられるほどじゃった。信仰を取り戻した今ならば、と思うたが…やはりか…」


「な、なんかごめん…」


「ふふ、謝らずとも良い。お主は優しい子じゃのう」


よしよし、と穏やかに頭を撫でられて開きそうになった扉を全力で閉める。あっっっぶねぇ。


「てか、さっきは流しちゃったけど神ってなんだよ」


「うむ、まさかそこを流されるとは思っておらなんだ。実は結構動揺してた」


なんかすまん、ツッコミ間違えて。


「こほん、マァ、主人公にヒロインまでおるのじゃ。神様がいたっておかしくなかろ?というより、大穴で宇宙人とまで予想しておったのに、神には思い至らなかったのか?」


そこまでバレてんのかよ。


「わしは神じゃ。心を読むくらい容易いわ」


性癖の扉を開きかけたのもバレてる…?


「もう一度撫でてやっても良いぞ?」


バレてる…


「それはともかくとして、最近ようやっと信者や無垢な子供以外にも姿を表せるほど信仰を得られたのじゃ。恩返しのためにもお主に近付きたくてのう。手始めに同じ高校に入学してみたわけじゃ」


「何で俺の高校知って…あー、いや、心読めるんだっけか」


「それもあるがの。お主の幼き頃よりずっと見守っておったから、という理由の方が大きい。お主とわしの縁は固く、いつどこにいても居場所が分かるのじゃ」


やっぱストーカーじゃねぇか。


「よ、邪なことには使っとらんわ!わし自身に誓っても良い!」


神様って神に誓うとき自分に誓うんだな。


「なるべく高校生に馴染もうと努力したんじゃぞ?マァ、口調だけはどうにもならんでのう。口数を減らすことでなんとかしたのじゃ」


「富麗さんがお嬢様言葉なくらいだし、どっかの方言か?くらいで済むんじゃね?」


「あぁ…お主はまだ知らんのか。いや、もしや最後までお主()知ることはないのかのう」


意味深なこと言うの止めてよ~~~~~。


「ふふ、良いことを教えてやろう。お主は恋に悩んでおるようじゃが…お主を結ぶ運命の赤い糸は一本だけじゃ」


「…!」


「わしはあくまで縁結びの神。すでにある縁をほどくことも切ることも、ましてや増やすこともできぬ」


「それって…」



「そう、お主の赤い糸は一本だけ。ゆめゆめ、忘れんようにな」

博人の高校は私立

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