主人公は褒められ慣れない
小山内先生を部活の顧問から担任兼部活の顧問に変更しました
「来週から三者面談期間です。日程の変更も今日までなら間に合いますので、早めに言ってくださいね!それでは、さようなら」
さよなら~と少し不真面目な声が重なり、クラスメイトたちは各々帰宅か、部活に行くか、スマホを取り出して別のクラスの友人を待つかと自由に行動し始めた。
つららは手提げのバッグをひっつかんだ後、俺の席まで来て「なんっで三者面談なんてあるのよ~っ!最悪!!」と叫んだ。
「別にお前んち仲悪くないだろ」
「仲の良さとか関係ないのよ!バカっ!親と先生と真面目に顔を突き合わせて私の将来について大真面目に話し合うのがヤなの!」
マァ確かに少し気恥ずかしさはあるが、まだ一年だしそうとやかくは言われんだろ。…多分。
※ ※ ※
「あ、博人。一年生って四階だったのね。どこかと思ってちょっと迷っちゃった」
面談当日、廊下の待機用のイスに座り虚空を見つめてたら、20秒も過ぎないうちに母さんが到着した。ピッタリ10分前、流石母さんだ。
「言ってなかったっけ」
「うーん、言ってたような、言われなかったような…」
母さんが学校にいる光景、めちゃくちゃ違和感あるな…
「ねぇ、先生ってどんな人なの?」
「これから会うんだろ」
「博人がどう思ってるか知りたいの」
「だからって学校で言うのはさぁ…」
「じゃ、帰ってからね」
ガラッ、と急に音がした。
「失礼しました」「このちゃんせんせー、さよなら~」
「はい、さようなら」
前に面談をしていた人が教室から出てくる。びっくりして二人して振り返っちゃったよ。クラスメイトの親と目が合ってちょっと気まずい。軽く会釈だけしとく。
「わっ、斎藤君。もう来ていたんですね。お母様もこんにちは」
「こんにちは~」
「お二人が揃っているなら…予定していた時間より少し早いですが、やっちゃいましょうか」
「はぁい、よろしくお願いします」
「お掛けください」
小山内先生が中間テストの結果の表を取り出し、俺たちに見せる。クラス順位は12位。英語と数学の点数があからさまに低い。「担当の教師に聞いたところ、授業は真面目に受けているので、自習の勉強法や配分など自分の合うものを探っていった方が良いかもしれません」としっかりめのフォローをされてしまった。
成績の話が一通り済み、生活の話になる。
「博人さんの家での様子はどうですか?」
「うぅん、ずっとゲームしてるか漫画と、ラノベ?読んでるかですねぇ。でも、勉強時間はちゃんと確保してる感じなので、そこは任せてます」
「なるほど、メリハリが付けられているのは大事ですね」
うおおなんだこれめっちゃ恥ずかしい。つらら、お前の言うことが正しかった。
「学校での様子はどうなんでしょう」
「博人さんはクラスで仲介者のような役割をすることが多いようです。男女分け隔てなく接する姿がクラス全体に影響を与えていて、壁を作らない雰囲気作りが非常に上手いですね。学級委員などの役職に就いていない人が率先して動いていると、教師としても助かります。クラス内だけでなく校内で広く友達がいて、二年や三年の先輩たちと話している様子も見られます。部活動に関して、私が強引に頼み込んで入ってもらったものなのが気掛かりでしたが、自分なりに楽しんでいるようです。楽しみ方を見付けるのが得意とも言えますね。教師にも心配りを欠かさない優しい生徒です」
そう真っ直ぐ褒められると…
(照れる…!)
「生徒のことをよく見てくださってるんですね」
「教師として当然のことです」
朗らかに笑う親と先生の空間、いたたまれねぇ…!
ちょっとした座りの悪さを感じながらも面談は続き、文理選択の話をしたらもう時間だ。
「最後に何か聞いておきたいことはありますか?お母様も博人さんも何かありましたらぜひ」
「いえ、特にないです」
「俺もないっす」
「それでは、これで面談は終了になります。ありがとうございました」
「ありがとうございました~」「ありがとうございました、さよなら」
「はい、さようなら」
※ ※ ※
帰宅後、開口一番に母さんは言った。
「で、小山内先生ってどんな先生?」
「忘れてなかったのかよ。あー、…良い先生だよ。優しいし、親身になってくれるし、ちゃんとどの生徒にも平等に接しようとしてるし、できてる。見れば分かるだろ」
「しょうがないでしょ?親は猫被ってる先生方しか見れないのよ。でも、博人がそう言うなら安心」
「夕飯は?」
「そうめん。えび天付き」
「やったぁ」
「聞いて博人!昨日、先生に『クラスを引っ張るリーダー的な存在』とか、『言葉が鋭くなってしまうこともあるようですが、その率直な物言いは素直さの裏返しと言えますね。裏表のない性格でクラスメイトから信頼されています』とか、『快活な姿には私も元気をもらっています』とか、他にもたくさん褒められて…とにかくむずがゆかったの!」
「お前もやられたか…」
「聞いた限りじゃクラス全員よ。可愛い顔して恐ろしいわ、このちゃん先生…!」




