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主人公は小市民でありたい

「ごきげんよう、博人さん」


「おはよう、富麗さん。何事?」


富麗(ふれい)才与(さよ)さん。二年の先輩なので階が違うはずだが、なぜか俺の教室の前に執事を侍らせて立っている。立ち姿も麗しいな…


「デートのお誘いに参りましたわ」


隣のつららが威嚇を始めた。止めなさい、先輩に対して。


「博人さんは本が好きと伺いましたの」


お嬢様の想像する本とラノベが一緒かは分からんが合ってる。


「ですので、今日は図書館で好きな本について語り合いませんこと?」


つまり図書館デート?富麗さんにしては常識的だな…


「でも図書館だと駄弁ったりできなくない?」


「いえ、我が家の敷地内に造らせたので問題ありませんわ」


前言撤回。今日も今日とて金のかけどころが間違ってんな。


「なに勝手なこと言ってるのよ!博人は今日私と遊ぶんだから!」


そうだったのか、初耳だが。


「では、つららさんもご一緒しますか?博人さんの大切な"幼馴染み"ですもの。丁重におもてなしさせていただきますわ」


「ぐぬぬ…」


ツンデレなつららと物腰柔らかな富麗さんは相性が悪い。いや、基本俺以外の人と話すとき険悪な雰囲気のつららが富麗さん相手だとやり込められる小悪党みたいになってるし、逆に仲良いのか?いずれにせよ、つららの威嚇をいなしてくれる富麗さんは貴重な人材だ。


「それで、博人さん。本日、他にご予定は?」


「予定はないけど…遠慮しようかな」


「おや、なぜ?」


「わざわざ図書館まで造らせちゃったのは気が引けるし、申し訳ないからだよ」


庶民一人のために公共施設は重いよ…金の重みが…


富麗さんには失礼な話だが、これ以上深く関わりたくないんだよな。俺の何か大事な物(主に金銭感覚)を破壊されそうで。


てなわけで、デートはお断りしてまた別の機械にこっちから誘おう。そろそろ俺はカラオケとサイゼで十分楽しめる男だと知ってもらわなきゃ。つららとの相性も気になるし、三人で今度遊ぶ約束でも…


「『しおけい』の新刊、読みたくはありませんか?」


…!?


「な、なぜその名を…」


「ちょっと博人??」


正式なタイトルは『虐げられ続けていた落ちこぼれの僕は、魔王の娘と契約して復讐鬼となる~今さら命乞いをしても、もう遅い~』。復讐パートの凄惨な描写と日常パートの穏やかで丁寧な心理描写のギャップが俺の心を掴んだWeb発祥のラノベだ。過去の経験から人間不信になっている主人公ライルと人間に虐げられてきた共通点を持つ魔族たちの関係性が徐々に深まっていくのが魅力で、特に魔王の娘レヴィナが"契約"を言い訳にライルの心を溶かすシーンが非常に良く──


「博人!博人ってば!」


ハッ、トリップしていた。危ねぇ、戻ってこれないところだった。


「ありがとう、つらら」


「えっ?な、なによ急に…どういたしまして…?」


ついにライルと魔族の本格的な復讐が始まる最新刊が今日発売される。が、昨日の漫画購入で俺の小遣いはないなった。だから来月まで我慢しようと思ってたんだが…


「『しおけい』の最新刊が我が家の図書館にはありますわ」


「クッ…!読みたい…!」


「博人!?負けちゃダメよ!」


分かってる…!ここで行ったら富麗さんのぶっ壊れ金銭感覚を助長してしまうことになる…!俺は断らないといけないんだ…っ!!


「………………悪いな、俺は推し作品には自分で金を落としたい派なんだ」


「いえ、構いませんわ。今後の参考になりますもの」


「ねぇ博人?今すっごい迷ってなかった?ねぇ」


「葛藤くらい許してくれ」


「あら、では付け入る隙はあるということですね?」


こわいこといわないで…??

し→虐げられ

お→落ちこぼれ

け→契約

い→今さら

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